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短編2

転生特典を嫌がらせにブッパした件

作者: 猫宮蒼



 異世界に転生する事になりました。

 年子の兄と一緒に。


 どうも、完全に巻き込まれただけの弟です。


 不幸な事故で死んで、たまたまその魂を女神さまが異世界に呼んだっていうのが大まかな流れです。


 神様とかいるんだ、へぇ。っていう程度の信仰心しか持ち合わせてない奴を異世界とはいえ転生させてくれるとか女神様、一体どんな切羽詰まった状況なんです?


 なんでも女神様が担当する世界は魔物が跋扈して大勢の人が死んでしまい、転生させるにしても同じ世界の魂がよりにもよって魔物に沢山破壊されてしまったので、循環が追い付かないのだとか。

 他の世界の神様に声をかけたらうち魂余ってるから持ってってイイヨーって言われた事で譲り受ける事になったのだとか。


 へぇ、そっかぁ……僕らの他にも転生者がいるって事か。オッケー。


 で、どんな世界なのかを確認してみると、なんか、その世界知ってるなぁ。てかうちの世界でゲームになってるところだなぁ、となりまして。


 兄はそのゲームにはまっていたので大歓喜。


 僕はそこそこプレイしてたけど兄程の熱量はない。


 転生特典どうしますか? って聞かれて、割と至れり尽くせりだなと思ったものの、そもそもそんなすぐに出てこないよねそういう願い。


 兄は高スペックなステータスを希望してさっさと転生していった。弟が決めるまで待つとかそういう事は一切ない。


 まぁ、いいけどね。


 あれと転生してまでまた兄弟にはなりたくねぇなぁと思ってるし。

 大体事故にあったのだって、兄の不注意が原因である。

 巻き込まれた側なので、正直あいつのせいで死んだという思いがあるのは否定しない。


 兄が特殊能力などではなく高スペックステータスを希望したのは、つまりその方が有利だからだ。

 確かにこれから転生予定の世界とほぼ同じゲームでは、基本的にステータスの高さが基準になってたと思う。

 特殊能力はステータスが低いと正直そこまで……って感じなので。



 ちなみにゲームは割とありがちなRPGです。


 割と幅広くなんでもできるタイプのゲームだ。

 戦闘はそうだけど、アイテム作ったりとか。

 ミニゲーム要素もたくさんある。


 キャラもたくさんいるし、兄の事だからもしかしてハーレム作ろうとするかもしれない。


 うーん、かといって、わざわざ兄の妨害をしに自分が行動したくないしなぁ。

 あ、そうだ。


「女神様、転生特典決めました」

「あら、悩んだ割には早かったわね」

「さっき転生した兄なんですけど」

「あら? 自分にではなくあっちにつけるの?」

「アイテム作成の際にやるミニゲーム的なやつで絶対にパーフェクトが出ないように……あ、いや、そうじゃないな。パーフェクトをグレートにして、グレートはグッドになるように調整してください」

「それくらいはお安い御用だけど……本当にいいの? 自分にもっと有利な能力とか」

「いえ、それで。絶対に解除できないようにしておいてくれればそれで」

「わかったわ」


 女神様は僕の願いを叶えてくれた。

 もしまだここに兄がいたのなら、てめぇふざけんなよって胸倉掴まれてぶん殴られていたかもしれない。

 ふん、いい気味だ。


 大体、課題の提出忘れてたからって人に手伝わせた挙句馬鹿みたいに大量にため込んでたのを持ってくの手伝わされて挙句に事故だぞ。それがなかったら僕は死んでなかった。

 最初から兄が宿題をきちんとやって毎回マメに提出してたらこんな事になってなかったんだ。

 しかも宿題忘れた原因を弟の世話をしていて、とか言い訳するにしてももっとあっただろ。お前の世話になった覚えがこっちには何一つとしてないんだが~~~~!?

 ってなったので、僕は兄がとても大嫌いです。


 アイテム作成の際に、精霊と交信するっていうのがありまして。

 レシピを得て材料を集めて、作る際に精霊の助けを借りる事になるんだけど。

 初回はミニゲームとして音ゲーをやらされる事になっている。


 そのゲームのスコア次第でアイテムの出来が違ってくる。

 高品質なのを作るには当然高いスコアを出す必要がある……といっても、初回のミニゲーム難易度はイージーなので、最初っから高品質高ランクアイテムにはならない。


 初回は確実に音ゲーをする事になってるけど、その後音ゲーをやるのは任意だ。

 イージーをクリアしてできるアイテムは店で買うノーマルランクとそう変わらない。

 いいアイテムを作るためには、その後難易度を上げてミニゲームをクリアする必要がある。

 最高スコアが登録されるから、繰り返しプレイするたびにスコアが落ちていっても一番いいスコアの時のランクでアイテムが作成可能ではあるけれど。



 この音ゲー、パーフェクトとグレートだけがコンボになるやつでグッドを出すとそこでコンボが切れるゲームだった。


 音ゲーと一口で言っても色んなのが出てるから、探せば他にもそういうのはあると思う。

 グッドでもコンボになるゲームもあるけれど、このゲームではそうじゃない。ただそれだけ。


 兄はゲームをやり込んでいて、音ゲーもオールパーフェクトクリアをするまで何度だってやり込んでいた。そうして高ランクアイテムを作成して攻略をしては、何故かこっちにマウントとってきたものだ。

