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無知で無力な村娘は、転生領主のもとで成り上がる  作者: 緋色の雨
第二章

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28/44

無知で無力な村娘の恩返し 3

 翌日はミューレ学園の定めた休日で、リアナは早朝から自主勉強をしていた。

 そんなさなか、ティナとソフィアが訪ねてくる。


「おはよう、二人とも」

「……おはようって、リアナ」

「それはいくらなんでも……だよ?」

 ティナとソフィアが呆れ眼を向けてくる。


「どうかしたの?」

「どうかしたの? じゃないよ。その恰好……いま何時だと思ってるの?」

「……ふえ?」


 ティナの視線をたどって下を向くと、自分の来ているキャミソールが目に入った。

 いわゆる下着に分類される薄手のキャミソールで、その下にはショーツだけ。寝るむ時の恰好そのままで勉強をしていたことを思いだす。


「こ、これはその――き、着替えてくるっ」

 バーンと扉を閉めて部屋の中に戻り、慌ててミューレ学園の制服に着替えた。



「お、お待たせ~」

 そっと扉を開けて廊下に出ると、ティナとソフィアが生暖かい目をして待っていた。

「急に来たのはこっちだから気にしなくて良いけど……もしかして疲れてるの? それだったら、もう少し後で起こしに来ようか?」

「え? あぁ……うぅん。寝てたんじゃなくて、朝から勉強をしてたんだよ」

 ティナ達に寝起きだと誤解されていると気付いて弁解する。


「そうなんだ? それじゃ、いまからなにか食べに行かない?」

「あ、もう朝ご飯の時間なんだね」

 この世界で時間を知ることが出来るモノは日時計しか存在していない。

 部屋にこもっていたリアナが時間を把握していないのはある意味では仕方ないのだけれど、ティナとソフィアは顔を見合わせてため息をついた。


「え、なにその反応」

「あのね、リアナお姉ちゃん。ソフィア達が誘いに来たのは午後のティータイムだよ」

「……え? えぇっ!?」

 慌てて部屋の窓から空を見上げる。

 太陽の位置が頂点を超え、沈み行く軌道に乗っていた。


「うわぁ……どうりでお腹が空いたと思ったよ」

「……リアナ、ご飯ももちろんだけど、水分を取らないと倒れちゃうよ?」

「うっ、そうだよね。ごめんね」

 ミシェルから借り受けた資料には、ちょうどその辺りのことも書き込まれていた。脱水症状の概念を勉強していて、脱水症状で倒れたら笑い話にもならないと反省する。


「ということで、どうかな?」

「えっと……お茶会のお誘い、だったっけ?」

 ティナに問い返す。

 お茶会という部分を強調したのは、お茶をしながらの勉強会と勘違いして安請け合いしたら、リオンが出席しているお茶会に連れて行かれた経験があるからだ。


「今日はそっちじゃなくて、街に行かないかなって」

「あのね、あのね。街に、アリスお姉ちゃんの作ったお店があるんだよ~」

 ティナの後を引き継いで、ソフィアが詰め寄ってくる。


「アリス先生のお店?」

「うんうん。アリスブランドの新しいお店が出来たんだよ~」

 アリスブランドとは、アリスティアが手がけたお店の総称だ。

 一番有名なのが洋服で、ミューレ学園の制服を始めとして、ミューレの街で売られている最新ファッションはすべてアリスブランドによるものだったりする。

 もちろん、アリスブランドは多岐にわたり、中には料理のお店もある。


「……良いけど、どんなお店なの? 高級なお店だと、あたしはいけないよ?」

「……お小遣い、もう使っちゃったの?」

 ソフィアが小首をかしげる。


「使ったというか、両親に渡しちゃった」

 リアナはあっけらかんと言い放つ。

