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死者王とゾン  作者: たぷから
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6-13 やり返してやれ

 シュテッタは、目がおかしくなったと思った。アルンドは全身がゲル状化し、爆発するようにしてゾンの腕にまとわりついた。レジウス・ヴァンアビグの正体は、スライムめいた不定形アンデッドなのだ。


 そのまま、ゾンの腕を消化しにかかる。

 「ゾン!」


 シュテッタの叫びがスイッチだったかのように、いきなりゾンが己の右腕めがけてドラゴンブレスを吐いた。


 不完全燃焼の黒煙の合間からオレンジの光があふれ、

 「…うぉわああああああ!」


 アルンドの悲鳴が轟いた。

 ただの炎ではない。

 魂魄子イェブクィムと反応して、霊鎖スピル及びアンデッド構造体に直接引火する霊火だ。


 アルンドそのものが燃えているだけでなく、アンデッド構造体が燃料として燃えている。ひとたまりもない。


 一分……いや、数十秒もせぬうちに、アルンドは跡形も無く燃えつきた。

 ゾンの腕から、まだブスブスと煙が立っている。


 残ったアンデッドどもが転がるように逃げ出したのはもちろんのこと、電磁ローバーがあわてふためいて急発進する音も聞こえた。


 「な……なんだろ!?」

 「おおかた、様子を見てたテロリストさんじゃあねえの?」

 「ええッ!」


 シュテッタが居ても立っても居られなくなり、走り出した。

 「おい、待て待て……待ちやあがれ、シュテッタ」

 「……なに!」


 「あいつらのコントロールを奪え」

 「え?」

 「コントロールを奪っちまえよ」


 「どっ……どうやって?」

 歩き出したゾンがまたシュテッタをヒョイと抱え上げ、肩に乗せる。

 「かあんたんだぜ、思念波を探って、遮って、おめえがつなぎ直して、おわり」


 歩きながらそう云い放ち、訳が分からずともシュテッタはとにかく感覚で云われた通りをイメージした。


 すると、どうだ……。


 手に取るように、逃げる死者の国のコンダクターどもの「思念波」が分かり、それを自分がハサミで切るように「断」って、自らの「思念波」をつないだ。まるで、何十という操り人形を一手にしたような、プログラムを乗っ取って複数のデヴァイスを同時に操るような感覚だった。


 「どうでえ、かあんたんだろうが」

 「う……うん」


 「やり返してやれ・・・・・・・、よ」

 「え……」

 「やられたことを・・・・・・・やり返してやれ・・・・・・・


 無意識で、シュテッタの心に怒りと憎悪の火がついた。たちまちそれが大炎上し、シュテッタの全身が復讐心で燃え上がった。


 (へっへ……すげえぜ、こいつあ……よくもまあ、こんなヤツを造り上げた・・・・・もんだぜ……)


 シュテッタの怒りにより、残った死者の国の全アンデッド兵器と、何百体という野良ゾンビ……殺されたパートフの人々が……上陸船へ逃げ戻るテロリスト達へ向かった。上陸船では霊感通信で既に電磁エンジンをふかし、いつでも脱出できるように準備をしていた。ターン・アンデッドで立ちふさがるゾンビ群を吹き飛ばしながら、二台のローバーは上陸船めがけて疾走した。


 が、一台が群がるゾンビ達につかまり、ひっくり返って四人のコンダクターが投げ出された。


 そして、絶叫を上げながら、生きたままバラバラにされ、喰われた。ソンビにすらさせてもらえない。


 もう一台はなんとか宇宙港で待機している上陸船までたどり着き、事故も厭わぬ勢いで後部ハンガーに突っこんだ。


 「上げろ上げろ!!」

 ハッチを閉める時間ももどかしく、一気に上昇する。

 「ゾン、逃げちゃう!!」


 空を見上げて、シュテッタの絶叫。

 「ゾンンん!!」

 「まあ……大丈夫なんじゃねえ?」


 「ハアァ!?」

 云うが、上陸船が木端微塵に吹き飛んだ。

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