ようやく京についたので実際にどんな事が起きてるのか話を聞こう
さて、備中から備前、播磨、摂津を経由して山城に入って一週間ほどでようやく京の都に入れた。
「備中が京までそこまで遠くなくて助かったな」
早雲の里荏原駅から京都駅なんて21世紀なら電車と新幹線で2時間半という距離だが、徒歩ではこの程度はかかるのは仕方ない。
「とりあえず父上のいるところに参りましょう」
「ええ、そうですね」
「参りましょう」
「そうだね兄ちゃん」
現在京における争いの御霊合戦は終了していて、細川勝元も山名宗全も兵を集めている最中だから目に見える争いは行われていないが、不穏な雰囲気はひしひしと感じられる。
俺たちはそんな中を伊勢貞親の屋敷へ向かい、屋敷ではまず父である伊勢備前守盛定が迎えてくれた。
「おお、皆そろって無事のようだな、まずは無事に再会できてめでたい」
「はい、父上。
道中特に何もなく京まで無事に到着したことはまこと幸いでした」
「まずは旅の疲れを癒やすために今宵は休むがいい。
明日は皆と色々話もしたいのでな」
「わかりました」
その日は夕食をとった後は家族揃って寝て、翌日。
「うむ、では皆こちらはこの屋敷に主人であり京都伊勢氏の当主でもある伊勢伊勢守(貞親)だ」
まずは俺が挨拶をする。
「お初にお目にかかります。
千代丸にございます」
続けて弟も挨拶をする。
「お初にお目にかかります。
千寿丸にございます」
「うむ、よく来たな」
「それからこちらの方が駿河守護の今川治部(義忠)だ」
まずは俺が挨拶をする。
「お初にお目にかかります。
千代丸にございます」
続けて弟も挨拶をする。
「お初にお目にかかります。
千寿丸にございます」
「うむ、将来が楽しみな若者と聞いている」
「そしてこちらが伊勢駿河守(貞道)だ。」
「お初にお目にかかります。
千代丸にございます」
続けて弟も挨拶をする。
「お初にお目にかかります。
千寿丸にございます」
「うむ、そんなにかしこまることはないぞ」
そして伊勢伊勢守貞親が話し始めた。
「わざわざ家族全員で上洛してもらった理由であるが、我が実弟である伊勢備中守(貞藤)が、遠江の今川所領の没収問題を巡って、私や治部と対立していてな、どうやらあちらは山名入道に付きそうでもあったので、備中に下ってもらうことにしたのだ」
「近くにいて寝首をかかれると困るということでしょうか?」
「そういったこともあるが、むしろ、荏原荘のある備中の周りの備前・美作・備後の守護は全て山名であるからな、弟を送っておけば山名に押領されることもないであろうというのもある」
「なるほど、確かにそうでございますね」
「その上で、治部との縁を深めるために、備前守(盛定)の娘には裳着が終わったら今川治部(義忠)に嫁いでもらいたいのだ。
無論裳着の際の後見役は治部にやってもらう」
姉がそれを聞いて頭を下げた。
「かしこまりました、不束者でございますがよろしくお願いいたします」
「また、千代丸は子供のいない伊勢駿河守(貞道)の養子となってもらい、いずれ元服後は本宗家と今川氏との申次を務めてほしい。
その際の後見人は私自ら行うつもりだ」
「かしこまりました、どうぞよろしくお願いいたします」
これは俺たちが荏原荘へ戻れるかどうかは微妙な感じか。
とは言え北条早雲が今川と上杉の間に入って調停を行った理由は伊勢駿河守の家に入ったことで名代として送られたというのもあったようだな。
今川が上総介であるなら正式な駿河守は誰かと思っていたんだが、その官位は伊勢氏が持っていたらしい。
もっともこの頃の国司にほぼ権限はないとは言え朝廷領の税に関しての権限は一応保持してるから比較的簡単に駿河にて土地が得られたというのもあるのだろうな。
何れにせよ動けるようになるのは元服できる5年後とかだろうけど。




