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どうやら姉の護衛のため一緒に上洛する事になりそうだ

 さてこの応仁の乱では悴者(かせもの)と言われるものが大量に合戦に参加することになる。


 一般的には足軽と言われてるようだが、有名なところでは東軍の骨皮道賢(ほねかわどうけん)、西軍だと御厨子某(みずしなにがし)などで、応仁の乱を境に主だった闘い方が武士の一族郎党による騎馬を用いた個人戦闘から、足軽を用いた集団戦闘に変化していく。


 悴者とは本来独立した生計をいとなめず、他人の家に奉公などして生計をたてた貧しい者をいうが、要するに主義主張を持たずに金をもらって生きるために戦うという者がどっと増えたのだ。


 この理由はおそらくこれまでの飢饉で逃散したものが京へ流れ込み、そこでの食料などの奪い合いのためにある程度徒党を組んだものが、そのまま銭で雇われるようになったのではないかと思う。


「これからはそういう事例が全国で増えていくんだよな」


 信長が行ったという兵農分離で信長は足軽に金を与えて常備兵としたと言うが、常備ではない合戦のときにだけ雇われる傭兵的な存在は応仁の乱の頃から既に存在していた。


 そして大した武装をしていない悴者が重要な存在になったのは、戦いが行われたのが京の市内であり、柵などを設置して薙刀などの長柄の武器で脚を狙えば簡単に足止めされることから馬による機動戦が難しい上に特定の建物、たとえば将軍がいる室町殿などを占拠することが重要であったことから歩兵の数そのものが重要になったからだろう。


 東軍・西軍が本格的に激突するのはまだちょっと先の5月26日のはずだが、その後すぐに京都は焦土と化した。


 両軍の足軽による度重なる放火によって上京の三万余軒が焼かれ、8月になると放火は下京にも及んで上京・下京・西京の区別なく家が焼かれ、寺社仏閣もそれは例外でなく運よく焼滅を免れたのは、法観寺、北野神社、平野神社、大将軍社、下鴨社、東福寺、三十三間堂、東寺などのごく僅かなものだった。


「まあそんなことより、細川備中守護が手勢を率いて上洛してしまったのが問題だよな」


 惣村が賊に襲われる状態は二つある。


 一つは飢饉で食料が不足しているとき、もう一つが守護代などが反乱鎮圧などに加わって手勢を率いて上京し、国元に兵がいないとき。


「今年は姉上が京へ上るのは難しそうですね」


 俺が母にそう言うと母は首を横に振った。


「いえ、そう言うわけにも行きません」


「そうなのですか?」


「お前は姉を守るために兵を率いて京へ上りなさい」


「母上は大丈夫なのですか」


「元服前のあなたに心配されるほどではありませんよ。

 備中守の貞藤(さだふじ)どのがこちらに向かってきていますから問題はありません」


 ああ、なるほど、北条早雲が今川のところに行った後でここを守っていたのはおそらく、政所執事伊勢貞親の弟である貞藤なのであろう、そしてそのせいで彼が父親だと思われていたのであろう。


「わかりました、姉上とともに出立の準備をいたします」


 まあ少人数での上洛というのも普通に行われているしなんとかなるか?


 途中で賊に対応できる程度の人数は率いていかなければならないけどな。


 姉と結婚する今川義忠は今年上洛するが、来年には細川勝元からの要請で東海道にある斯波義廉の分国を撹乱すべく駿河へ帰国しているからここで上洛しないと姉の結婚話そのものが流れてしまう可能性もあるしな。


 しかし今までに行った準備がすべてパーになった気がするのもなんか悔しいな。


 まあ、集団行動訓練を行ったり、集会場に竪穴式住居を作ったことで俺は慕われるようになったから、まったく意味がないとは思わないが。

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