Kapitel 4 “das Schicksal” Szene 7
「あらあら手厳しい、年下の子供にこんなに感情を顕わにされたのは初めてですよ」
溜息を交えながら、腰元に手を回し祝福の碧空を仰ぎ見る。
ぐるぐると咽をうねり鳴らす様を優雅に見下ろし、仔犬のワルツの奏者の頬に指を滑らす。
「ふふ、ジロンドくん、いいえジロンドさん、これは失礼仕りました。そう、私達は主様の元でこれから仲良く寝食を共にする仲間なんですから。そんな機嫌を悪くしないで、ねっ?」
「べっ、別に怒ってなんかねーしっ! た、ただよっ、へ、ヘルタさんの、そ、その変に気持ち悪い服がさっ、もうちょっとさ、真面目にやれよって言いたかっただけっ!」
「変な格好……?」
つむじ付近の跳ねた癖毛を薬指にゆるゆると絡ませ、童顔の瞳をまじまじと見つめる。
「父と母から沢山の愛情とお金を注ぎ込まれた、この美しいボクの躰にケチを付けるとはね……ふふ、面白い子だ。ボクにふさわしい凄艶な衣装とランジェリーを纏っているだけさ」
「……よ、よくわかんねーけどっ、職場のフウゾクを乱しちゃいけないって、学校の先生だって言ってたぜっ。伯爵さまっ、こういうのはゲンジュー注意じゃなんじゃねー……っすか」
「まぁまぁジロンドちゃん細かい事は置いといて……ねっ、簡単にいえば治外法権、って言うんだよ、寧ろ君も案外『目覚めて』しまうんじゃないかい?」
「なっ……伯爵さま、わ、私は一所懸命ここで頑張って働くつもりなんですからねっ! へ、ヘルタさんみたいに育ちも頭も良くないっすけど、お、オトコかオンナみたいな格好した奴なんかより二倍、三倍の勢いで働きますからっ!」
必死の請願を見透かしたように、大柄の紳士は銀髪少年の背中を撫で回す。
「まぁ最初だから、無理はいけないよ無理は。じっくりとゆっくりと、ココの事を知っていけば良いんだよ。とにかく疲れたろう、後は執事たちに任せて、今日はゆっくり休みなさい」
少々興奮気味のジロンド、冷静沈着を装うヘルタを屋敷に招き入れる。
「執事たちの説明が終わったら、お風呂にでも入ったら良い。明日に備えて、今日は思いっ切りくつろいでくれ」




