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秋そばの収穫ができたのでそば切りを試してみたが美味しくするのにはかなり工夫が必要だな

 さて、大豆の収穫後に栽培を開始した蕎麦は約2ヶ月半~から3ヶ月ほどで収穫が可能となるので10月から11月くらいには収穫可能となった。


「うむ、なんとかそれなりの量は収穫できそうだな」


 俺がそう言うと大道寺重時も笑顔でいった。


「なんだかんだで作物がたわわに実っているのを見るのはいいもんだ」


 そして蕎麦を石臼で粉にして水を加えてこねて麺にして細く切って茹で、そば切りに早速挑戦するのだが。


「うーむ、イマイチだな」


 そば粉だけを粉にして麺にしてもボソボソしているし、切れやすいしで正直うまくはない。


「ああ、やっぱうまくはないな」


「これはかなり工夫が必要だな」


 工夫は麺そのものに加えてめんつゆにも必要だろう。


 この頃のうどんやそうめんも含めてのめんつゆは「垂れ味噌」でつくるつゆが普通で、味噌に水を加えて煮詰め、それを布で漉したものだ。


 焼き肉などにつける液体を「タレ」ということがあるが、これはそば切りに垂れ味噌をつけてたべていた時の名残らしい。


 いわゆるたまり醤油を人工的に作ろうとするようなもので、室町時代には普通に使われている。


 煮詰めずに味噌に水を加えて濾すだけの場合は「生垂れ」と呼ぶ。


 それに少し工夫を加えたものが「煮貫(にぬき)」で、生垂れに小さく砕いた鰹節を入れて煮詰めて、漉したもの。


 煮貫をさらに推し進めた「煎酒」は、煮貫に梅干しと酒を加えて煮詰めて漉したもので、江戸時代前期から中期には万能調味料として重宝されていた。


 そして蕎麦つゆといえば、醤油をベースにして鰹節、醤油、みりん、砂糖を加えたものが定番でこれは18世紀中頃に考案されたらしい。


「まあとりあえずは垂れ味噌に色々薬味を加えるべきだろう」


「そうだな、刻んだあさつきと一緒におろしたわさびを加えてみるか。

 麺には1割か2割ほど小麦粉を混ぜてみよう」


「うむ、そうしてみよう」


 めんつゆにおろしたワサビを加えるのは現代でも珍しくない。


 特にざるそばやもりそばなどの冷やして食べるものでは定番だ。


「うむ小麦粉を2割加えたものは切れにくくなってだいぶ食べやすくなったな」


「ああ、1割では少し足らぬようだな。

 そしてワサビと刻みあさつきを加えたことでだいぶ味がスッキリしたな」


「しかし味付けがまだいまいちだな。

 干鰯で出汁をとって、濾した酒も加えてみるか」


「うむ、そうしてみよう」


 なんで俺たちはグルメ漫画の主人公のようなことをしているのか疑問に思わなくもないが、うまいは正義だ。


 そしてこの時代のかつお節や昆布、干し椎茸は高級品であって、一般庶民が出汁を取る材料にはしづらいがイワシを煮て脂を取り除き酸化しづらくした煮干しつまり干鰯は安く作れて出汁としても悪くない。


 急ぐ場合は熱湯で煮出すが、水に適量の煮干を入れて一晩おいておいて出汁を抽出するだけなら薪代もかからないしな。


「お、これはかなりうまいんじゃないか」


「ああ、イワシの出汁と酒も馬鹿にできんな」


 旨味というのは基本的にタンパク質が分解されたアミノ酸によるものなのでそれらを含んでいる物をうまく加えれば美味しくなるのだ。


 まずは自分たちで積極的に食べるようにして、徐々に庶民の食べ物としても広めてもいきたいものだな。

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