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京ではちょっとややこしいことになっているようだ

 さて、蕎麦を美味しく食べられるような工夫をしたり、蕪や大根、麦などを作付けしたりなんだりしている間に年が変わって、文明5年(1473年)になった。


 龍王丸も無事成長し数え2歳となっている。


「姉上、龍王丸が無事に成長して何よりですな」


 俺がそう言うと姉上はほほえみながら嬉しそうに言った。


「ええ、そのとおりです」


 長女である栄保も元気に育っているが、小さいときは女の子より男の子のほうが体が弱いことが多いからな。


 今川支流の家や朝比奈・岡部などから正月の挨拶を守護代として受けているがまあそこそこ駿河は落ち着いてきたとは思う。


 それはともかく京の都ではちょっと面倒なことになっているようだ。


 昨年に足利義政は息子の足利義尚に将軍職を譲って隠居して、義政は小河に建設した新邸に移り、室町御所には富子と義尚が残された状態であったが、かえってそれにより足利義政は闘茶で権威を取り戻してしまい、義尚の後見人である日野富子やその兄である日野勝光のと意見の食い違いが起こり、仲が悪くなっているようなのだ。


 義政は俺に関東の騒乱を鎮圧させたいようだが、富子たちは俺を京へ呼び戻したいらしいんだよな。


 要は政治の意思決定機関がふたつに分裂してしまったようなものなんだ。


 実情としては五十子(いらこ)の戦いを中心とした古河公方足利成氏と関東管領上杉氏一族の間で行われている戦いはいまだに決着はついていないのでそれを放置して京へ戻るのはありえないし、実際に一昨年古河公方足利成氏が伊豆にまで攻撃をかけたこともあって俺を京に呼び戻すのは時期尚早という意見のほうが強いみたいだけどな。


 それに、関東管領家である山内上杉家の家宰の長尾景信(ながおかげのぶ)は59歳とすでに高齢であるが、足利成氏が古河城を奪い返したあとに再び自ら総大将として足利成氏と対峙しているのだが、どうも体調を崩しているらしい。


 彼の死後、白井長尾家の力を恐れた上杉顕定は景信の子である景春を登用せずその弟の忠景を家宰としたため、景春が反乱を起こし、それにより山内上杉家は弱体化して扇谷上杉家と対立関係となり、上野においては長野氏ら上州一揆の国人勢力が台頭することで関東は余計に荒れることになるはずだったりするんだよな。


 とは言えこれに関して俺が介入できる要素はないので成り行きを見ているしか無いのだが、そうなったらこれ幸いと駿河守護代として関東の騒乱を鎮圧しろとか足利義政なら言い出しかねないのが怖いところだ。

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