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これからどうするかを姉上などと話し合ってみたよ

  さて、鎌倉幕府も室町幕府も基本的には合議制の政治形態で、江戸幕府も基本的にはそうだったわけだが、現状の室町幕府は土地に対する司法権を投げ捨てたおかげで、徴税権も結果的に失ってほぼ無力な存在になった。


 それ故に応仁の乱以前は一部を除けば在京して幕府の政策を決めていた守護たちが守護国へ下向したりして守護や有力国人が国を直接統治するという状況になっている現状ではここさえ押さえれば、もしくはこの武力集団を倒せば日本国内での政治的勝者になれるという場所などがないわけだ。


 だからこそ最終的には豊臣秀吉が全国を武力で制圧し、徳川家康が江戸幕府を開くまで争いがおさまらなかったわけで、室町幕府を再興するのも室町幕府を打倒するのもどちらもほぼ不可能という厄介な状況である。


 かといって将軍の権威がまったくなくなったわけでもなく守護や守護代という地位にはそれなりに意味があるという状態でもあるのでなかなか頭がいたい。


「とりあえずこれからどうするか姉上とも話し合ったほうがいいか」


 俺がそういうと大道寺重時はうなずいた。


「そうだな、お前さんは駿河守でもあり駿河守護代でもあるわけだし」


「つまるところ駿河の年貢を朝廷や幕府へ納める義務があるっていうことでもあるんだよな」


 俺がそう言うと風魔小太郎は苦笑した。


「そうしているものはほとんどいないようですが」


「まあ、大体は自分の守護領国を守るので精一杯だしな」


 大内や細川のように守護国が基本的に固まっていて、明との貿易で潤っているようであれば、また話は別だが、斯波のように越前と遠江を失って尾張を保つのが精一杯というような連中のほうが多く、山名や京極、一色なんかはまさにそんな感じだからな。


 俺は伊豆における実質的な独立領主ではあるが、名目的には駿河の方の公的な仕事もしないといけないので駿河の今川館へ向かった。


「姉上お久しぶりでございます」


「ええ、久しぶりね。

 こうして龍王丸も無事7つになれたわ」


「それはめでたいですな」


 この時代は夭折するものは少なくなく裕福な守護の家に生まれていてもそれは変わらない。


室町時代の守護は荘園領主らと年貢納付の請け負い契約を結び、実質的に荘園への支配を強める守護請を行い、税の一種である段銭や棟別銭の徴収なども行いそれを中央へ収める役割もあり、それまでは国司が管轄していた国衙すなわち朝廷の地方管理組織を吸収し、国人を被官にしているわけだが、その領国支配は必ずしも徹底したものではなく、国人が守護の被官となることを拒否した例も多く、その傾向は応仁の乱以降は更に強くなったが。


「龍王丸が元服したらすぐに駿河・遠江守護に任じられるように工作はしておくべきでしょうが、現状は遠江西部の国人が背かぬようにしておくべきでしょうな」


 俺がそう言うと姉上もうなずいた。


「そうですね。

 遠江奪還は今川家の悲願でしたが、東部はともかく西部は斯波の影響はまだまだ強いですし、名目は未だ斯波の守護領国ですからね。

 細川家を助けるため三河に出陣したこともありましたが、もうその必要性もないですし」


「三河に出陣した後で遠江の国人に反旗を翻されて進退窮まるなどというのはごめんこうむりたいですからな」


「ええ、関東も情勢も不安定なのでしょう?」


「そうですな。

 とは言え箱根を抜けて攻め込んで来ることはないと思いますが」


「そうあってほしいものね」


 実際古河公方に一度は三島まで攻め込まれているからな。


「ともかくしばらくは足場を固め、中央より遠江と伊豆の守護の任を受ける事ができるように手配をしておくべきでしょう」


「わかりました。

 そのあたりは任せます」


「ではそのようにいたしますよ、姉上」


 朝廷や室町幕府の残された少ない権威が任官権限だがこれもこれで馬鹿にできないからな。


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