 こっちはそこまでガチ勢ではないので、あぁそうよかったねー、としか反応できなかったけど。


「じゃあ、貴方の転生特典はこれでなくなっちゃったけど、このまま転生させるわね?」

「あぁ、はい。よろしくお願いします。強いて言うのなら、兄とは他人でお願いします」

「まぁ、貴方に特典がないのならそれも叶えてもいいわね。わかったわ。それじゃあ、頑張ってね!」



 という、女神様の激励と共に転生しました。


 大まかにゲームと同じでした。精霊と交信する際に使うアイテムは楽器を模してるけど、実際演奏するっていってもボタンをタイミング良く押すので、まぁ普通にゲームと同じでしたね。

 自分は音ゲーがあまり得意な方ではないけれど、まぁそこそこ高ランクアイテムが作れる程度ではあるから、まったりやってこ。



 他人で、と言ったし実際それは叶った。

 けれども、うっかり遭遇してしまった。

 今世の兄は一足先に転生したものだから、五つほど年齢が離れていたけれど、既に冒険者として活動していたっぽい。

 精霊と交信してアイテムを作る、っていうのを得意として売り込んだ割に、そうでもないっていう噂が流れていて兄は大層荒れていた。


 コンボが途中で途切れるから、そうなるとアイテムはそれなりの品質にしかならない。

 何度やり直しても、一度でもグッドが出るとコンボは途切れる。


 前世でクリアできていたはずのそれらは、しかし今世では何故かクリアできないからだ。


 オールパーフェクトクリアができたと言っても、それだって何度もやり直しを繰り返して結果一度の奇跡でクリアできた、みたいな状態だった。

 一度パーフェクトを出せばそれ以降は品質変わらないからね、そのアイテムに関しては。

 他のアイテム作る時はまた他の曲の音ゲー始まるとはいえ。


 けれどもかつて兄だったあの人は、パーフェクトがグレートに、グレートはグッドに変わる特典(デバフを知らぬ間に付与されたので、仮にオールパーフェクトでクリアできたとしてもそれはオールグレートでのクリアになるわけで。フルコンボでクリアできても、パーフェクトクリアではない。

 フルコンボでのクリアでもそれなりに良いアイテムが作れるから、別にそこまで困らないとは思うんだけど、まぁ、パーフェクトクリアできてたって前世の実績があるから、中々現実を受け入れられないんだろう。


 結果、前世の兄はとても荒れていて、他の冒険者たちからおさわり禁止人物となっていた。

 いや、そこで受け入れてれば、そこそこ優秀なアイテムクリエイターって評価にはなってたのに、そうならなかったせいでプライドがむっちゃ高い面倒な人認識になってしまったというわけだ。


 ちなみに僕も冒険者として活動はしてるけど、アイテム作成はそこまで力を入れていない。

 まぁ、難易度イージーとかでオールパーフェクトは出せるけど、難易度エクストラでオールパーフェクトは無理。

 イージー楽曲でオールパーフェクト出せて高品質アイテムになっても、対応してるアイテムが序盤で使うやつだからなぁ……魔物が強いダンジョンに挑むのに必要なアイテムとか装備作るとなると、最低でも難易度ハードでいいスコアとらないと厳しい。

 食料とかインテリアとかの、攻略とそこまで関わらないタイプのアイテムを作るのであれば音ゲー無しでも結構いろいろできるんだけど……

 ダンジョン攻略が一番お金稼げるからなぁ……元兄はきっと前世でのプレイスタイルを変えられないだろうな。


 なんて思いながらも遠目でそっと元兄を観察していたら、ある日いかつい数名の冒険者らしき人たちに連れ去られていった。

 冒険者だと思うけど裏稼業でも通用しそうないかにもヤバイです、みたいな雰囲気ぷんぷんのにーちゃんたちは、圧の強い笑顔と共に元兄を引きずっていってしまったのだ。元兄はなんだか泣きながら助けを求めてたけど……あれ何やらかしたん?



