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2日目昼:山羊の処刑場*1

「銃……本物、ですよね……?」

「そうみたいね。それに、円形に並んだ椅子、っていうのは……まあ、そういうことかしら」

 ミナが怯え、ビーナスが顔を顰める。そしてバカは、ルールカードを読み始めた!

 前回と違うものじゃないか、緊張しながらバカはルールを読み進める。勿論、バカはバカなので前回のルールの細かいところまで覚えていない。もしかしたら、前回からルールが変わっていても気づかないかもしれない。

 だが、それでもバカはルールを読み……ちゃんと、その一文があることを確認した。

 そう。『銃声が鳴り響いた時、全ての固定具が解除され、扉が開く。ルールは以上だ。』というその一文を!




「なあ!皆!このルール読んでくれ!」

 バカは陽とたま、ミナとビーナスに声を掛ける。

 彼らはそれぞれに心配そうに、或いは冷静に部屋の様子を見ていたのだが、バカがルールカードを持ってやってきたので、多少なりとも驚いたらしい。つまるところ、『このバカ、バカなのにルールちゃんと読んでる!』と。

「……成程。ロシアンルーレット、ってわけね」

「2発分は必ず、不確かな方へ飛ぶんですよね……うーん」

「……まあ、誰かが誰かを殺すことを推奨している、ということだろうね。趣味の悪い仕掛けを作るものだなあ……」

「2発の銃弾を防ぐ方法は……」

 そうして4人がそれぞれに考え始めたところで、バカは意を決して、言うのだ。

「あの!俺、銃の物真似してもいいかなあ!?」


「……じゅうの?」

「ものまね……?」

 当然のように、バカの発言は全員を困惑させた。それはそうである。

「ええと、それは一体……?」

「ほ、ほら!ここ、銃声で開く、って書いてある!だから、銃を撃たなくても、銃声っぽい音がすれば開くかもしれねえだろ!?」

 バカが『こういう説明でいいのかなあ!』とわたわた説明すれば……たまが、はっ、としたような顔で頷いた。

「……うん。一理あると思う。確かに、ルールには『銃声が鳴り響いた時』ってある。つまり、銃を撃つ撃たないじゃなくて、銃声が鳴る鳴らないの判定が行われているのかもしれないし……是非、やってみてほしい」

「えっ」

 たまが目を輝かせ始めたのを見て、陽は困惑していたが。だが、たまがあまりにも目を輝かせているので、『まあいいか』というように頷き始めた。

 ……たまは案外、変な別解が好きなようだし、陽は彼女に甘い。そういうことである。

「ま、まあ、バカ君が試す分にはタダだものね……いいんじゃない?やってみれば?」

「そ、そうですよね!銃を撃って誰か2人大怪我をする可能性なんて、無い方がいいに決まっています!」

 ビーナスとミナも賛同してくれて、無事、バカは全員の許可を得ることができたのだった!バカはバカなのに、賢い皆の説得に成功したのである!バカ、快挙!




 ……ということで。

「じゃあ皆!耳塞いどいてくれ!ほら、ヤギさんぬいぐるみとか使って!」

 バカは皆を部屋の隅に固まらせて、そこにヤギさんぬいぐるみをもふもふ!と積み上げていく。

「あっ、なんか土屋さんの人形出てきたんだけど!?」

「えっ!?に、人形の中から、ですか!?」

「……普通に銃を撃っていたら、土屋さん、死んでたかもしれないんだね……」

「ま、まあ、気づけてよかった、よね……ははは……」

 バカが皆を衝撃から守るために積み上げたヤギさん人形は、結果として土屋人形の発見に繋がり万々歳である。バカは『そういえば土屋のおっさんの人形のことは忘れてた!危なかった!』とわたわたしつつ、さて、気を取り直して……。

 ……部屋の隅から皆が見守っている中、バカは、すうっ、と息を吸い込む。

 立派な腹式呼吸だ。常人にはありえない程にたっぷりと空気を吸い込んだバカは……その心に、強く、皆のことを思う。

 死んでしまって悲しかったことも、仲良くなれて嬉しかったことも。それら全てを糧に、未来を切り開かんとすべく、バカは、吠える。

 バカは吸い込んだ空気を体内で圧縮し、そして一気に吐き出し、銃声をも超える大音量で叫ぶのだ!


