無知で無力な村娘は妹を救いたい 2
晴れやかな日の昼下がり。踏み固められた道を進む馬車が一台。護衛の騎士などが同行する馬車の中で、リアナはただひたすらに恐縮していた。
向かっているのは、リアナ生まれ育ったレジック村で、父であるカイルも同席している。
ここまではまだ分かる。学園を止めるかどうかは保留で、まずは妹に会いに行くべきと配慮してくれたリオンに感謝すらしている。だけど……だけど、だ。
リアナの斜め向かいにはミリィ。そして、正面には――
「あの、どうしてリオン様が同席しているんですか?」
リアナは聞くべきか否か迷っていた胸の内を言葉にした。
「なんだ、俺がいたら迷惑なのか?」
「いえ、まさか! でも、その……リオン様はグランシェス伯爵家の当主ですし、どうして同行してくれているのかなって思いまして」
「ただしくは当主代理だな。それに補佐にはクレアねぇがいるからな。多少の融通は利くんだ。でもって、同行しているのは、病弱な妹を心配するリアナに共感したからだ」
「……共感? ソフィアちゃんのこと、ですか?」
リオンの兄弟は、姉であるクレアリディルと、死んだ兄だけと聞いている。だから、妹と聞いて、ソフィアという結論に至ったのだけれど――リオンは首を横に振った。
「もちろん、ソフィアも可愛い妹だけど、病弱じゃないだろ?」
「それは……そうですね」
黙っていれば儚げに見えるけれど、その正体は獣の類いである――なんてソフィアが聞いたら頬を膨らませそうなことを考える。
もっとも、あの戦闘力を考えれば、それでも控えめな表現なのだけど。
「でも、それじゃどうして共感、なんですか?」
「俺は妹や親を病気で失ったんだ。だから、リアナの妹が倒れたって聞いて、いてもたってもいられなくてついてきたって訳だ」
「……え? でも、リオン様の家族は……」
お手つきになったメイドの行方は聞いたことがないので、そちらが病死したという可能性はある。けれど、父親である当主は殺され、妹は最初からいないはずだ。
リアナには話が矛盾しているように思えるのだが、愁いを帯びたリオンの瞳は嘘をついているように見えない。なにか、自分には知り得ない壮絶な過去があったのかもしれないとリアナは思った。そして、そんなリアナの予想を肯定するかのように、横で話を聞いていたミリィが憂い顔で「リオン様……」と呟いた。
「そんな顔をするな。遠い……遠い世界の話だ。今はミリィ達がいるから……そうだろ?」
リオンが重い空気を振り払うように言い放った――のは良いのだが、その手はミリィの膝の上に置かれた手を握りしめていた。
「リオン様……」
「こんなときくらい、リオンって呼んでくれ」
「……そうね、リオン。子供の頃に約束したとおり、私はいつだってあなたの味方で、これからもずっと側にいるわ」
「……ありがとう」
ゴトゴトと揺れる馬車の中。リオンとミリィが静かに見つめ合う。
リ、リオン様、どうしてそこで、ミリィ先生と良い雰囲気で、あまつさえ手を握っちゃってるんですか!? アリスさん達に怒られますよ!? ――と、はからずも向かいの席で見せ付けられたリアナはそんな心配をする。
なお、いまは亡き当主のお手つきになったというメイド。リオンの母親は非常に若作りで、いまも意外と――というか、驚くほど近くにいたりするのだが、リアナは気付かない。
なんとなく面白くなくて唇を尖らせた。
――それから、馬車で揺られること二日目。
午後になって、リアナ達一行はレジック村へと到着した。そうして村の中程で馬車が止まると、リアナの母親であるルーシェが飛んできた。
「あなた、リアナは、リアナは無事だったの!?」
ミリィ、そしてリオンに続いて降りたカイルに詰め寄る。
「大丈夫だから落ち着け」
「大丈夫って、無事と言うこと? リアナは無事だったの!?」
