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冷遇されたらしい朝比奈や岡部がこちらに鞍替えしたよ

 さて、緑茶や大豆、木綿の栽培だが、緑茶に関しては石灰による中和がなくとももともと酸性を好む植物なのでこちらに関して問題はなかった。


 大豆と木綿は石灰の量を勘でまいたこともあって大豊作とは行かないが、まあそこそこの量は取れた。


「いままでまともに育たなかったなら大成功じゃないか」


 大道寺重時が笑顔でそういうので俺は頷いた。


「ああ、農地として使える目処はある程度ついたな」


 大豆はそのまま食べようとしても食べづらいので、保存もかねて味噌にすることが多いが、豆腐や湯葉の原料と考えれば僧侶には大切なタンパク源でもあるからそういうところへ持ち込めば、そこそこの値段にはなるだろう。


 木綿もその価値はすでに十分知られているしな。


 大豆や蕪は連作障害が出やすいので次に作るのはネギかレンゲソウを植えて牛馬の飼料としつつ緑肥にするかだな。


 後は比較的乾燥に強い大麦でも植えれば……ああ、いわゆるノーフォク農法みたいな感じになりそうだ。


 そんなことをしているうちに朝比奈泰煕が俺のところへやってきた。


「これはこれは本日はどのような用件でございましょうか?」


「私の今までの行いを許し、龍王丸様のもとでまた働かせていただきたく思いましてまいりました」


「小鹿殿は、伊東や三浦と言ったものを重用しているようですな」


 今川義忠が戦死した後、長谷川氏や鎌倉時代に吉良長氏から分家した今川国氏の次男の常氏の関口氏、3男俊氏の入野氏、4男政氏の木田氏など今川支流は龍王丸を支持したが、三浦氏・朝比奈氏・庵原氏などの鎌倉以来の土豪は小鹿範満を推していた。


 しかし、小鹿範満が河東と呼ばれる富士川より東の地域に根を張る伊東や三浦といった豪族を重用し、足利政知や太田道灌に従って足利成氏討伐の兵を出すように命じると朝比奈泰煕はその考えを改めざるを得なかったようだ。


「さようです。

 我々は彼等の下扱いで納得が行かないのです」


「わかりました。

 ちょうど緑茶の栽培地域を広げたいと思っていたところです。

ですので朝比奈殿には茶栽培を手伝っていただきたい。

 今まで何も栽培することが出来なかったであろう土地でも茶であれば栽培が可能ですゆえ」


「おお、それは素晴らしい」


 まあそんな感じで朝比奈やその分家の岡部は小鹿範満からこちらに乗り換えた。


 まあ史実でも、大田道灌が謀殺され、上杉政憲が自害を強要され、後ろ盾を失った小鹿範満は、駿河の国人たちの支持を失い、あっさり伊勢盛時に攻められて自害に追い込まれてもいる。


 何れにせよ龍王丸の元服は早くて12歳だろうからそれまでに地盤は固めておくべきだろうな。

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