しばらくは港湾整備と市場の制度確立に精を出すか
さて、この地域では治水開墾を行うよりも先に港湾機能の整備と物資集積機能及び定期市の開催を優先しつつ、イワシなどの漁業や捕鯨、猪や鹿などの狩猟を勧めさせて肥料を確保しないと駄目っぽい。
幸い俺はすでに京や大阪での綿や絹・生糸などの繊維品、酒、味噌、たまりなどの麹の発酵製品に加えて油や紙に関しての座の権限も抑えているから、それらをどれだけ持ってきて誰に売るか売らないかを決めるのも容易いのは強みだが。
あとこういった場所ではお決まりだが遊女宿もあるのでそちらも京と同じように遊郭としていくべきだろう。
「まずはかって平浄海入道(清盛)が福原の大輪田泊を大規模に修繕したような修築工事が必要か」
大道寺重時は頷いた。
「駿河がまさかこんなに面倒な土地だとは思わなかったがまずはそうせざるをえないだろうな」
「まったくだ、だが駿河守護代としてここに派遣されたからにはやれることからやっていかなければな」
大阪から伊勢の大湊などを経由して駿河の小川湊まで船を回すのは、遠州灘が難所となるもののそこまで難しくはない。
それから座というと既得権益で暴利を貪る悪徳商人がつどうものというイメージもあるが、実際は押し買いや乱暴狼藉などの非法行為によって市場の機能が乱されることに対処するために武力と権威を持つ寺社をバックにせざるをえないという側面が強かったのも事実だ。
市を活性化させるために市場の付近の関所の通行税免除を行いつつも、市で刀をちらつかせて不当な値段に値切る押買や乱暴狼藉を行ったものは捕らえるなり、その場で切り捨てて、その首を晒すことで、そういった非法行為には断固対処するという姿勢を見せる。
「こうでもせんと、こういう非法行為はなくならんからな」
大道寺重時は頷いた。
「全く困ったものだな」
そういったことを着実に行い、可能な限り公正な取引を行えるようにしていったのだ。
ああ、ちなみにこの頃市は月に3回とか6回なので、市場では商品を売れる場所に茣蓙を敷いてそこで商品を売り買いする市座席があり、座席の権利は俺から買わなければならないし場所や面積に応じて、市場税を納めて販売を行うかわり、俺はその商取引を安全かつ公正な値段で行えるように保証する義務があるわけだ。
固定の見世棚すなわち店舗を構えた常設の小売店も少しずつ増え、米や魚、野菜などの食料品や油を中心に常時売買がされ、ここで買ったものを行商人が売り歩くようにもなっていくんだな。
それとは別に大きなまき網を作らせ何艘かの船で、大きな網を張りだんだんそれを狭くしていき船に引きあげたり、網の両端に長い綱をつけておき海岸にいる人が引きあげる地引き網や、海中に網を貼ったままにしておくさし網なども行わせて漁獲量を増やすようにもした。
またクジラやイルカを網で湊へ追込んで銛で仕留める追い込み漁なども始めさせた。
「これでイワシを田畑の肥料に使える目処も立ったか」
大道寺重時は頷いた。
「クジラやイルカも余す所なく使えるしいいことだな」
鯨の骨は砕いて肥料に、肉や軟骨は食料に、髭や歯は釣竿の先や笄・櫛などの工芸品に、油は灯用に、皮は膠に、筋は弓弦などに使えてほとんど捨てる場所はないから有効に活用するとしよう。
石灰石の切り出しも行わないといけないし、落ち着いたら嫁達を駿河に呼ぶために俺の屋敷も作らせねばな。