興奮したルーシェは、カイルに詰め寄る。
「無事だから落ち着け。リオン様が同行しているんだ!」
「そうだよ、お母さん。あたしは無事だから落ち着いて」
「その声はリアナ――の、お姉さん?」
リアナの声を聞いて即座に反応。ミューレ学園の制服を身に着けるリアナを見たルーシェは首を傾げた。その反応を見て、リアナは思わず顔を覆う。
「まったく気付かなかったお父さんよりはマシかもしれないけど……あたしにお姉ちゃんはいないでしょ? どうしてそんな反応になるのよ」
「えっと……なら、本当にリアナなの?」
「そうだよ、お母さん。ただい――うわっ」
みなまで言うより早く、ルーシェにぎゅうううっと抱きしめられてしまった。リオン様が見てるのに――とか、アリアの様子は――とか、色々と思うことはあるのだが……
「……ただいま、お母さん」
熱いモノがこみ上げ、リアナは母親の身体をぎゅっと抱き返した。
そうして十秒か数十秒か。母との再会の抱擁を終えたリアナは身を離し「ところでお母さん、アリアは部屋にいる?」と真剣な顔で尋ねた。
「……ええ。アリアなら部屋で寝ているわ」
「ありがとうお母さん。……リオン様、さっそくアリアのお見舞に行ってきますね」
「あっと……良かったら俺もついて行って良いか?」
「もちろんです。それじゃ、こっちです」
リオンの手を掴んで部屋に案内しようとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさい。その人は一体……」
「急いでるから、詳しくはお父さんに聞いて!」
カイルに後のことを丸投げして、リアナはリオンの手を引っ張っていった。
そしてアリアの部屋の前――といっても、お屋敷のように明確な扉がある訳ではないので、文字通り部屋の一歩手前で足を止める。
「ここがアリアの寝ている部屋です」
「そうか。ところで……」
リオンがなにか言いたげに視線を下ろす。その視線をたどると、リオンの手をぎゅっと握りしめている自分の手が視界に映った。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて手を放して真っ赤になる。
そして「いまのは違うんです! ただ、案内するのに掴んだだけで――って、その、嫌って訳じゃなくて……って、あたしなにを言ってるんだろ!」と、慌てふためく。
「……その声は、お姉ちゃん……っ?」
部屋の中から聞こえる弱々しい声を聞いて我を取り戻した。
「――アリア。いま入ってもいい?」
「やっぱりお姉ちゃんだ。……うん、入っていいよ」
アリアの許可を得て、リアナとリオンは部屋へと足を踏み入れた。シンプルな部屋の片隅。質素なベッドに青い髪の小さな女の子――アリアが横たわっていた。
「リアナお姉ちゃん……の、お姉さん?」
「……あなたまでそんなことを。アリアのお姉ちゃんはあたししかいないでしょ?」
少し外見が変わったからって、その反応はないと思うんだけどなぁ……と、自分がどれだけ綺麗になったか、まるで自覚のないリアナであった。
「じゃあ……ホントのホントにお姉ちゃん?」
「ホントのホントにお姉ちゃんだよ」
「どうしてそんなに綺麗になってるの? そのドレスはなに? なにがあったの?」
「あたしはいつもと変わらないし、これは学校の制服。それより、アリアは大丈夫なの?」
リアナは問いかけつつ、アリアの様子をうかがった。数ヶ月ぶりに会うアリアは、ずいぶんとやつれたように見える。恐らくは、あまり食事をしていないのだろう。ベッドの横にある小さなテーブルに置かれた小皿には、少しかじっただけのパンが残っていた。
「もぅ……ダメじゃない。ちゃんと食べないと元気が出ないよ?」
「ごめんなさい。でも、私、食欲がなくて。それに、パンは苦手だし」
「そんなことを言ってるから、いつまで経っても元気にならないんだよ?」
