34 運で自分は作られる
――私たちは駅へ着いた。可波くんは時刻表の前で、電車時間を確認中。
「……あー今出たところッスね。待ち時間もう少しあるや……」
ボリボリと頭をかく彼に提案する。
「じゃあ時間潰しにもう少し話す?」
尋ねる私に彼は申し訳なさそうに……。
「もう時間も遅いんで大丈夫ッスよ。つか1人で待てますッス」
「えぇ〜ホントに〜?」
からかってみる。
「先にデビューするからって腹いせッスか!子供みたいなことしないでほしいッス」
私たちは笑った。この時の私は焦っていた。自分がどうして呼ばれないことが……。こんなに笑ったのも久しぶりだった気がする。
待合室へ移動し、彼はガサガサとさっき買ってきたコンビニ袋の中身からパンと飲み物を出す。
「そういえばさ、さっき言ってた曲聴かせてよ」
「……ああ、いいッスよ」
まだ、袋から出ていないパンを置き、ポケットからスマホを、鞄からイヤホンを出しスマホに刺す。
スマホを操作し……。
「ほいッス」
私にイヤホンを差し出す。
「んっ、ありがと」
両耳にイヤホンを入れて、その様子を見て彼は再生ボタンを押す。
軽快な音楽が私の中に入っていく。アップテンポな曲が、焦り落ち込んでいる自分を勇気づけるよう。
私は終始、目を閉じ聴き入る。彼はその横でパンを口にし食べる。
「ふう……」
ありがとうとイヤホンを返す。
「どうッスか?」
「うん!いい感じだよ!」
彼は嬉しそうだ。子供みたいな表情で笑う。……ホントに変わらないなぁ。
「いやぁ、先輩にそう言われると嬉しいな」
「ていうか歌詞に運命とかデスティニーとか多いね、相変わらず」
彼が中学の頃に作っていた歌詞にも運とか縁とか運命とか何かと入っていて、当時一緒にやっていた人と結構揉めてたっけ。
「そりゃあ当たり前ッスよ。俺の代名詞ッスからね」
「そうだった」
待合室にあるゴミ箱へと向かいながら――。
「好きなんスよ。運命って言葉が……カッコよくないッスか!」
ガサッと袋がかすれる音。くるっと私に向き直し話す。
「まあカッコいいといえばまあね」
「運に命って書いて運命。考えた人はマジ天才ッス。マジリスペクトッスよ」
「はいはい」
右手をひらひらさせながら、投げやりに返事をする。
「せーんぱい!真面目に聞いてくださいよ。運で命が作られる……って見方をすればめちゃくちゃカッコいいッスよ」
「運で命を……ねぇ」
イマイチ、ピンとこない。
「色んな縁で人って出来てるってことッスよ。縁は運しょ?」
「まあそうかも」
「家族や学校の先生に先輩、ダチに事務所の社長さんとか色んな出会いが俺に経験をくれて「俺」って存在を作ってくれたッス。運が良くなきゃ出会えなかったッスよ」
「オーバーだなぁ」
そんな事ないッスよと私の隣にドカっと座る。
「俺という人間は自分だけじゃない、俺以外の出会うべくして出会った人で俺ができたんスよ。もし、違う人と出会っていたら、こうはならなかったッス」
なんとなく彼の言っている事がわかるかも。私も小さい頃に見たテレビでキラキラ輝くアイドルを見た。
子供の頃だ。憧れた理由はあまりにも単純。
あんな風に可愛いくなりたい。キラキラと輝きたい。……ただそれだけだった。
そのテレビで見る、出会いがなければ違う自分だったのかもと思うと納得もいく。
「そうだね」
「そうッスよ!運をバカにしたらダメッスよ……先輩――」