 なんて疑問に思っても流石に突撃して元兄やあのおっかないおにーさんたちに聞けるはずもないので、地元の情報通にこんなん見かけたんだけど、アレ何? って聞いてみた。


 結果わかった事は。



 なんでも兄は、エリクサーを大量生産できると豪語して必要な材料などの調達を任せたり、前払いでかなりの報酬を得ていたらしい。ところが大口叩いた割にいつまで経っても納品されないエリクサー。

 既に前金を使ってしまった兄に返金を求めても、それすら難しい……って事でとうとう強制労働の刑に処される事になったようだ。



 ……そういえば、エリクサーって回復薬の難易度エキスパート攻略で作れるんだったかな。

 普通にクリアした場合はその一つ前の難易度の時に作れるエクスポーションになるけど、フルコンボであれば一応エリクサーにはなったはず。ただ、その状態だと品質は低めだから高品質のエリクサーを作るとなると、フルコンボかつスコアの半分以上パーフェクトを取る必要があったはずだったな……

 パーフェクトクリアすると最高品質の究極エリクサーになるとかなんとかって聞いたけど、生憎僕はオールパーフェクトは無理だって早々に諦めたので実際は知らない。


 ふむ、元兄は僕が強制的に押し付けた特典のせいでパーフェクトを出す事ができなくなったから、仮にエリクサーを作ろうとしてもオールグレートでのフルコンボクリアしかできないわけで。

 そうなるとアイテム作成条件の半分はパーフェクトを取る、が達成できないからできあがるのはエクスポーションばかりになる。


 ……いやでもなぁ。

 ぶっちゃけゲームプレイしてた時にエリクサーってそんな使わなかったし。

 攻略上どうしても必要ってわけじゃなかったからなぁ……

 工夫すれば低レベルでもクリアはできたし、そりゃ勿論極めようと思ったら大変だけど、そうじゃないなら普通に楽しめるんだよね。


 実際魔物とか出るけど、余程の事がなきゃ死ぬような事にならないと思うし。

 ……それは前世でゲームをプレイしていたからそう思えるだけかもしれないけど。


 エンディングもマルチエンドで色々あったから、絶対にこれをやらなきゃいけない、みたいなのもなかったし。



 そう考えると元兄はあえて高難易度のルートにいっちゃったみたいになったわけか……


 音ゲーには自信あったもんなぁ、言うて大会みたいなやつではランキングに入った試しないけど。


 ともあれ、今の僕は元弟とはいえ今世では無関係なので、元兄の事はそれ以上探ろうとも思わなかった。

 流石に殺されたりはしないと思うけど、シャバに出てくるまでにどれくらいかかるんだろうね?



 ま、僕は僕でまったりやってくから、元兄の苦労に関しては知ったこっちゃない。




 ちなみに。


 恐らく元兄が狙ってるだろうなぁ、と思ってたハーレム要員の女性キャラたちは、他の転生者と結婚してた。

 まぁ、そうだよね。人気のあるキャラだったから、そりゃあ〇〇は俺の嫁、とか言うような転生者がいたら即狙われてるよね。

 ちなみに男性キャラも同じく転生者に押せ押せで落とされたのか、そっちも所帯持ってた。


 元兄が知ったら崩れ落ちそうだな、って思ったけど、まぁ多分知るのは当分先の話だろうから……



 僕も見なかった事にしておこう。

 ちなみにパーフェクトがグレートになったからといって、じゃあミスれば一周回ってパーフェクトになるかっていうとなりません。普通にミスはミスです。

 人によっては発狂しそうだなって思いました(´・ω・`)


 次回短編予告

 モブは異世界転生した事に気付いてしまった。それどころか、同じ時間を何度もループしている事にも気付いてしまう。何故……どうして……あと何回これ繰り返すの……?

 困惑しているところに、更なる困惑の原因がやってきた。

 恐らく主人公と思しき人物が、やけに関わろうとしてくるのである。

 面倒事に巻き込まれたくないし、自分にはこれといった特殊な何かがあるでもないので……どうかやんわり距離を取らせて下さい主人公さん!


 次回 主人公さんに落とされてなるものか、私はモブだ

 だって恋をしたとして、次のループが始まればなかった事になるのがわかっているのなら。

 絶対に、恋なんてしてなるものか。

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― 新着の感想 ―
弟から復讐されたってのは、クソ兄に思い知らせてやりたいと思いました。
…なんだこの女神(爆)。 前世からの因縁ざまぁできたオトウトくんは、まあ幸せで良かったねというか割に合わなかっただろうけどちょっとでもキミの今まで受けた理不尽への怒りや虚しさが解消されたなら良かったね…
低品質エリクサーは納品可能なのでは?オールパフェができない、または高品質と謳っていたってこと?
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