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58.バレてるな……

「この店にはなんでもありますよ~。食べ物から武器になりそうなものまで、なんでも。ほら、たとえばこれとか」


 そう言いながら、ユウナさんはこそこそと何かを取り出す。バンと目の前に置かれたのは……目覚まし時計だろうか。しかも画面表示がデジタルのものである。あまりにもこの世界には不釣り合いなもので、思わず笑ってしまいそうになった。


「これは目覚まし時計と言って、この乾電池を定期的に交換する必要がありますが時間になったら音を鳴らして起こしてくれるんですよ。しかも画面表示が大きいから老眼にも優しいんです~」


 画面表示という言葉をこの世界に来てから初めて聞いた。これにはウェイド辺境伯も不思議そうに時計を眺めている。そりゃデジタルの表示なんて見たことないのだろう。


「あら……あなたは意外と驚きませんね~? あまり珍しいものではなかったですか?」


 二度目の指摘である。しかもどこか疑ってそうなあの表情……もしかしたらなんとなくでも私がこの世界の住人ではないと気がつかれているのかもしれない。


 まあ私も一目で彼女がこの世界の人間ではないのを分かったから、ある程度は分かるのかもしれない。


 ……とはいえ。私は転生して現地の姿になっているし、服とかも現地のものだから見た目では理解できないと思うけれど。


 雰囲気というものだろうか。


「め、珍しいですね~……」


 けれどもここにはウェイド辺境伯がいる。彼にバレるのは話がややこしくなるので、それだけは回避したい。明らかに露骨ではあるが、驚いている風に装うことにした。


 私の対応に、ユウナさんは糸目でじっと見てきている。若干気まずい。


「よければ……シセさんとの出会いの印に、こちらの商品差し上げますよ。なんだかとても寝る方だと聞いておりますし」


 どうやら私はよく寝る人だと伝わっているようだ。別にいいのだけれど。


「もちろん乾電池も付けておきますよ~。次回以降は……そちらも買ってください♡」


 ……乾電池式の時計を譲るというのには引っかかっていたが、さすがは商売をしている人間である。その辺りはしっかりとしている。


 でも、目覚まし時計というものは実際にありがたいのは確かだ。正確な時間配分で行動できるようになるし、色々と助かる。


「こりゃもう、この店には通うしかないな。シセも喜んでいるしとてもありがたいよ」


「いえいえ~。これも顧客を確保するための大事な戦略ですので~」


 なんだかお金を想像して嬉しそうにしているように見える。そりゃ貴族の顧客を持つのは大きな利益になるのは間違いないから、向こうも逆にありがたいのだろう。


「ありがとうございます、ユウナさん」


 私がお礼を言うと、にこりとユウナさんが笑う。


「お気になさらず。もしよければ……私、シセさんとまたお話がしてみたいです。よければ……またの機会にお会いしましょうね?」


「あ……はい……」


 これは……完全にバレているな……。


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