今年は足場がためと人材の登用が最優先だな
さて、甲斐に引き続き遠江中央を制圧した後は代官を送ったりして、朝比奈と福島の力を削ぐことに腐心していたが、あっというまに文明16年(1484年)になった。
奥さんたちにも第二子、第三子が出来ていて男女の数はおおかた半々くらいだから子供たちが大きくなってくれれば心強い。
「千代丸も来年には元服だな」
「はい、父上。
北条の名に恥じぬよう努めてまいります」
「うむ、その意気やよしだ」
千代丸に何かがない限りは俺の後継者はこの子だが、なかなか聡明な子に育ってくれているので俺が隠居して温泉でのんびりできる日もそうは遠くないだろう……といいなぁ。
流石に後10年以上は無理だとは思うが。
あとは大道寺重時のところにも無事に男児が生まれているのでますますめでたい。
「お互い無事子供が出来てよかったよな」
俺がそう言うと大道寺重時も笑っていった。
「ああ、全くだ。
子は宝とはよく言ったものだよ」
甲斐では程度的にはそこまではひどくはないが昨年夏も冷害被害が出ていたようだが、その中でも特に育成に良さそうな穂を選別してそれは別途に植えることで冷害に強い稲を選別作り出していきたいと思っている。
もっとも日本が寒冷化してから久しいこともあっておそらく平安時代頃よりも全体的には寒さに強くなってきているのではないかと思うが。
伊豆や西相模もそうであるように、甲斐にせよ遠江にせよ全部が俺の直轄になるわけではないが、それぞれの国人などに対しての十分な押さえがきく程度には直轄地と動員兵力を持たねば国人達が好き勝手して身動きがとれないこともあるので今年のほとんどは地盤固めに専念することになるだろう。
もっとも人材が圧倒的に少ないのが致命的なので人材発掘もしないとならないが。
相模から海につながる甲州街道の整備や相模川や富士川などの水運のための船着き場の整備、治水、戦乱による乱妨取りなどで逃散してしまった耕作放棄された田畑なども整備しなければならない。
その後だが次の進出先は三河になるだろう。
三河からのちょっかいがあると西遠江がいつまで経っても静まらないからな。
三河に続いて斯波が留守にしている尾張まで押さえられれば国力的にも細川や大内、何より関東管領上杉家や古河公方足利家とそれらに従う国人達とも戦うのが楽になるだろう。
もっとも尾張まで進出し、遠江・三河・尾張を抑えることに成功したら、将軍から六角や斉藤征伐に兵を出すようにも言われるのは間違いない気もするが。
実際に旧西軍に属していた近江守護の六角行高の荘園や奉公衆の所領、寺社本所領押領が発覚して来年には征伐を受けているからな。




