表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/125

14,食文化の改善〔2〕

 もう一つ忘れてはいけないのは、醤油の発明があった。

 煮て良し、焼いて良し、()けて良し、舐めて良し、この発明はさまざまな料理に応用が可能であるし、日本食を見ればたいていこの醤油は出てくる。日本食以外にも隠し味に使われていることも多い。

 ただ、醤油なら作り方はわかるが、準備が足りない。

 しかし、ヒロインが簡単に作ったということは菌があるはずである。これも絶対に見つけてやる。



 しかし、あれこれと述べてしまったが、それにしても食文化のガバガバ設定のせいで、この世界の人たちはみんな舌が完全に麻痺しているとしか思えない。


 開発者はいったい何を考えていたんだろうか。こんな悲惨な世界のどこがバラードだというのだろう。よくヒロインがやって来るまで耐えていたとむしろこの世界の人たちを私が代表して褒めたいくらいだ。


 アリーシャやオーランたちと話していても「美味(おい)しい」という発言は皆無である。美味しさのない世界というのか? 

 食べるという行為にそんなに意味を見出していないのかもしれない。

 しかし、その行為は単なる動きでもなく栄養補給でもなく、総じて文化的な営みである。食は生活にも関わる。人間の行動原理にすらなりうるものである。


 それなのに料理人はいるというのが摩訶(まか)不思議(ふしぎ)なところだ。

 加えて、調理器具や器などはしっかりとしている。包丁の種類も多いし、フライパンも多い。

 しかし、泡立て器はいったい何料理に使っているのか一度オーランに訊いてみたいものだ。新しい武器だろうか。焼き跡を付けたりマッサージでもするつもりだろうか。

 シャモジまであるのは、もはや噴飯物(ふんぱんもの)でギャグでしかないだろう。飛び道具だろうか。きっとよく飛んでいくだろう。それとも厨房で目の検査でもするつもりだろうか。



 いや、食だけじゃないな。この世界は生活全般がとてもふわっとしている。

 たとえば、歯ブラシもなければ耳かきも爪切りも鼻毛カッターもない。鼻毛は涙目になりながら指で根こそぎ抜くんだろうか、大きなハサミを鼻に入れてチョキチョキするんだろうか。耳には小指か木の枝でも入れてほじくるのだろうか。


「まあ、ゲームにそんな細かい設定は必要ないということか」


 若い子たちがやるゲームだ、妙に生々しい生活感が描かれていないことも考えられる。

 爪が伸びたとか、耳の穴をほじくるとか、ましてやトイレの描写なんてありはしないだろう。まあ、辛うじてトイレはあったのは開発者に残されたわずかな良識だったのだろう。


 ヒロインが排泄(はいせつ)するシーンなど、ぼやかしても汚いイメージを想起させるだけだ。

 きっと流れるのは尿でもよだれでも鼻水でもなく、懸命に打ち込んだ青春に(きら)めく汗であり、好きな人に会いたいと疾走して伝う心の汗であり、みんなアイドルみたいにトイレに行く必要はない妖精さんなのだろう。


 はぁと長いため息をついてしまうが、これらをすべて逆手に取って、歯ブラシや耳かきなどを作ればいい、そう思うようにした。今は不自由なくとも、「日本にいた時にはこんなのがあったな」と思い出すものもいくつかあるだろう。自分が不便だと思ったものを作りだしていけばいい。

 ピンチはチャンスである。ただ、大ピンチは大ピンチでしかない。一刻も早く、こうした大ピンチから抜け出したいし、領民を救出したい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