 生徒には生活費が支給されているのだが、学生寮で食事をする分にはお金が掛からない。両親を助けるつもりで、生活費の大半を仕送りにしてしまったのだ。


「そうなんだ? ん~ソフィアが出してあげても良いけど……」

「それはダメ」

 実家のために使ったのはリアナの都合。それなのに甘えることなんて出来ないと拒絶する。


「……そう言うと思ったよぅ。でも……あ、そうだ、良いこと考えちゃった」

 ソフィアがイタズラっぽい笑みを浮かべる。その姿は愛らしい幼女そのものだが……本性を知っているリアナは嫌な予感を覚えた。



 その後、ろくな説明もされないうちに街のお店に連れて行かれたのだが――

「お帰りなさい、お嬢様方っ」

 リアナ達を出迎えたのは、ミニスカートのメイド服を纏う美少女だった。

 というか――


「ア、アリス先生、なにをやっているんですか? というか、お帰りなさい? お嬢様?」

 リアナは呆気にとられてしまう。

 ミニスカメイドはアリスティアだったのだ。


「ここは庶民でも貴族の気分を味わえるお店なんだよ。だから、お客さんじゃなくて、ご主人様、お嬢様。そして、いらっしゃいじゃなくて、お帰りなさい、なの」

「なるほど~」

 貴族の生活に憧れる平民の気持ちをよく理解している。さすがアリス先生だよ! とリアナは感心する。

 アリスティアにしてみれば、ただのメイドカフェ――いや、足湯があるので足湯メイドカフェなのだが。この世界で画期的なことに変わりないだろう。


「それにしても……」

 と、リアナはアリスの胸もとを見た。メイド服はコルセット風になっていて、アリスティアの豊かな胸が強調されている。

 やっぱり、ミューレ学園の関係者って胸が大きい人が多いよね……と、リアナはティナやソフィアにも視線を向けて嘆息した。


「ところで、アリスお姉ちゃん、お願いがあるんだけど」

 ソフィアがおもむろにアリスティアの袖を掴む。

「うん? どうしたの? このお店が欲しいのならあげるよ?」

 むちゃくちゃである。


「うぅん、お店はいらないけど、食事代をただにして欲しいの」

 ソフィアのお願いも無茶苦茶だった――が、アリスティアの申し出の方が凄すぎて、なんだか控えめなお願いのように聞こえた。


「……いやいやいや、ソフィアちゃん。そんな無茶……かどうか分からないけど、アリス先生を困らせるようなこと言っちゃダメだよ」

「リアナの言うとおりだよ。ただにして欲しいなんて言うまでもなく、ソフィアちゃんからお金なんて取るはずないじゃない」

「そっちなんですね……。いえ、なんとなく予想してましたけど」

 以前にも、なんか似たようなことがあった気がするなぁ……とため息をつく。わりと周囲の状況に順応しつつあるリアナであった。


「……というか、ソフィアちゃん。あたしのためにお願いしてくれたんだと思うけど、他のクラスメイトはちゃんと払ってるんだよね?」

 問いかけて、ソフィアの手を掴む。

 思い浮かべるのは、ソフィアの友達だからという理由で特別扱いされたくないという意志。

 リアナがソフィアと友達になったのは、ソフィアのことが好きだから。決して、ソフィアの地位が目当てじゃない――と、繋いだ手からリアナの想いを読み取ったのだろう。


「えへへ。リアナお姉ちゃん、だーい好きっ」

 ソフィアが胸に飛び込んできた。リアナはリアナで、ソフィアちゃんは可愛いなぁ……と、そのふわふわの頭を撫でる。


「つまり……リアナがお金を持ってないってこと?」

 アリスティアが問いかけてきた。


「あ、はい。その……仕送りに使ってしまって」

「ふむふむ。それで、ソフィアちゃんがおごってあげるとか言い出したってことだね」

「……分かるんですか?」

 もしかして、アリス先生もソフィアちゃんと同じような恩恵を? と、リアナは思う。


「ただの勘よ。伊達に長く生きてないしね」

「長くって……アリス先生、何歳くらいなんですか?」

