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目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~  作者: 白い彗星
第二章 異世界っぽい世界で学校生活
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第58話 ブチギレのリミたん



「あ、やべっ」


 回復魔法を取得し、達志を癒やしてくれた幼馴染み。

 どうやら、怪我をしていた生徒も治して回っていたようで、その頼もしさに嬉しくなる。


 ……しかし、どうやら感慨に浸っている暇はないらしい。

 安全地帯を作ってくれていた、ヘラクレスの言葉。焦りが混じった言葉と同時に、激しい音がした。


 触手や暴走族から、身を守るための土の壁。それが、音を立てて壊れたのだ。

 触手が、壁を破壊したのだ。


 触手は水だから相性的に不利だったのか、単に力比べに負けただけか。なんにせよ、土の壁を突破された。


「ちょちょちょ!?」


 障害物を破壊した触手は、達志に狙いを定める。回復魔法で疲労が回復したが、この距離で、逃げきれる自信はない。

 このまま攻められれば、体を串刺しにされて終わりだろう。


 そんな最悪なビジョンが浮かぶ中で、触手は達志に襲い掛かる。せめて、由香だけでも……

 そうして、由香の体を突き飛ばそうと、体を動かした、その瞬間……


「させません! ていや!」


 ……瞬間、凍った。

 水の触手は見事に凍り、その場で固まって動かなくなってしまったのだ。間一髪、助かった。


 それを行ったのは……


「リミ!」


「タツシ様! ようやく見つけました!」


 ウサギのようにぴょんぴょん飛び跳ね、達志の目の前に着地する少女、リミだ。

 はぐれてしまっていたが、どうやら見つけてくれたらしい。情けない話だが、心強い。


「スゲーなリミ、あの触手が凍っちゃって……」


「いえ、ダメです!」


 触手を凍らせたら、動きを封じてしまった。これならば、対処も楽になるのでは……と思った矢先に。

 リミは、達志の手を握る。普段なら、自分から繋ぐなんてしないのに。


 何事かと思った矢先に、氷が砕け、元の触手に戻ってしまったではないか。


 それを見届ける前に、リミは動き出していた。

 おかげで一歩早く先に、その場から退くことができたが……リミの氷をも、破壊してしまうとは。

 気持ち悪い見た目と、とんでもない破壊力があるようだ。


 とにかく今は逃げつつ、体勢を立て直そう。リミもいるんだし、もっとマシなことができるはず……

 そう、考えていた最中。


「ヒャッハー!」



 そこへ、耳障りな声。正面にはあのトサカゴリラ。

 触手に気を取られていたせいか、本人が移動しているなんて思わなかった。そして、トサカゴリラは達志に向かって……


「さんざん馬鹿にしやがって! おらぁ!」


「ぶふ!」


 溜め込んだ怒りを吐き出すように、頬に拳を突き立てる。

 なかなかに重い一撃だが、耐えられないほどじゃない。なんだったら、目覚めた直後に貰った看護師さんのビンタのほうが効いた。


 だが、ダメージはダメージだ。疲労が回復していたため倒れずに済んだが、これ以上醜態は見せられない。

 その場で地面を踏みしめ、倒れるのを阻止。これでやられてなるものかと、言葉を返そうとして……


「た、タツシ様! ……お前、今タツシ様を……!」



 ……頭が、体が、突然の寒さを感知して、震え出した。悪寒が走る、と言うのだろうか……いや、それ以上だ。

 雰囲気だけではない、実際に場の気温が、下がったように感じた。このひんやりした空気は、いったい?


 その発生源は……リミだ。


「あの、リミ……さむ、寒いんですけど。雪まで降り出したよこれ!」


 これは……もしかして、リミは……キレている、のだろうか。


 殴られたとはいえ、些細なことだ。しかしリミは、達志が傷つけられたことに、怒っている。

 そのリミの気持ちに呼応するように、雪風も強くなっていく。


 ……場の空気が、変わっていく。


「えっと……まずくね? これ……

 リミ……リミさーん? ほら、俺大丈夫だから。殴られただけだからさ!」


 急激に辺りの気温が下がったように感じるのは、気のせいではない。

 現に、リミの体からは冷気……のような、青白い光が漏れているのが、わかる。


 リミを中心に、空気中の気温は低下していく。当然、それは人体にも影響を及ぼし……肌寒さを感じさせる。

 ……肌寒さで、済むのだろうか。


「む? これは……」


「おや、なんだかひんやり……」


「こ、これはまさかぁー!?」


 触手相手に殴り続けていたマルクスが、魔法を撃ちたがりたくてウズウズしていたルーアが、逃げ回っていた生徒の誰かが、口々に体の異変を察知する。

 早くも、周りへの影響が出始めたらしい。


 遠く離れたマルクスたちでそれなのだ。リミの近くにいる達志は、それはもう肌寒いなんて次元を通り越していふ。

 鳥肌は立つは皮膚がふやけるわで、散々だ。


「あの! ちょっと、リミさん!? 俺のために怒ってくれるのは嬉しいんだけど、これ俺にまで……

 ってか俺に結構な被害が!」


「あらー、聞こえてねえな。よかったじゃねえかタツ、可愛い女の子にこうまで想ってもらえて」


「想いの結果凍えそうなんだが!? なんでお前平気なの!」


「スライムだから?」


「なるほど、わからん!」


 達志のために怒ってくれているのに、その達志に被害が出ているのでは、本末転倒だ。

 そしてその達志の声が届かないというのだから、始末に終えない。


 直接止めようにも、寒さが増していっているため、近づくことも出来ない。

 ならば寒さを感じない、スライムに止めてもらいたい。


「いやー、寒くねえってだけで、動けねえよこれ。タツもそうだろ?」


 どうやら、無理らしい。


 そもそも、達志が怪我をしただけでこんなにも怒っている。殴られたとはいえ、たいした怪我では……

 いや、痛いけど。


 それでも、それだけの理由でこんなにも怒っている理由が、達志にはわからない。クラスメイトが傷つけられて怒り心頭なのだろうか。

 だとしても……


「心優しいのか鬼畜なのかわかんねぇええ!」


 クラスメイトが傷つけられることには敏感なのに、それに対して怒ったときの、周りに対してのリスクが大きすぎる。

 それに、気温を変化させるなど、いったいどれほどの力なのであろうか。

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