幼馴染バリア
愛人…
難しい問題だ。
そもそも先のことは、正直オレもわからない。
…
「夏実ちゃんがそうなりたくないって思っているのなら、そうはならないんじゃないかな?」
「あー、そっか。そうだよね…。」
「直斗くんは、どう思う?」
…オレは…
「まぁ、二人同時にっていうのは…そうだなー…、やっぱりどっちにも罪悪感がうまれるし、相手にされるのもいやだから…あんまりって感じだよね。」
…
「そうだよね。直斗くんがそういうなら…やっぱりそうだよね。それにそんなことダメだもんね!」
…
「うん…そうだね。」
なぜか話がよろしくない方向に向かいつつあったけど、無事に解決できてよかった…のかな?
「夏実!」
‼︎
いきなり後ろから柚乃さんが夏実ちゃんの肩をポンとした。
まさか…後ろからの不意打ちなんて想像もしなかったぞ。
油断した…。
完全に油断していた。
夏実ちゃん…大丈夫かな…と恐る恐る夏実ちゃんをみるとニッコリと柚乃さんをみてカステラを渡していた。
あー、夏実ちゃんがまた泣き出さなくてよかったー。
ホッ。
夏実ちゃん、落ち着いてほんとによかったー。
オレは孫を見るような眼差しで夏実ちゃんをみていた…ら…
「夏実ちゃん、落ち着いたんだね。」
と、みさきくんがいうじゃありませんかっ‼︎
なんてことを夏実ちゃんに…
…
アワワとオレが慌てふためいていると夏実ちゃんは、笑顔で
「うん!もう大丈夫。さっきは、ごめんね。柚乃ちゃんとカステラ一緒に食べてね。」
とみさきにも笑顔を向けていた。
おお…夏実ちゃん。
完全復活だ。
ほんとよかったー。
これでとりあえずは、安心なのかもしれないな。
夏実ちゃんとオレも仲直りできたし。
あー、めでたしめでたし!
って簡単に終わるわけじゃないんだよなー。
夏実ちゃんの笑顔をみながらオレは、これからどうなるんだろうなー…と、少し心配になった。
そしたらいきなり夏実ちゃんがオレの方を向いて、
「それじゃあ、わたし達帰るね!」
と言ったかと思うと、
「あ、今度ハムスターみせてね!幼馴染としておじゃまするね!」
と言いながら手を振った。
…幼馴染か。
夏実ちゃんは、やたらオレに幼馴染をおしてくるな…。
‼︎
もしかして…もしかしたら夏実ちゃんは、オレが夏実ちゃんを好きだっていうことを気づいて…しまったのでは?
…
あー、たしかにさっきも夏実ちゃんが泣いて走って行った時も一目散に追いかけちゃったもんなー…。
夏実ちゃんは、オレの気持ちに気づいて幼馴染バリアを張ったのかもしれない。
気を持たせたらオレの気持ちに応えられないから…だから…だからあえて幼馴染、幼馴染と連呼していたのかもしれないな。
夏実ちゃんなりの優しさなのかもしれない。
「うん!わかったよー。」
と返事を返した。
朝は、学園祭が何かの罰ゲームなんじゃないかってくらいな感じだったけど、夏実ちゃんが来てからは、プチハプニングもあったけど、途中からはパラダイスにかわったもんな。
夏実ちゃんは、オレにとってオアシスなのかもしれないな。
まぁ、夏実ちゃんにとったらオレは休憩所みたいなものだろうけどな。
みさきと柚乃さんの仲を笑顔でみつつ、心で泣いているんだもんな。
学園祭から数日が経ったころ夏実ちゃんから連絡が届いた。
ハムスターみに行ってもいいかな?って。
もちろんいいに決まっている。
なので夏実ちゃんが来たから早速家に入ってもらおうと思ったら、夏実ちゃんは
「玄関でいいよ。わたしは、幼馴染だから部屋で二人きりとかよくないと思うの」
と提案してきた。
…うん。そうだね。
バリアがすごいけど、そうだよね。
オレは…まぁ押し倒したりしないけどさ、でもガードをきっちり固めるのは、やっぱり大事だよね。
「あ、じゃあ今ハムスター玄関に連れてくるね。」
「うん、ありがとう」
…部屋きれいに片付けた自分が少し恥ずかしかった。
その日は、ほんとうに玄関までしか上がらなかった夏実ちゃんなのでありました。
幼馴染って色々複雑ーー‼︎と、思い知った。
あ、そもそも幼馴染って…なんか…昔、手とか繋いだり、部屋にずっと二人きりだったり…なんなら…一緒にお風呂入ったり…食べ物わけっこしたり…
恋人と呼べるようなことを幼いころに体験しているから…なんかいろいろグレーゾーンなんだよなー…。
夏実ちゃんは、それらを後悔しているのかもしれない。
幼くてなんにも知らなかったとはいえ、あんな…こんな…みたいな。
でも…幼馴染とはいえ、ファーストキスは奪っていないからセーフだろ。オレはセーフなんじゃないのか⁉︎と自分に言い聞かせてなだめたのでありました。
…
続く。




