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無知で無力な村娘は、転生領主のもとで成り上がる  作者: 緋色の雨
第二章

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30/44

無知で無力な村娘は村を発展させたい 1

 『無知で無力な村娘は転生領主のもとで成り上がる』と『この異世界でも、ヤンデレに死ぬほど愛される』の書籍が明日発売で、早いところでは既に売っているようです。

 本屋で見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。

 あ、でも、異世界ヤンデレを見るときは、周囲に広がいないか気を付けてくださいね。緋色の読者さんで、女の子がいる前でうっかり一巻を開いちゃった人がいるそうなので……(南無

 

 各村への技術指導に向かう馬車の中。自分しか乗っていないはずなのに、荷物から可愛らしい声が聞こえた。

 どういうことだろうと、リアナは恐る恐る荷物に掛けられた布を取り払う。


「……ソ、ソフィアちゃん!?」

 布に梱包されていたのは、制服姿のソフィアだった。


「ふふっ、見つかっちゃったね」

 起き上がったソフィアが、イタズラっぽく舌を出した。

「み、見つかっちゃったねじゃないよ。どうしてソフィアちゃんが馬車に乗ってるの?」

「そ れ は、リアナお姉ちゃんの護衛だよ。頼まれたの」

「護衛? ソフィアちゃんが? 護衛?」

 自分よりも三つも年下の、しかも伯爵令嬢が護衛って……と混乱する。

 だけど、ソフィアがそんじょそこらの騎士よりも強いことを思い出して、そういうこともあり得るかもと思い直した。

 ――冷静に考えたら、そんなことはあるはずがないのだけれど。


「本当に大丈夫なの? イヤイヤとかじゃない?」

 最近まで農村で暮らしていたリアナですら、ミューレ学園の学生寮の暮らしが幸せすぎて、一ヶ月も暮らしの水準が低下するのは憂鬱なレベル。

 貴族令嬢のソフィアはなおさらだろうと心配する。


「大丈夫だよ。それとも、リアナお姉ちゃんが嫌だったりする?」

 ソフィアが不安そうな顔をして、リアナに身体を寄せてきた。


「あたしは、もちろん嬉しいよ。一人旅は寂しいなぁって思ってたし」

「わーいっ、リアナお姉ちゃんだーい好き!」

 顔を輝かせたソフィアが、両手を広げて抱きついてきた。いつもの二割増しな勢いに、リアナは受け止めきれずに押し倒されてしまった。


「あいたた……」

「わぁ……ごめんなさい、リアナお姉ちゃん。……大丈夫?」

「大丈夫、だけど……」

 リアナは倒れた自分の上に乗っているソフィアの胸に圧倒されて沈黙する。

 クレアリディルに、一週間ぶりだけど胸が大きくなってない、みたいなことを言われたときは、そんなに簡単に大きくなったりしないとか思っていたのだが……

 この子、明らかに大きくなってる気がするよ!? とリアナは戦慄する。


 き、気のせいかな? 気のせいだよね?