 見た目はリアナより少し年上。だけど、アリスティアはエルフ。

 もしかしたら、見た目よりずっと長く生きているのかも知れない。いや、アリスブランドを始めとした、様々な知識があるのだから、当然長生きをしているのだろうと考える。


「私? ん~そうだね。合わせて三十年と少しかな」

「……合わせて?」

「うぅん、こっちの話だよ。それより、試食をするというのはどうかな?」

「……え、試食、ですか?」

「そう、試食。新しいメニューを開発してるから、それの試食をしてくれないかな? もちろん、試食だから、料金は取らないよ」

「……アリス先生。ありがとうございます!」

 アリスティアの申し出を快く受け入れた。



 そうして案内されたのは、店の奥にあるVIPルームだった。

「……というか、このお店も足湯があるんだね」

「ここは足湯メイドカフェだからね」

 靴を脱いでいたティナが答える――が、リアナが言いたかったのは、いくら足だけとは言え、平民がお風呂に入るなんて普通じゃないと言うこと。

 足湯メイドカフェだから、足湯に入れるという考えは、完全に毒されていると思った。


「足湯の温泉は、アリスお姉ちゃんが掘ったんだよ」

「……もう、なにがなんだか」

 この辺りに火山はなくて、アリスティアが精霊魔術で掘ったのは非火山性の温泉。地下千メートルほどぶち抜いた、地熱による温泉なのだが……リアナは理解できない。

 ただ、普通では考えられないほど非常識なのことだけは理解していた。


 それはともかく、リアナはスカートの中に手を差し入れて、ガーダーベルトの留め金を外し、するすると、ニーハイソックスを脱ぎ捨てる。

 そうして、洗い場で足を清めてから足湯に浸かった。


 始めて足湯メイドカフェに来る者はわりと戸惑うのだが、学生寮の足湯に毎日使っているリアナ達は馴れたものである。


「おまたせー。新しいのをいくつか作ってみたよ」

「作ったって……早すぎじゃないですか?」

 精霊魔術で各工程をすっ飛ばしているなんて知らないリアナは、あまりの早さに驚く。

 だけど、現れたアリスティアの持つトレイの上には、いくつものケーキが乗っていた。


「ふわぁ……なんだか、それも美味しそうですね」

「ありがと。自信作だから食べてみて。これがブルーベリーのタルトで、こっちはブッシュドノエルのモンブラン。更にはラング・ド・シャだよ」

「ふえぇぇ……」

 名前はどれも聞いたこともないものばかり。なので、リアナが驚いたのは、その見た目の美しさと、いかにも美味しそうな甘い香りだ。


「これ、本当に食べてみて良いんですか?」

「もちろん、みんなで食べ比べをしてみてね」

「それじゃ……あたしはこれから食べてみようかな」

 リアナ、ソフィア、ティナが、それぞれ自分のお皿に取り分ける。

 リアナが最初に選んだのは、ブッシュドノエルのモンブラン。

 もちろん、その名前の由来をリアナは知らないが、なんだか丸太を小さくしたような、芸術性のある見た目に惹かれたのだ。


「いただきます……んっ、美味しいです!」

 両手で頬を押さえる。こんなに美味しいお菓子を食べるのは――ミューレ学園でわりと毎日だが、始めて食べるモンブランの風味に感動する。


「リアナ、リアナ、このラング・ド・シャも凄く美味しいよっ」

「どれどれ?」

 ティナがクッキーらしきモノを差し出してきたので、それをパクリと咥える。

 ざらりとした表面に、噛むとすぐに溶けていくような柔らかな食感。リアナの知っているクッキーとはまるで違うと驚く。


「ソフィアが食べてるタルトも美味しいよ!」

 今度は、ソフィアがあーんと、フォークに刺したタルトを差し出してくる。

「ありがとう……ん、こっちも美味しいね!」

 ブルーベリーの酸味が、甘さを引き立てつつもさっぱりとした味わいを作り出している。

