09 悪魔の力
「でもそっか。毎日忙しそうだけど楽しいならいいよね」
奈々はニコっと笑ってくれた。ほのかはふと思い出すように聞いてきた。
「……実際はどうなの?」
「ん?いや、だから楽しいって」
質問の意図が少し読めない。ほのかは申し訳なさそうに声を少し小さくして改めて聞く。
「悪魔の力、使ったの?」
「あー……」
まあそう言いたい気持ちもわかる。何せ約半年で1軍上位まで着いたんだ。わからなくはないけど……。
「私、アイドルになるのに悪魔の力は使わないって言ったでしょ」
「そうだよ。言ってたよ。ほのかちゃんも聞いてたでしょ?」
ほのかの言葉に奈々はむくれ顔になって否定してくれた。信じてくれて嬉しいが私の内心は実は複雑である。
「アイドルになるのはね。アイドルを続けるのは違うんじゃない?」
ほのかは見透かしたように強調して話す。奈々はさらにむくれた。
「今日のライブ見たでしょ!あんなにカッコいいパフォーマンスが出来るのも努力の結果だよ。それに悪魔にも言ってたじゃない。この力で作る人生は人生じゃないって」
おっしゃる通りです。私は確かにそう言いました。奈々があまりにも庇うものだからちょっと冷や汗が止まらない。目も2人からゆっくりとそらす。
だが、ほのかは私の表情を見逃さなかった。
「ホントのところはどうなの?美夢?」
「ん?えっと……」
「美夢?」
私は思わず口ごもる。その様子に奈々も少し困惑した表情を浮かべる。2人に見つめられ、奈々の言葉に良心を痛めた私は観念した。
「うん。使ってるよ」
「あー……やっぱり」
「えっ……嘘……」
「ちょっと勘違いしないでね。使ってはいるけども……」
両手をばたばたさせてショックを受ける奈々を説得する。
「あくまで疲労回復に使っているだけ。人気を出すためとか演奏技術のためには一切使ってないよ!誓って!」
「疲労回復?」
「うん。ほら私、今は過密なスケジュールでしょ。中々身体の疲れが取れなくてさ、試しに使ってみたんだよ」
レッスンに営業のお仕事にライブ、加えて自主練に一人暮らしだから家事等もしなければならない。正直、体力はある方だがそれでもきつい。
「何だったら使ってあげようか?ライブで騒ぎ疲れたでしょ?」
「えっ。じゃあ……」
私はほのかと奈々に向かって右手を前に出す。こんなことをしなくても発動はするのだが、演出として様になるようにやってみた。
右手の甲に髑髏が浮かぶ。青白く燃えている。
「――2人の疲労を抜き取れ」
「ん?お、おお」
「えっ!何これ!変な感じ……」
2人は疲労が消えていくのがわかるのか身体をくねらせながら、身体が軽くなっていくのを実感する。
「す、すごいね……本当に疲れがなくなったよ」
「改めてすごい力を手に入れたね。美夢」
「うん。まね」
私は少し困った顔をして笑った――。




