03 必要とされる輝き
「……とりあえず見事と言っておこう」
そう賞賛すると再び座っていたソファーへと座る。
「今までは切り捨ても誰もお前のように直訴しにくる奴はいなかったんだがな。素直に驚いたよ」
「ありがとうございます」
「とはいえお前とはな。アイドルになりたい割には積極性が皆無だったお前が……」
意外だったと口にする。まあ私自身もそう思っている。自分が努力する分には積極的だったが、人との関係には積極性は確かになかったと思う。
「たった3日だ……3日だぞ。……何があった?」
言葉は不思議そうって発言だが、態度や表情は面接さながらである。
「悪魔が取り仕切っているゲームをした影響です!」
とはさすがに言えない……ので少し口ごもる。
「えっと……まあ、色々あったんです……はい」
私はさっきまでのシャキッとした態度とは一変、ヘコヘコと頭を下げた。
納得はしていない表情。少し睨みつけられるが、一息つく。
「まあいい」
言及されなかった。言及されても答えられないが。
答えをもらえなかった代わりにと別の質問をしてくる。
「私は先の説教の際……言ったな、お前たちにアイドルとは何かと。……答えを聞こう」
私が考えるアイドル像は変わらない。煌びやかで輝き、人に夢や希望を与える存在……小さい頃に見た憧れのまま。
でも、いつまでも子供のままじゃいられない。その憧れを胸に現実とも戦わなければならない。
「人々に夢や希望を与える存在です」
これが私の答えだ。後ろの秘書はポカンとする。理由はまあわかる。あの時言った彼女と同じ答えだから。
社長も少し驚いたが、すぐに私の答えを掘り出すかのように追及する。
「答えが変わらないようだが?」
「はい。変わりません。私の憧れたアイドル像は変えられません……いえ、変えたくありません。何故ならその輝きに夢中になった人間なのだから」
ようやく気づいた。1番大事なことに。私が憧れたのは煌びやかに輝く可愛いアイドルになりたい訳じゃなかった。
あのステージであの観衆の中で輝いて生きていることを証明している彼女たちに憧れたんだ。多分……無意識ではあったのだろうけど。
何も輝いて生きることはきっと色んな方法がある。けど私はこれしか知らないから。
キッと真剣な眼差しで宣言する。
「私はステージで輝く宝石になってみせます!私が憧れたあの輝きを放ち、沢山の人たちに見て……いえ、必要とされる、また新たな原石を見つける人でありたい」
そっと胸に手を当て、続ける。
「そして、社長には側に置いておきたいと思える宝石となります!必要な輝きだと思わせてみせます!」
「……」
社長の表情は明るい。にっと笑っている。
「ですから、どんな些細なチャンスでも構いません。もう1度チャンスをください!」
バッと素早く頭を下げた。
「お願いします!」
返事が出てくるまで頭を下げ続けた。すると……。
「おい」
「……えっ、あ、は、はい」
秘書さんの驚いた声が聞こえた。少し動揺しているようだ。
「確か2軍に穴が空いていたな」
「はい。確かに……えっ!まさか……」
頭を下げているせいか状況は見えないが話を察するに――。
「ああ、こいつをその穴に入れてやれ」
いきなりビッグチャンスが与えられた!!
「よろしいのですか?」
あまりのチャンスに表情筋が緩む。頭、下げてて良かった〜。こんな緩んだ顔はさすがに見せられない。
「構わん。期待以上の成果だ。2軍に入れても恐らくは問題ないだろう。いつまで頭を下げている」
バッと頭を上げる。
「聞いた通りだ。望みどおりチャンスはくれてやる。お前の答えへの報酬だ」
「はい!」
「ただし、チャンスだけだ。それ以上をものにしたいのならもっと成果を見せろ。その成果に見合っただけのものを用意してやる」
スクっと立ち上がる。
「死にものぐるいでこい!」
「はい!」
そう語ると去っていった。その後ろ姿は貫禄がある。こんな私を受けとめて認めてくれたからなのか、あまりにも大きく見えた――。




