3.目立った悪役令嬢、噂を添えて
翌日。
昨日のスライム退治での大爆発(スライムどころか岩山まで吹き飛んだ事件)は、もう街中で噂になっていた。
「おい聞いたか? 昨日の新人嬢ちゃん、スライムを一撃で消し飛ばしたらしいぞ」
「スライムを一撃で倒す新人はたまに現れるがなあ」
「いやスライムどころじゃねえ! あの辺の地形変わったからな!」
「新人っていうより災害だろ……」
……災害って。ひどい言われようだ。せめて人災と言って欲しい。いや、いいのか? 人災で。
◆◇◆◇◆◇
そんな空気の中、ギルドの扉がドンッと開く。
「……あんたねぇ! 昨日のクレーターの犯人! やっと見つけたわっ!」
いきなり指を突きつけられた。
腰まである黒髪をポニーテールに結い、キリッとした目をした少女。
年は私と同じくらい、服装は軽装の冒険者風。
「だ、誰ですのあなたは?」
「アタシはリナ! この街で駆け出しやってる冒険者よ! 昨日のあんたのせいで依頼がひとつ消滅したの! 討伐対象のスライムやゴブリンどころか、地形ごと消し飛ばしたから!」
「まぁ、そうでしたのね。ですが、結果オーライではありませんこと?」
「オーライじゃないわよ!」
「あら、なぜですの? モンスターがいなくなって平和になったのですから」
「うう、あんたのせいで依頼が未達成扱いになったんだから!」
「そんなこと言われても困りますわね……」
◆◇◆◇◆◇
そのやり取りを見ていたギルド職員が口を挟んできた。
「それなら丁度いいですね。お二人、パーティーを組んで依頼を受けてみては?」
「えっ!?」
「ちょっと待ってくださいまし。わたくし、仲間なんて必要ありませんわ。仲間ができたら取り分が減ってしまいますもの。……待ってくださいまし。大体、それならってなにがそれならですの!?」
「――ギルドが抱える問題児同士をくっつけることで……げふんげふん。お二方ともフリーですから、丁度いいかなと思いまして」
ギルド職員の本音が駄々漏れだった。
「パーティーを組むメリットがありませんわ」
「パーティーを組むことで、受注できるクエストの幅が広がるというメリットがございます」
ぐぬぬ、思ったよりも魅力的なメリットだ。この明らかに癖の強そうな女の子が相手でなければ簡単に承諾したのだが。
「ふ、ふんっ。しょうがないわね! そこまで言うのならパーティーを組んであげないこともないわよ」
リナは腕を組んで、ちらちらとこちらを見る。
「……あなた、わたくしの従者にしてあげますわ」
「誰が従者よ! アタシはあんたの保護者だから!」
「まあ、よろしくお願いしますわ〜」
「人の話を聞けぇぇぇぇ!」
「なんとしんまいぼうけんしゃのりながおきあがりなかまになりたそうにこちらをみている!
なかまにしてあげますか?」
▶はい
いいえ
「しんまいぼうけんしゃのりながなかまにくわわった!」
「あんた今、超絶失礼なこと考えてたわね!?」
「あらあら被害妄想が酷いようですわね……」
そんなこんなで私は仲間? を得たのだった。




