12:部活、何するか決めた?
その日のバーベキューは、とっても楽しかった。
「私のおかげで1位になれたから」って、班のみんなが私のぶんのお肉や野菜を焼いてくれた。
久城くんは執事ごっこみたいなことして、「お代わりです、どうぞ、姫!」とか言って。
おかしくて、「なにそれ!」って、笑っちゃった。
それから時間が経って、いまは夜の八時半過ぎ。
九時までは自由時間なんだ。
何をしようか迷ったあと、私は散歩に出かけることにした。
芽衣ちゃんは部屋に残って、クラスの女子たちとカードゲームをしてる。
一階のロビーでは、八人の生徒がテレビを見てた。
ロビーの横の研修室では、真面目な生徒たちが先生をつかまえて、個別授業を受けてるみたい。
自由時間なのに勉強するって、すごいなあ……。
私は感心しながら、玄関の自動ドアを通って外に出た。
バーベキュー会場となった場所に行くと、多くの生徒たちが椅子に座ってお喋りしていた。
その中に、久城くんと雪村くんもいた。
二人は炭酸入りのぶどうの缶ジュースを飲んでいる。
すぐそこにある自動販売機で買ったんだろうな。
「こんばんは」
声をかけると、二人はこっちを見た。
「花崎さん。こんばんは。散歩?」
「うん。暇だから」
「じゃあ、オレらに混ざる?」
「いいの?」
「もちろん」
「花崎さん、こっちに座って。おれ、天馬の隣に行くから」
雪村くんは私に椅子をゆずって、久城くんの隣に座った。
「ありがとう」
「風呂入ったばっかり? 髪が濡れてる」
椅子に座ると、久城くんが質問してきた。
「本当だ。ドライヤーが甘かったかな。ちゃんと乾かす時間なくて」
私は指で自分の髪をいじった。
「制限時間があるからなー。オレらはテキトーでいいけど、女子は大変だろうな。ドライヤーだって、全員分あるわけじゃないだろうし」
久城くんは缶ジュースを飲んでから、ふと気づいたような顔で私を見た。
「オレらだけジュース飲んでるのも悪いよな。花崎さんも、なんか飲む? おごるよ。肉食わせてもらったし」
「いやいや、悪いよ。あ、じゃあさ。あとで払うから、買ってもらってもいい?」
「いいよ。行こ」
私は久城くんと一緒にジュースを買いに行った。
ジュースを持って戻ると、雪村くんが言った。
「おかえり」
おかえりって言われると、まるで、家に帰ってきたみたい。
「ただいま」
私は小さく笑いながら椅子に座って、缶ジュースを飲んだ。
う~んっ、キンキンに冷えたジュースと、シュワシュワ弾ける炭酸が、最高っ!
「――おいしいっ!」
「うんうん、わかる。風呂上がりのジュースってうまいよなー。家じゃなかなかできないから、今日は特別だ」
久城くんは笑ってジュースを飲んだ。
「そういえば、花崎さんは部活、何するか決めた? もうすぐ仮入部期間も終わりだろ」
「うん。迷ってたけど、決めた。私は部活じゃなくて、『勉強同好会』に入る!」
勉強同好会とは、勉強したい生徒たちが作った同好会。
放課後は自習室に集まって、宿題をしたり、わからないところを教え合ったりするの。
先輩からは、過去のテスト内容を教えてもらえたりするんだって。
「え……放課後も勉強する気なの……?」
勉強が嫌いな久城くんは、信じられない、という顔をしている。
「うん。オリエンテーションのときに、みんなから頼られたり、かしこいって言われて、嬉しかったから。入学式で新入生代表に選ばれたことも、嬉しかったし。中間テストでも、できれば1番目指したいなって思って」
「花崎さんは『学生のカガミ』だね」
雪村くんが言った。
「鏡?」
「ああ、天馬のことだから、人が映るほうの鏡を想像してるんだろうけど。そっちの鏡じゃなくて、こう」
雪村くんはポケットからスマホを取り出して、『鑑』という文字を打ちこんだ。
「つまり、おれが言いたかったのは、花崎さんは他の学生たちの手本となるような素晴らしい学生だね、ってこと」
「なるほどー。理玖ってやっぱ、頭いいよなー。塾に通ってたときも、落ちこぼれのオレに色々教えてくれたし。お前がいなきゃ多分、五桜落ちてたわ」
「天馬が落ちたら、おれも困ってたと思う。話す相手、いなくなるし」
キャッチボールみたいに、二人の会話はポンポン弾んでいく。
漫才みたいなやり取りを見て、私は思わず笑ってしまった。
いいな、こういう関係って。