 気のせいだといって欲しい……と、リアナはソフィアの胸をむんずと掴んだ。


「ひゃうっ。リ、リアナお姉ちゃん!?」

「こ、この質量。……柔らかいのに、手のひらに収まらないなんて……更に一カップくらい大きくなってる!?」

「ふえぇ。そ、そんなにしちゃ……ひゃん。ダ、ダメだってば~~~っ。んぅ。――も、もう、リアナお姉ちゃん!」

 ソフィアが飛び退いて、胸を両腕で掻き抱く。ちょっぴり赤らんだ顔&涙目でリアナを睨む。ソフィアを見て我に返った。


「ちっ、違うよ? ただ、なんか少し見ないあいだに大きくなった気がするなぁって」

「じぃ……」

「ご、ごめんなさい」

 涙目の幼女に上目遣いで睨まれて、さすがに悪かったと反省する。


「で、でも、胸は確実に大きくなってるよね?」

 反省はしても、自分より年下の女の子の成長はスルーできなかったようだ。


「……胸が大きく? えっと……別にそんなことは……あ、そ、そうだね。言われてみると、少し制服の胸もとがキツい気がするよ」

「や、やっぱりぃ……」

 気のせいじゃなかったと理解して衝撃を受ける。

 衝撃を受けるくらいなら、聞かなければ良いと思うのだけれど……それが出来ないのが、リアナの複雑な乙女心らしい。


 そんなリアナに対して、ソフィアが無邪気に追い打ちを掛けてくる。

「うん、やっぱりちょっとキツいね」

 そんなセリフをのたまいつつ胸のリボンを外し、ブラウスのボタンを上から三つも外してしまった。幼女とは思えない豊かな胸の谷間と、可愛らしいブラがチラ見する。

 その圧倒的な戦力を前に、リアナの精神はズタズタだった。


「……って、ソフィアちゃん、いくらなんでもはしたないよっ」

「リアナお姉ちゃん、堅いこと言わないでよ。これから不便な場所で暮らすんだし、そんなことを言ってたら疲れちゃうよ?」

「それは……分かるけど……」


 ――というか、ソフィアちゃんってこういう性格だったんだ。

 人見知りが激しくて儚げな令嬢。

 それが実は間違いで、本性は敵を容赦なく打ち倒す獣の類いであることは知っていたけど、まさかこんな一面もあったとは――と、リアナは驚いた。


「ところでリアナお姉ちゃん、この馬車はどこに向かってるの?」

「……え? ソフィアちゃん、そんなことも知らなくてついてきたの?」

「えへへ、護衛をして欲しいとしか言われてなくて」

「へぇ、そうなんだ」


 クレア様にしては珍しい。それとも、伝言を頼まれた誰かが伝え忘れたのかな? なんてことをリアナは考えた。

 実際は、そのどちらでもないのだけれど。



 それから数日の馬車旅が続き、リアナ達はようやくダンケ村に到着した。

 リアナとソフィアは馬車から降りて、うーんと伸びをする。

 ソフィアは相変わらず胸もとのボタンを外したままだったけれど、この数日で馴れたリアナはなにも言わなかった。


「ようこそおいでくださいました。わしはダンケ村の村長です」

 おもむろに声が掛かる。振り向くと、初老の男が立っていた。

 リアナは慌てて佇まいをただす。


「初めまして。あたしはグランシェス家より皆さんの手助けをするためにやって来たリアナと申します。そしてこっちの女の子がソフィアちゃんです」

「もしや、この村に再び知識を授けてくださるのですか?」

「え? えぇ、そのつもりです」

「おぉ……感謝いたします。ぜひ、歓迎の宴を開かせてください」

「ええっと……?」

 リアナ達の訪問は急なモノで、とくに先触れを出したという話も聞いていない。なのに、話がこんなにスムーズで、しかも歓迎されているのはなぜだろうと首を捻る。


「その服は、ミューレ学園という施設の制服なのでしょう? 去年、その制服を着ている娘さんに、色々と助けてもらいましたから」

「あぁ……そっか」


 ミューレ学園の生徒は、外出時も制服を着用することになっている。リオンはこういったケースを予想して、制服の着用を義務づけていたのだ。

 つまり、先輩の築き上げた信頼のおかげでお仕事がスムーズに運ぶということ。その信頼を自分が壊してしまわないようにしなきゃと、リアナは気を引き締めた。


「――さっそくですが、村を少し見せていただいてもよろしいですか?」

「もちろん、案内させていただきます」



 リアナとソフィアは、村長の案内で村の畑へとやって来た。

 初夏であるこの時期は、夏野菜の植え付けも終わり、管理作業が始まっている。

 つまりは雑草の除去や、害虫の駆除が主な仕事である。


 ――といっても、場当たり的な対処ばかりで、予防策というのは一切講じていなかった。

 少なくとも、レジック村はそうだったのだけれど……ダンケ村の除草は完璧で、野菜を植えるために一直線に盛った土――(うね)と畦のあいだには、麦わらを敷いて遮光が為されている。

 それに、病害虫の対策も丁寧にされている。

 ミューレ学園で育てている畑と比べても、それほど遜色のないレベルだった。


「これじゃ、あたしが助言できるようなことなんてなにもないなぁ……」

 リアナはぽつりと呟く。


「それは誠ですか?」

「あ、その……すみません。出来る限りの協力はさせていただくつもりですが、あたしもまだまだ見習いの身ですので、前回来たという生徒と、知識はそんなに変わらないんです」

 力不足で済みませんと頭を下げる。


「い、いえいえ。決してそういう意味ではありません!」

「ええっと……?」

「これらの作業は話を聞いただけですので、ちゃんと出来ているか不安だったのです」

「あぁ。前の生徒は違う季節に来たんでしたね」

 多くの村を回るためには、一カ所に長く滞在する訳にはいかない。ほとんどの作業方法は、口頭でのみ伝えたのだ。


「それで、その……貴方からみて、問題なさそうですか?」

「ええ。除草もしっかりしていますし、病害虫の対策も大丈夫です。後は――」

「おや、村長さんじゃないか。おーい、どうかしたのか?」

 農作業をしていたおじさんがこちらに気付いて手を振ってくる。だが、その手が不意に止まって、遠目にも分かるほどに目を見開いた。


「おい、村長さんの隣にいるの、ミューレ学園の生徒さんじゃないか!?」

「え、ミューレ学園ですって」

「おぉ、本当じゃ、ミューレ学園の生徒じゃ」

「しかも二人もおりよる」

 近くで作業していたおじさんおばさんが一斉に駈け寄ってきた。リアナ達は為す術もなく、おじさんおばさんに囲まれてしまう。


「嬢ちゃん達、ミューレ学園の生徒か?」

「ええ、そうですけど」

「「「おおおおおおっ」」」


 一斉に歓声が上がった。

 しかも、中には「ありがたやありがたや」と拝み始める者達まで出る始末。一体、先輩はどれだけ頑張ったんだろうとリアナは圧倒される。


「それじゃ、嬢ちゃん。田んぼの方を見てくれないか?」

「ズルいぞ爺さん。嬢ちゃん、ぜひうちの菜園を見てくれ!」

「なら、そっちの嬢ちゃんはうちの畑を見ておくれよ!」

 おじさんおばさんに詰め寄られ、ソフィアが「ふえぇぇっ」と目を白黒させる。


「はいはい、みんなのところにちゃんと回るから押しちゃダメだよ! じゃないと、後回しにしちゃうからねっ」

 農村出身のリアナは、こういった雰囲気にも耐性がある。

 驚くソフィアを庇いつつ、みんなを上手く纏め上げた。

 

 

 書籍発売効果、なんでしょうか。なにやら日刊ランキングに返り咲いていました。

 面白かった、続きが気になるなど思っていただけましたら、下の評価をポチってくださると嬉しいです。作者の励みになるのでよろしくお願いいたします。


 また、この夏に新作を三作同時に更新中です。作者名から投稿リストに飛んで、気になるタイトルを見ていただけると嬉しいです。

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2018年 7月、8月の緋色の雨の新刊三冊です。
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