リアナはお姉さん口調で言い聞かせ、パンを掴んでベッドサイドに腰掛けた。そうして上半身を捻る形でアリアに視線を向け、千切ったパンを口元へと運んだ。
「ほら、あーんっ」
「……あーん……もぐっ」
小さくあけた口にパンの欠片を入れると、アリアはもぐもぐと咀嚼を始めた。その姿が小動物のように可愛くて、リアナは目を細めて微笑んだ。
「……コクン。ねぇ、お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「後ろにいる、格好いい男の人は、お姉ちゃんの彼氏?」
「ななっなななっなぁ――んてこと、言うのよっ!?」
「……違うの? 一緒に帰ってきたから、そうなのかなって思ったんだけど」
「ち、違うわよ、リオン様があたしのことなんて相手にするはずないでしょ!」
「それって相手してもらいたいって思ってるってこと?」
「ちっ、ちちっ違うって!」
「……ふぅん」
アリアがなにか言いたげに、リアナの背後に視線を向ける。そこにいるはずのリオンがどんな表情を浮かべているか、リアナは恐くて振り返ることが出来なかった。
そうして、その身をこわばらせていると、アリアがくしゅんと可愛らしいくしゃみをした。
「……アリア、大丈夫?」
「うん。ちょっと、鼻がむずむずするだけだよ」
アリアはそう言いながら、腕をしきりに擦っている。気になったリアナが腕を掴んで袖をまくり上げると、腕に発疹が出来ていた。
「アリア、これって……」
「あぁ……うん、最近、急に出てきたりするの。でも、時間が過ぎたら消えるから平気だよ」
「平気って……こんなに発疹が出てるのに」
おっかなびっくり発疹の側に触れると、アリアの腕は明らかに熱を帯びていた。もしかしたら、危険な伝染病かもしれないと不安になる。
もちろん、アリアを怖がるなんてありえないけれど、万が一にでもリオンにうつったら大変だ。そう思ったリアナは、リオンに外に出るように伝えようと振り返ったのだが――
リオンはすぐ後ろ、思ったより近くでアリアの様子をうかがっていた。
「……リオン様?」
「えっと……アリアちゃんだっけ?」
「うん、そうだよ、お姉ちゃんの彼氏さん」
「――ちょっと、アリアっ!?」
リアナは慌てるが、リオンが話をさせて欲しいと言ったニュアンスで遮ってくる。なのでリアナは真っ赤になりながらも、沈黙することにした。
「聞かせて欲しいんだけど、その発疹はどのくらいの頃から出てるんだ?」
「えっと……前にもときどき出てたりしたけど、酷くなってきたのは最近かな」
「最近って言うと?」
「んっとぉ~、お姉ちゃんが家を出る少し前から、だよ」
「そっか。……なら、少し発疹を見せてもらってもいいか?」
「えっと……うん」
アリアがしおらしく頷く。それを見たリオンはベッドの手前に膝をついて、アリアの手を掴んで、その発疹を観察し始めた。
リオンは領主代理であって、薬師ではない。けれど、その真剣な眼差しを前に、リアナは沈黙を守ってその様子をうかがったのだが――
「ねぇねぇ、リオンさん。お姉ちゃんとはもう付き合ってるの?」
「いや、付き合ってないぞ」
よりにもよって、触診されているアリアが爆弾を投下した。その事実にリアナは慌て――そして、付き合っていないとリオンが即答したことで胸を押さえた。
「そうなんだ。じゃあ……キスもまだなの?」
「~~~っ」
横で見守っているリアナは、もはや声にならない悲鳴を上げる。
そして――
「いいかげんにしなさい、アリア。リオン様は――」
我慢が限界に達したリアナが、グランシェス伯爵家のと口にしようとしたのだけれど、リオンに遮られてしまった。そして「余計な心労はかけない方が良い」と囁かれて言葉に詰まる。
「残念だけど、俺とリアナはそういう関係じゃないぞ」
――残念っ!?
