距離
ズズズとジュースをすすると柚乃さんがオレをみて目を丸くした。
え?
な、なに⁇
…
柚乃さん…どうしたんだろうと思っていたらいきなり、
「それ、夏実のじゃないっ⁈」
とオレのジュースを指差した。
⁉︎
すると夏実ちゃんが、
「あ、ほんとだ。わたし直斗くんと同じやつおかわりしたの。こっちが直斗くんのだよ」
とオレのジュースを差し出してきた。
⁉︎
かと思ったら、夏実ちゃんは
「間接キスにならなくてよかったね!わたしまだ口つけてないから大丈夫だよ」
と言いながら…
言いながらさ…
さっきオレが間違えて飲んでしまったジュースをスススーッと飲みだしたのですが⁉︎
な、夏実ちゃん⁉︎
それ…オレ…口つけてしまったのですが…
夏実ちゃん…、全然よかったね!じゃなくない⁉︎
天然もすぎるだろ…
「あの、夏実ちゃん…オレさっきそれ口つけちゃったから…新しいの買ってくるよ」
と席を立とうとすると夏実ちゃんは、
「えー、いいよぉ。たいして飲んでないし」
と言い出したのですが⁉︎
量の問題じゃございませんよね…⁇
「あ…あの…そうじゃなくて…」
…
「ま、いいって言ってるんだからいいんじゃない?」
と柚乃さんがサラッと言った。
そして、柚乃さんは…みさきに
「それ、一口ちょうだい?」
なんて言っていらっしゃる…
で、みさきも
「うん、いいよ!じゃあ柚乃ちゃんのも一口ちょうだい」
なんてイチャイチャしてるじゃん…
えっとー…
それをみていた夏実ちゃんは、ジュースを飲みながら
「二人は、仲良しでいいなぁー」
と仲良し二人を羨ましそうにみて言った。
好きな人が目の前で彼女とイチャイチャしてるなんて夏実ちゃんよく耐えられるな…
え、えっとー…
なんか頭痛くなってきたぞ。
こめかみをギュッとおさえると夏実ちゃんが
「大丈夫?」
と声をかけてくれた。
「だ、大丈夫…なはず…」
「え、でも顔色良くないね。そろそろお開きにしよっか。」
夏実ちゃん…ごめん。
オレ何もしてあげられなくてごめん…
こんなオレにも優しく声をかけてくれる夏実ちゃん…。
「夏実ちゃん…ありがとう」
「え?ありがとうなんて…なんにもしてないじゃん。」
と笑う夏実ちゃんがとにかく天使にみえた。
オレはこんな天使を地獄に突き落としているんだ…。
夏実ちゃんの好きな人を…
夏実ちゃんの心を…
オレは…オレは…
オレって…夏実ちゃんにとって最悪な人間じゃん。
芳香剤だよーっていいながら腐ったみかん飾ってるくらい最悪なやつじゃん…。
こんな優しい夏実ちゃんにオレは何をしてあげられた?
恋の応援すらしてあげられないどころか、なんなら余計なことしてるよね?
その鍋熱いから熱いからっていいながらずっと持たせていて置かせてあげないくらいの嫌がらせ感…半端ない…
もう情けないやら、悔しいやら…
オレは夏実ちゃんと帰っていたけど、帰り道…あんまり辛すぎて…
夏実ちゃんを思うとあんまり辛すぎて…
「ごめん…夏実ちゃん…ほんとごめん…」
と泣き崩れた。
「えっ?直斗くん⁉︎どうしたの⁉︎」
「ごめん…夏実ちゃん…オレほんと余計なことばっかりで…」
「え?余計なんて…何言ってるの?直斗くん、大丈夫?」
「オレさ、夏実ちゃんの好きな人知ってるのになんにもしてあげられなくてさ…」
「あ…、直斗くん。わたし……わたしの方こそごめんなさい。自分の気持ち押し付けて…。さっきもみんなの前であんなことして…直斗くんをそんなに苦しめてるなんて…。ほんとごめんなさい。…わたし、直斗くんと…距離…これからは、直斗くんと距離おいたほうがいいのかな」
…
うん。そうだよな…。
夏実ちゃんは、オレから離れていた方がいいんだ…。
「うん。そうしよう…」
「…うん。わかった…それじゃあね。直斗くん…」
「バイバイ…夏実ちゃん。」
夏実ちゃんは、オレの元を去っていった。
終わった。
疎遠どころの話じゃない…
もう…もう…夏実ちゃんと話すことすらないのかもしれない。
ごめんね。夏実ちゃん…
ダメな幼馴染で…
恋もダメにして苦しめてごめん…
どうか、どうか次…夏実ちゃんに好きな人できたらその時は、両思いに夏実ちゃんがなれますようにと祈った。
続く。