 それからしばらく、リアナ達はお菓子の食べ比べを進めた。


「それで、どれが一番美味しかった?」

 横でニコニコと見守っていたアリスティアが口を開いた。


「どれも凄く美味しくて……三つとも美味しいとしか言えないです」

「うんうん。ソフィアもそう思う!」

「私も、これならいくらでも食べられそうです」

 リアナ達は口々にそう言ったのだが……アリスは苦笑いを浮かべる。


「ありがとう。でも、三つのうち、採用するのは一つだけにするつもりなんだよね」

「……こんなに美味しいのに、ですか?」

「品目を増やすと在庫管理が大変だし、手間も増えちゃうからねぇ」

「あぁ……そうですよね。なら、期間限定にしたらどうですか?」

 リアナは即座にアリスティアの言葉の意味を理解して、その対処法を口にする。その瞬間、アリスティアが大きく目を見開いた。


「……リアナ、その発想は誰から教えてもらったの?」

「え? いま、ふと思いついただけですけど……?」


 学生寮の食堂のように、毎日の来客数がある程度は固定でも食材を管理するのは大変だ。

 ましてや街の飲食店ともなれば、その管理の難易度は一気に跳ね上がる。そこに品目――つまりは必要な材料を増やせば、どうなるかは火を見るよりも明らか。

 それに、同じ料理の量を増やしてもそれほど手間は変わらないが、品目を増やせば増やしただけ手間が増えていく。


 それらを踏まえた結果、期間限定でローテーションすれば良いという発想が浮かんだ。

 アリスティアにとっては目から鱗程度だが、この世界にとっては画期的な発想。それをリアナがあっさりと思いついたことにアリスティアは戦慄した。


「……驚いたよ。さすが、クレアが褒めるだけのことはあるね」

「クレア様が……?」

「うん。胸以外は将来有望だって言ってたよ」

「――うぐっ」

 完全なる不意打ちに胸を押さえて倒れる。


「大丈夫だよ、リアナお姉ちゃん。きっとこれから大きくなるよっ」

 ソフィアに励まされるが――

「あたしより大きいソフィアちゃんに言われても……」

 リアナより三つも年下で小柄なのに、ブラのカップは二つ上。もし同い年なら、一体どうなっていたのか。リアナは思わずため息をついた。


「き、気にすることないよ。胸が大きいと……えっと、そう。足下がちゃんと見えないし、肩だってこるんだよ?」

 フォローのようで追撃を仕掛けてきたのはティナだ。あたしは足下がしっかり見えるし、肩こりなんてしたことないもん! と、リアナは泣きそうになる。


「あはは……気にしてたんだ。ごめんね、リアナ」

 アリスティアが頬を掻きながら謝罪をする。

 すっかり拗ねてしまったリアナは、ぷくぅと頬を膨らませた。


「胸は大きければ良いってモノじゃないから、気にする必要ないよ。な~んて、私も小さかった頃は、リアナと同じように思ってたから、その気持ちはよく分かるけどね」

「アリス先生も、昔は小さかったんですか?」

「うん。あたしもいまのリアナみたいに悩んでたことがあるよ」

「そう、なんですか。ちなみに、それっていつごろの話ですか……?」

 悩んでいたのがリアナと同じくらいの歳なら、リアナにも十分な可能性があると言うことになると期待する。

 果たして――


「えっと……生まれ変わる前の話だよ?」

「うわんっ、イジメだ、イジメですよね!?」

「えぇ、そんなことは言ってないよ」

「だって、生まれ変わらないと絶望的って意味ですよね? 良いんです。あたしはもう、一生このサイズから大きくならない運命なんです」

「あぁ……そう取っちゃったか。ええっと……ほら、ケーキもっとあげるから。いっぱい食べたら、大きくなるかも知れないよ?」

 アリスティアがケーキを切り分けてくれる――が、

「大きくって、どこが、ですか?」

「えっと、その、胸……とか、お腹とか」

「もうそれでも良いですっ!」

 リアナはやけ食いに走った。



