02 社長の意図
「えらく食い下がってくるな」
鬱陶しそうな声で吐き捨てる。私を見る目もあの時と変わらない。冷酷な目だ。
だが、以前と違うのはそれに対して動じていないことだ。
例えこの人が高圧的な態度をしても私には関係ない。自分の過ちをこの人は正してくれた。ならそれに報いなければならない。
今までの自分は頑張っていることに酔い、チャンスを貰うことばかり考え、自分から行動しようということを考えなかった。
でも、あの出来事を受け、自分から行動を起こさなければ結果はついてこない。あのゲームでそれを嫌というほど思い知らされた。
後悔するかもしれないからしないじゃない、あとで後悔するために行動をするんだ。
人間、何だって過去の出来事はほとんどに後悔が生まれる。なら、自分にとって必要な後悔を得るために考え、行動を起こすのだと。
だから、この人に直訴して使ってもらえるようにお願いするという行動を止める訳にはいかない。
「はい。後に後悔しないためにも必要なことです」
「ここでないとダメだと言ったな。何故だ?」
私の方へ向き直し問う。ここでしっかりアピールしないと……。
「ここでのアイドルが1番だからです」
「……」
「知名度、認知度、実力、業績、何処を取ってもこの業界トップだからです」
「随分と正直に答えたな。ついでに言うならツテもあったからだろ?」
「はい」
社長は鼻で笑った。さっきの表情よりは穏やかだが――。
「1度捨てた人間を俺が使うと思うのか」
冷酷に切り返してきた。だが即答する。
「はい!」
「……!」
即答したのに驚いたのか目が少しはっと開いた。そこから片肘をついた。
「その根拠は何処にある?」
「社長が私たちを捨てた時、説教をしてくださいました。何故です?」
質問を質問で返す。
「お前たちに身の程を教えるためだ」
「そうですね。それもあると思います。でも――」
人差し指を立て答える。
「もう1つ意図がお有りですよね?」
「……」
「その身の程を知って尚、このように直訴する人間が出てくるのではと期待をされたのでは?」
やれやれと呆れ顔を見せた。
「想像力が豊かなことだ」
右手を振り無いと答えた。
「いえ、個性を順守される社長が何の考えもなくあのような説教をされるとは思いません」
「……」
表情が変わった。何かを見定めるような目でこちらを見始めた。
「社長は言いました。お前たちのために時間を作ったと……」
あのゲームを終えてから考え方が変わったと言うべきか……。
確かに身の程を教え振り払うことも事実。だが、振り払われず覚悟を持って向かってくるものがいるのではないかとこの社長は考えたのではないか……そう考えた。
「フフ」
微かに笑い声が聞こえた。社長からだ。少し俯いているせいか表情が見えないが――。
「……期待はしていなかったのだがな」
私に向いたその表情は……私の求めていた手応えを感じる表情をしていた。




