表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2.国外追放になった悪役令嬢、冒険者ギルドを添えて

 国外追放された私は、馬車で国境を越え、ひとまず最寄りの街へと辿り着いた。

 名をルーファン。小さな交易都市で、冒険者の拠点としてそこそこ賑わっている。


 「さて……追放されました。貴族の地位も財産も全部なくしました。つまり、死ねってことですわね? そういうことですわね? 転生してすぐに死ねということですわね?」


 ご令嬢言葉が身についてきた、なんて言っている場合ではない。正直、泣きたい。

 けれど、泣いたところで腹は膨れない。生きるには金がいる。

 選択肢はひとつしかない。


 「ここは異世界。冒険者になって、一攫千金を目指しますわ……! 悪役令嬢? 乙女ゲーム? そんなの知りませんわ。わたくしにはわたくしの人生がありますの。もう悪役令嬢なんて引退して、自由に生きてやりますわ!」


 私の足は自然と、石造りの冒険者ギルドの扉を押し開けていた。


 「たのもーーーー! ですわ!」


◆◇◆◇◆◇



 「よう見ねえ顔だな、新人か? ……って、すげぇ美人じゃねえーか」

 「お、お嬢様育ちっぽいのに大丈夫なのか?」

 「服装もお嬢様そのものだな。冒険者じゃねえーな」


 ざわつく冒険者たちを横目に、私は受付嬢の前に立つ。


 「冒険者登録をお願い致しますわ」

 「かしこまりました。それでは簡単な体力測定と、魔力適性の確認を――」


 手渡された魔力測定用の水晶玉に触れると。


 ――ピシィィィッ!


 ガラスが砕け散った。

 ギルド全体が静まり返る。


 「……え?」

 「おいおい、な、なんだ今の……!?」

 「し、信じられん……あの水晶は上級魔導士でも割れないはずだぞ!」


 私自身もぽかんとした。

 どうやら、この体にはとんでもない魔力量が備わっているらしい。


◆◇◆◇◆◇


 試しに簡単な依頼――街の外でスライム退治をやってみることにした。


 「いざ尋常に、スライム退治ですわ〜! こういうのは実践あるのみですわよね」


 木の棒を構えた瞬間、スライムが飛びかかってくる。


 「スライムと言えど怖いものは怖いですわね。って、ひいっ……! こっち来ないでくださいまし!」


 反射的に手を振った。


 ――ボンッ!


 それだけで、スライムが跡形もなく消し飛んでいた。


 「……え、えぇぇぇぇ!?」


 スライムどころか、近くの岩も吹き飛んでクレーターになっている。


 「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!?」


 目を擦って、目の前の惨状を受け入れる。


 「これ、どういうことですの!? わたくしがこれをやりましたの? って、わたくししかおりませんものね。もしかしなくても、わたくし、めっちゃ強くないありませんの!?」


 そう、私は気付いてしまった。

 この体には、どんな敵でも一撃で粉砕できるチート能力が宿っていることを。


◆◇◆◇◆◇


 「破滅したけど……もう構いませんわ! これからは無双冒険者として生きていきますわ! これなら一攫千金も本当に夢ではありませんわね……!」


 こうして、悪役令嬢シャーラル・スカーレットの第二の人生が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