「はぁ……もうお腹いっぱいです」

 最初の三品を食べ尽くした後。

 アリスティアが追加で持ってきた新作の試食を続けたリアナは、その数が十数個に至った時点でスカートがきつくなってホックを外した。


「あはは、凄い食べっぷりだったね」

「なんか、ごめんなさい。たくさんごちそうになってしまって」

 冷静になったリアナは、アリスティアに謝罪をする。


「それは気にしなくていよ。お客さんと同じ視点の女の子から、忌憚のない感想をもらえるなんて凄く貴重だしね」

「はぁ……」

 それはつまり、他の子達は遠慮して本音の感想を言わないと言うこと。感謝はされているみたいだけど、それで良いんだろうかとリアナはちょっと悩んだ。


「それじゃ、試食会はお終いだけど、お腹いっぱいだろうし、休憩してていいよ」

 アリスティアは優しい声を残して、部屋から退出していった。

 それを見届け、リアナは途中で出されたティーカップに口をつけた。さっぱりとした香りを楽しみつつ、紅茶をこくりと飲む。


「はぁ……紅茶も凄く美味しいよね」

「アリスお姉ちゃんは、紅茶の淹れ方もソフィアやメイド達に教えてるからね」

 ソフィアがまるで自分のことのように誇らしく話す。それを聞いたリアナは、アリスブランドの洋服だけでも凄まじいのに、一体どれだけ多才なんだろうと呆れる。


「そう言えば、私のお姉ちゃんも、クレア様に言われて、アリス先生に紅茶の淹れ方を学んだって言ってたなぁ」

「そう言えば、ティナのお姉さんはグランシェス家のメイドをしてるんだっけ?」

 紹介してもらうといって、それっきりだったことをリアナは思い出した。


「ティナお姉ちゃんのお姉ちゃんは、ミシェル先生だよ」

 ソフィアの言葉に、リアナは驚いて――一瞬遅れて「あぁ~」と納得した。

 ティナとミシェルはこの辺りでは珍しい、黒い髪と黒い瞳の持ち主で、言われてみると二人の容姿は良く似ていたからだ。


「そっか~ミシェル先生の妹なんだ。ちょうど昨日、補習でお世話になったよ」

「お姉ちゃん、わりと厳しいでしょ?」

「え~そうかなぁ? わりと優しい気がするけど」

 昨日のやりとりを思い出して呟く。


「じゃあ、厳しいのは私に対してだけかぁ~」

 ティナが珍しく唇を尖らせる。わりと珍しい光景だ。

 だけど怒っていると言うよりは、ちょっと拗ねている感じ。なんとなく、二人は仲が良さそうだなぁとリアナは思った。

 そうしてティナの顔を見ていると、その表情が不意に曇った。


「それで……その、お姉ちゃんから聞いたんだけど、リアナはこのまま授業を受けるか、各村の指導に行くか迷ってるって本当……?」

「あぁ……うん。聞いたんだね」

「リアナは、どうするつもり……なの?」

 各村の指導に行くかどうか。

 それは言い換えれば、農業関係だけに絞って今年で学園を卒業するか、はたまた学園に残って、来年も勉強を続けるかどうかということ。


「一応、こうしたいって思いはあるんだけど、覚悟が決まらない感じかな」

「そう、なんだ?」

「どっちも、あたしのしたいこと、だからね」

 各村を回って欲しいと望むリオンと、もっと知識を掘り下げて欲しいと願うクレア。

 どちらもリアナにとっては大切な恩人だから、二人に恩返しをしたい。けれど、どちらかを選べば、もう片方を諦めることになる。


「そっか……私は、リアナがどっちを選んでも応援するよ」

「ソフィアもソフィアもっ」

 二人の言葉に驚く。

 来年も学園に通うためには成績優秀者にならなくちゃいけなくて、リアナはそのために勉強を頑張る際、二人に凄くお世話になった。

 だから、学園に残るように言われるかもと、少しだけ思っていたのだ。


「ありがとう、二人とも。あたし、どうするか決めたよ」

 

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