第122話 Fossil and Undead Dynamics(その2)
折角だから、というわけではありませんが、またアンデッド恐竜に襲われないか心配でしたので、化石を積み込んだIRKのトラックを送っていくと、旧時代の道の駅の跡地にキャンプが設営されていました。
何台ものトラックと作業用ロボット、ドローンたちがあちこちで集めた化石の整理と保存を進めています。
”おいこら、化石を混ぜるんじゃねぇうぉ”
”もとから適当にニコイチサンコイチされてんだから気にしたってしょうがねぇうぉ”
”サウオと同じサウオとは思えねぇいいかげんさだうぉ、サウオたるものもっと叡智に満ち溢れエレガントであるべきだうぉ”
”うるせうぉ、何がエレガントだうぉ。ハルシネーションでも起こしてんじゃねぇかうぉ”
”ふざけんなうぉ、そっちのほうがハルシネってんじゃねぇかうぉインストールからやり直せうぉ”
”やめるうぉ、サウオ同士の争いはみにくいものだうぉ”
何故か同じロボット同士で同じ声で口論をしているのが気になりました。
「どういう状況なんでしょう」
”オレとモササウオは文化・文明保全用に作られたAIなんだな。今回はサウオのコピーを作って作業用ロボットやトラックにインストールして作業をしてるんだな”
バーネットの近くを飛ぶアンモナイオのドローンが回答してくれました。
どちらも人間ではなく、プログラムだったようです。
アンモナイオはドローンの制御を担当しているようですが、こちらはAIを直接入れてしまうと処理能力が足りなくなるため遠隔制御。モササウオロボたちのようにコピー同士の口論などは起きないようです。
料理スキルは自炊にしか使えないようですので、化石の整理の様子を眺めたり、道の駅の廃墟を少し覗いてみるだけで立ち去ろうとすると、不審な砂煙が近づいてきました。
”FAUDの連中が来たみたいだな”
キャンプの周囲にドローンを飛ばしているアンモナイオが画像を共有してくれました。
近づいてきているのは、体長四メートルほどの肉食恐竜の骨格標本の群れでした。
メェ (ラプトル系か)
メエェ(アンデッドではないな)
メメェ(ゴーレムの一種のようだ)
”バザールで仕入れた並行世界製のレプリカ標本をゴーレムにして動かしてやがるんだうぉ”
近くにいたモササウオロボが言いました。
「動きの統制が取れているのはそのせいでしょうか」
化石にアンデッドの体組織を組み付ける方式だと動かすことは出来ても、意のままに操ることはできないはずです。
”ああ、ドクターTという頭のおかしい冒険者の仕業だな”
頭がおかしいと断言されてしまったドクターTという冒険者は、すぐに映像上に姿を現しました。
金髪碧眼、乗馬服姿の白人男性。
ラプトルではなくティラノサウルスの骨格を使った大型恐竜ゴーレムの背中に鞍をつけて乗っています。
「外国人の冒険者、でしょうか?」
アンデッド災害の発生以降、アンデッド因子感染症の拡大を防ぐ為、日本列島への渡航、および日本列島からの出国は禁止。いわゆる逆鎖国の状態となっています
東京大迷宮にはダークエルフ、エンジェルといった種族変更型クラスがありますので外国人風の容姿の人間は珍しくありませんが、普通の人間の白人の冒険者というのは初めて眼にしました。
”『人形遣い(マリオネッター)』のクラスを持つ冒険者だうぉ。恐竜とアンデッドの研究のためだけに日本に密入国してきた変態野郎だうぉ。派手なドンパチがはじまるから、大天使様はもう行くといいうぉ”
モササウオロボたちが作業用アームを戦闘用の銃器つきアームに付け替えて行きます。
”やろう、ぶっころしてやるうぉ”
”ギッタンギッタンだうぉ”
物騒なことを言いつつ前に出ていくモササウオロボたち。アンデッド戦ならともかく生身の冒険者との抗争にわけもわからず介入するのもどうかと思い、一旦距離をとって見守ることにします。
間もなく、車両色変更機能を使って潜伏したバーネットが無線の音を拾います。
“ハーハハハ、抵抗は無意味デース! すぐにワタシたちのダイナソー・フォッシルを引き渡しなサーイ!”
”恐竜! 恐竜! 恐竜最高だな!”
東京玩具流通センターのテレビで見たアニメの外人キャラクターを思わせるセリフ。続いて聞き覚えのある語尾が聞こえてきました。
”やめろだなこのバカ! みっともねぇハルシネり方しやがってだな!”