リアナがその身を震わせるがそれはともかく。
「……そうなんだ。ようやくお姉ちゃんにも春が来たのかなって思ったのに」
「リアナはどんな相手でも一瞬で惹きつけるくらい笑顔が可愛いからな。心配しなくても、結婚相手に困ることはないと思うぞ」
「~~~~~~っ」
触診を受けているアリアよりも、リアナの方が大変なことになっているが……触診に集中しているリオンは気付かない。ちらちらとリアナを見ているアリアは……にやついているが。
「それより、発疹とかは決まった時間とかだったりするのか?」
「うぅん。朝起きて少ししてからとか、寝る前とかが多いかも。それより、リオンさんはお姉ちゃんとどこで知り合ったの?」
そうして、リオンが触診や問診をしつつ、アリアがあれこれ質問を投げかける。そんなリアナの精神を削るような時間が続き――ほどなく、リオンは立ち上がった。
「……リオン様?」
「カイルさん達と話してくる。リアナはアリアとお話をしてると良い」
「えっと……はい」
良く分からないけれど、リオン様がそう言うのなら――と、リオンを見送った。そうして視線を戻すと……満面の笑みを浮かべたアリアがいた。
そんなアリアを前に、リアナはため息をついた。
「……アリア、あなた、無理してるでしょ?」
「どうしてそう思うの?」
「いくらなんでもはしゃぎすぎよ。本当は辛いの、隠してるでしょ?」
「……さすがお姉ちゃんだね」
「あたしが何年、あなたのお姉ちゃんをしてると思ってるのよ」
「えっと……二十年くらい?」
翡翠のような瞳でリアナを見上げて来る。アリアに対してリアナはため息をついた。
「あなた何歳なのよ。もうすぐ九年、でしょ」
「そうだったね。そしてお姉ちゃんはそろそろ結婚する時期だよね」
「……そうだね」
この世界の子供は成長が早くて十二歳で結婚が出来るようになる。
なので、今年で十四歳のリアナは、既に結婚していてもおかしくはないが……相手がいない。なんてことを考えたリアナの脳裏にリオンの姿が浮かんだ。
「いやいやいや、それはないから」
リアナは誰にともなく呟いて頭を振る。
「……リアナお姉ちゃん、いま、リオンさんのことを思い浮かべてたでしょ?」
「なぁっ!?」
「隠さない、隠さない。素敵だよね、リオンさん。リアナお姉ちゃんはがさつだから、相手が見つかるか心配してたんだけど、あんな人がいるのなら安心だよ」
「だから、ね?」
もういっそ、リオン様の身分をバラしてやろうか――なんてリアナは考えた。
けれど――
「……私も、あんな風に格好いい人と、恋をして、みたかったなぁ……」
寂しげに呟いたアリアを見て、胸が張り裂けそうになった。
「アリア、あなた……」
「そんな顔をしないで、お姉ちゃん。私がもうあんまり長くないって、知ってるんでしょ?」
「それは……でも、こうして元気に話してるじゃない!」
思わず声を荒げてしまう。
「お姉ちゃん、さっき言ってたじゃない、私が無理してるの、分かってるって」
「……辛いの?」
「うん。本当は気持ち悪くて吐きそう。それに、気を失ったことも一度や二度じゃないの」
「そん、なに……」
思っていたよりもずっと症状が重くて泣きそうになる。
リアナがレジック村の農業を改革しようとしたのは妹を護りたかったからだし、食糧支援と引き換えに子供を差し出せと言われて名乗りを上げたのも妹を護りたかったから。
もちろん、ミューレ学園で必死に勉強を頑張ったのも妹を護りたかったから。
妹が大切だから、リアナはここまで頑張ってきたのだ。
それなのに、その妹がもう長くないという。妹はなんにも悪いことなんてしてないのに、どうして世界はこんなに理不尽なのよ――と、リアナはぽろぽろと涙を流した。
「泣かないで。笑ってよ、お姉ちゃん」
「……やだ、無理よ。妹が、アリアが苦しんでるのに、笑うなんて出来ないよ」
「そんなこと言わないで。リアナお姉ちゃんがいままでどうしてたか教えて?」
