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死者王とゾン  作者: たぷから
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8-9 第一天限解除

 だが、そのぶんマーラルに負荷がかかっている。この調子で三倍、四倍……それ以上……とアンデッドへブーストをかけたのでは、そりゃ早死にもするというものだ。


 「ピーパ殿、シベリュース、勝負をかけるぞ!」

 「了解した!!」

 「了解であります!」


 リリが捕獲かん構成の頂点となって、一気に縛りかける。

 驚いたのは、ゾンも同じだ。


 (おいおいおいおい、こりゃあ、生体ブーストじゃねえか……! 未だに、こんなもの・・・・・を使えるやつがいやがるんだな……オリジナル級の能力ちからだぜ……!)


 約束通り、マーラルの生体ブーストは約二倍増強で固定された。それでも、三体の出力合計で十万に近づいている。


 「フフ……やるな……こいつはすごい」

 次元のすぐ裏側で観測していたゲントーも、目を見張った。

 「まさか、イェブクィム増強生体ブースト能力とは」


 さしものゲントーも、感嘆して首を振った。

 「アンナデウス、次元災攻撃に影響はあるか?」

 「はあい、今朝はお天気もよく、お祈りもええこんころもち・・・・・・ですたぁ」

 ゲントーの舌打ち。話にならぬ。


 (勝手に祈っておれ……貴様が祈れば祈るほど、災いの力がいや増すのだ……!!)


 それはそうと。

 (さて……どのタイミングで、どう仕掛けるか……)

 ゲントーが、真っ赤に焼けるコークスめいた目を細めた。


 (しかし、意外に呆気なかったな……あのドラゴン・ゾンビが、こうもあっさりと固縛されるとは……)


 ついにゾンの霊出力でも破れぬほどの頑強な檻が完成し、ゾンが完全に固縛された。


 あまりの光の放出に、暗闇の中で煌々と光柱が立っている。人々が、何事かとその光を見つめた。


 そこで、リリが次元反転。

 大きく空間が開き、陽光が闇を割く。

 なんと、海が見えた。青く輝き、波うっている。潮風が吹きこんできた。


 巨大な貨物船擬装強襲揚陸艦が、洋上に待機していた。

 「ゾン……! ゾオオオン!!」


 道路の断層亀裂を避けて遠回りしていたシュテッタが、なんとか現場に到着した。


 「おう、やっとお出ましかい」

 「なに云って……そんな呑気なこと……!」


 息を切らし、通りの端からプラズマのような、彩雲のような霊光に取り囲まれたゾンを見やった。その顔は、悲愴と驚愕に満ちている。


 「どうしよ……どうすればいいの!?」

 巨大な次元の窓が、慎重に捕獲かんへ接近をはじめた。

 「ゾン、何やってんの!! 連れてかれちゃうよ!!」


 「うごけねーんだよ。知ってるだろ」

 「だからって……!」


 「これを機会に、おめえもミュージアムで働いたらどうだ? 悪いようにはされねえだろ」


 「ミュージ……アム……」

 シュテッタが奥歯を噛んだ。

 「ナああニ云ってんだああああああ!!」

 (……ハアぁ!?)


 いきなりシュテッタが激昂して霊感通信を飛ばしてきたので、ゾンも呆気にとられる。


 (え、オレ、なんか変なこと云った?)

 シュテッタはダンダンと地面を踏み、建物の壁を拳で何度も叩いて、

 「そんなことッ……! できるわけ無い……! できるわけ……!!」


 涙ながらに、ギリギリと歯をかみしめて光の塊のようになっている捕獲かんを睨みつけた。


 「……第一天限を……解除する……!!」

 「…………」

 「ゾォン!!」


 「…………」

 「ゾンンんん!!」

 「…………」


 「第一天限解除だって!!」

 「…………」

 「聴こえてんの!?」


 「聴こえてるよ」

 「だったら……!!」

 「勿体ねーよ。こんな連中に」

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