怒りの声のほうも語尾が独特です。
「アンモナイオさん同士?」
メェ (同型のAIのようだな)
メエェ(脳を焼かれたIRKのボンクラ恐竜マニアというのはアンモナイオ型のAIだったようだ)
メメェ(その尻拭いに同じアンモナイオ型AIが動いていたのだろう)
ややこしい状況になっているようです。
IRK側のモササウオ、アンモナイオの作戦は武装したモササウオロボたちがドクターTたちの気を引いている間に化石を積んだトラックを離脱させるものだったようです。
一機のモササウオロボが乗ったトラックの発進に合わせて、前進したモササウオロボ、アンモナイオドローンたちが発砲を開始します。
”うおおおおお、とっとみんな死ねうぉーっ!”
”自分殺しの時間だなオラァァァァッ!”
「ハハハハハ、タワケモノデース! 作業用ロボットやドッローンごとーきが私のダイナソー・ゴーレームにかなーうはずがありまっせーん! やってしまいなサーイ!」
”新たな白亜紀の始まりだなぁぁぁぁぁ!”
メェ (新たな白亜紀……)
メエェ(ハルシネーションにしてもひどすぎる)
メメェ(なんてセキュリティホールだ)
恐竜ゴーレムたちも突撃を開始します。恐竜ゴーレムの素材はFRP。モササウオロボたちが使っているのは猟銃などにも使われる7.62ミリ弾丸をばら撒くマシンガン・ユニットとより強力なマグナム弾を単射するライフルユニットの二種類ですが、どちらも恐竜ゴーレム相手ではあまり効果がないようです。
銃弾を弾き返しながら突進した恐竜ゴーレムたちはあっさりとモササウオロボたちを蹴散らし、逃げようとするトラックを追ってゆきます。
「うつけデース! 貴方方の考えること程度我々にはお見通しデース!」
”うぉ、逃げ切れんうぉ””
”くそったれ!”
あっという間に恐竜ゴーレムたちに追いつかれたトラックが横倒しになって停車します。
”万事休すかうぉ……”
”諦めるんじゃねえだろ!”
トラックの中のモササウオロボが無念の声をあげ、上空のアンモナイオドローンたちが周囲に発砲を開始します。ですがやはり、恐竜ゴーレムを撃退するには火力が足りないようです。
さらには、恐竜ゴーレムたちに叩きのめされたモササウオロボたちが、アンデッドのように動き出し、トラックの包囲に加わりはじめました。
”恐竜は最高だうぉ……”
”抵抗は無意味だうぉ”
”今日からまたジュラ紀が始まるんだうぉ……”
”ファミリーで楽しめる恐竜博物館を蘇らせるんだうぉ”
”恐竜復活をみんなで祝うんだうぉ”
”ジュラシック地方創生だうぉ”
「「作業用ロボットのAIを書き換えられている模様」」
バーネットがそう解説し、IRKのものとは違った形式のドローンがモササウオロボに取り付き、触手のようなケーブルでデータのやり取りをしている映像を表示しました。
FOUD側のアンモナイオのドローンのようです。
「バイデントで牽制を。まだ当てないでください」
「「了解、射撃開始」」
指示を受けたバーネットがバイデントを起動、トラックに群がる恐竜ゴーレムや洗脳モササウオロボたちをかすめるように大口径弾をばら撒いていきます。
衝撃波にあおられた恐竜ゴーレムや洗脳モササウオロボたちが吹き飛び、横転して行きます。
レゾナンスシステムを拡声器として使用し、トラックの向こうに陣取るドクターT、その横に浮いているFOUD側のアンモナイオドローンに呼びかけました。
「こちらキッチンカーBS221B。ただちに攻撃行動を停止し、撤退してください。当方の火力は、皆さんの全戦力を数秒で消滅可能です」
少しハッタリが入っていますが、BS221Bの屋根から照準しているバイデントのプレッシャーが効いたようです。ティラノサウルスの骨格ゴーレムに騎乗した謎の冒険者ドクターTは警戒した様子で「フーウ? 何者デース?」と言いました。
”ご存知ねぇのかうぉ”
”東京大迷宮を小麦色に染め上げる今年の東京大迷宮やべー女オブジイヤー候補筆頭”
”大天使コムギエル様だうぉ”
洗脳されたモササウオロボたちが、勝手に説明を始めました。
「いろいろ違います」
一部でそういう評価や呼称をされていることは把握していますが、公式に認めた覚えはありません。