「いままでって……私が家を出てからのこと?」
「うん。お姉ちゃんがちゃんと元気にやってるか心配なの。だから……お願い」
「……もう、仕方ないわね」
悲しくて泣き崩れてしまいそうになる。だけど歯を食いしばって涙を拭い、リアナは妹のために、グランシェス伯爵家での日々を語って聞かせた。
どれくらいそうしていただろう? リアナが学園での生活を語って聞かせ終わったとき、窓から差し込む日の光りはすっかりと暗くなっていた。
「……凄いね、そんな世界があるんだね」
「そうだね。本当に凄かったよ」
「お姉ちゃんは、そこでお勉強を頑張ってるんだね」
「……そうだね。頑張ってたよ」
さり気ない過去形。
それは、リアナが学園を止めて、アリアの側にいようと決断していたからだけど……アリアはそんなリアナの心を見透かしているかのように「ダメだよ」と呟いた。
「……リアナお姉ちゃんは、農業を改革するために頑張ってたんでしょ?」
「そうだよ。だけどそれは、あなたを護りたかったから」
「私だけじゃないでしょ?」
「……え?」
「私だけじゃない。お父さんやお母さんや村のみんな。そして……きっとリオンさん。みんなを幸せにするために、リアナお姉ちゃんは頑張ってるんでしょ?」
「それ、は……」
小さなアリアから紡がれた言葉に、リアナの心は激しく揺さぶられる。
リアナがいままで必死だったのは妹を護りたかったから。だけど、両親や村のみんな。恩人であるリオン達のために頑張りたいという思いもちゃんとある。
それをいままで意識しなかったのは、目的や手段が一致していたから。妹のために頑張ることが、両親や村のみんな、リオン達への恩返しになっていたからだ。
だけど、いまは手段が分かれてしまっている。そのどうしようもなく悲しい現実に、アリアの言葉で気付かされた。
「ね、分かったでしょ、お姉ちゃん」
「それは……でも、それでも、あたしはあなたのために……っ」
その言葉を最後まで口にすることは出来なかった。アリアが寂しげに微笑んだからだ。
「……ねぇ、お姉ちゃん。私は本当は、お姉ちゃんみたいになりたかったの」
「あたし、みたいに?」
「うん。お母さんと一緒に編み物をしたり、お父さんと一緒に狩りをしたり。みんなのために、農作業のあれこれを調べてみたり。元気で優しい、お姉ちゃんみたいになりたかった」
「――っ」
思わず口元を手で覆った。アリアがなにを言いたいのか、気付いてしまったからだ。
「でも、ね。私はもう、お姉ちゃんみたいになれない。だから……ね。私が出来なかったこと、お姉ちゃんにして欲しいの。生きていればこんな未来もあったんだって……見せてよ」
「アリア……」
リアナはきゅっと唇を噛んだ。
アリアの命の灯火はいつ消えてもおかしくはない。明日消えるかもしれないし、一年後まで燃え続けているかもしれない。だとすれば、ずっと側に居続けることは出来ない。
そばにいたら、他の未来を諦めなきゃいけなくなるから。
なら、リアナに出来るのはたった一つだけ。アリアが生きているあいだに、アリアにもあったかもしれない未来を、全力で見せてあげること。
そのために、出来ることをしよう――と、リアナは歯を食いしばって涙をこらえた。
「分かった。あたしは、アリアの分まで頑張る。頑張って、頑張って、頑張って、お父さんやお母さん。そして村のみんなにリオン様。みんなを幸せにしてみせる。だから……っ」
それまでは見守っていてね――と、声には出さずに心の中で願った。いつ死ぬか分からないアリアに未来を約束させるのは、きっと負担になる……と、そう思ったからだ。
だけど――
「まだ諦めるのは早い。だから、そんな悲しいこと……言うな」
静かな声が部屋に響く。驚いて振り返ると、部屋の入り口にリオンがたたずんでいた。
明日の19時に無知で無力な村娘は妹を救いたい 3
20時にエピローグを投稿します。





