Kapitel 5 “der Unfall” Szene 5
「ところで本日お会いした若い子が、浴室でボクの着替えシーンと裸体を覗き見していた様ですよ。余りに過剰な刺激だったのかそれとも、男性に欲情してしまう事への罪悪感、新たな性癖の目覚め、抑えるのに必死だったんでしょうか、のぼせて倒れるまで頑張ってました。最後は執事五人がかりで部屋に担ぎ込まれて行きました」
「ふぇ?」
「うーん、ボクもびっくりしたんですけどね。何故オトコ風呂でこそこそと隠れて高温地帯にいるのかな、って。たまにお爺さんでアツアツのお風呂が大好きな方、いますよね。だから最初はそういう子なのかなと様子を伺っていたんです。髪の手入れに集中したかったので、そのうち話しかけてくるのかな、と。ふふっ」
一転して訝しげに表情を曇らせる事業主と役員。
「……あー、それはだな、つまり、ヘルタ君をオンナノコに間違えて、無い胸をあるものと考え、立派な男性の象徴を無いものと考え、鍛え上げられた肉体美を偏見無く取り込んで。案外、君が誘惑したんじゃ無いのかね?」
「滅相もありませんよ。ただ彼は失神後も見事な主張を続けていたので、そこはビックリしましたね」
鼻孔の流れを白々しく。
「お二人様、まずはジロンド様の心配が先決です」
「むむっ、それでは向かうとしようか、執事達に倒れていた状況の詳細を聞かねばな! 彼は今服を着ているのかいないのか、それが問題だ」
「どちらかと言えば『トゥー・ビー・オア・ノット・トゥ・ビー』をご自身に当てはめて考えて貰いたいですね、伯爵様」
肥ったカエルが二本足で走るように、ジロンドの部屋へと急ぐ。
「では私はこれで。夕食まで時間はあるのでしょう? 落ち着いてボディケアも出来やしない……」
アクアマリンのネックレスを一瞥すると、美しいボディラインを主張しながらダイニングを後にする。
「若いうちは小生意気な位で丁度良いのでしょう」
冷めた揚げ物をひょいとひとつまみし、手持ち無沙汰な時間を味わっていた。