「めろん!ぱぁん!」

 ……尚、今回もメロンパンである!




 そうして扉が開いた。『ふぃーん』と開く扉の何とも軽やかなこと!

「……開いちゃったなあ」

「開いちゃった、わねえ……」

「わあ……!樺島さん、すごいです!」

 陽とビーナスは呆れ、ミナは喜び、そしてたまは、この光景がお気に召したらしく、くすくす笑っていた。かわいい!

「よーし!みんなー!行こうぜー!」

 ……ということで、バカ達はとんでもないスピードで山羊と銃の部屋を突破したのであった!




 ものすごいスピードで部屋を攻略してしまったので、ものすごく暇である。ミナは『ま、まさかここまでとは』とあわあわしていたが、バカは『いっぱい時間作ったぞ!』と満面の笑みであった。

 さて、残り80分以上を過ごすべく、まずは解毒処理を行う。4人が順番に解毒装置に座って、その間にバカはガラクタ置き場からいいかんじの椅子をもそもそと発掘してきて並べた。最早すっかり、ガラクタ漁りがバカの仕事になっている!

「はあ……すごい速度で終わっちゃったわね」

「まあ、元々そんなに時間がかかるゲームじゃなかったと思うけれど……」

 ビーナスとたまが早速ソファに座ると、陽とミナもやってきてそれぞれに座った。ミナは『わあ、ふかふか』とソファのふかふか具合ににこにこである。バカは『ソファは俺が見つけた!』と得意げな笑みである!

「今のところ、時間が90分いっぱいかかるようなゲーム、来てないな……あ、でも、陽の方はさっき、お鍋……?だったんだっけ……」

「あ、うん。あれは90分ぎりぎりとは言わずとも、60分以上は確実に使う仕様だったと思う」

「そっか。こっちの『双子の乙女』は、クリアだけなら10分かからずに終わる仕様だったから」

「ということは、たまさんは今のところ、ゲームでかかった時間はそれぞれほとんど無かった、ということですよね……わあ」

 たまは『短いゲームばっかりに当たってる気がする』と何とも言えない顔をし、陽は『まあ、君が無事で居てくれるならなんでもいいよ』と苦笑した。バカは仲睦まじいカップルの様子を見て、にこにこである。

「ま、いいじゃない。今回は樺島君のおかげで随分と楽させてもらっちゃったけど、楽であるに越したことは無いでしょ?」

「そうだね。もしあのまま銃を撃っていたら、その、土屋さんに影響が出ていた可能性が高いし……樺島君が居てくれてよかった」

 更に、ビーナスと陽から賞賛の言葉を浴びせられ、バカはますます嬉しくなる!ミナとたまも『ありがと』『ありがとうございます!』とぱちぱち拍手を送ってくれて、バカはもっともっと嬉しくなる!

 ……嬉しくなりすぎたバカは、ちょっと宙に浮いた。浮かれすぎたあまり、宙に浮いた。……そして皆が浮かぶバカに注目する中、そっと、地上に戻ってきて、にこにこ顔のままソファに着席して、『照れる!』ともじもじしていた。……皆、バカがちょっと浮かんだことについては見なかったことにしてくれた!




 さて。

 バカがこんなに急いでこの部屋をクリアしたのは、ミナとビーナスが喋る時間を作るためだ。

 ……ミナは、ヒバナの行動について、納得できた、のだろうか。そしてこれからビーナスと話す中で、納得できることが、増えるだろうか。

 バカはちょっぴり心配になりつつ、ミナとビーナスとを見つめていると……。

「あー……ええと、時間が余ってしまっている訳だし、少し、話でもしない?」

 陽が最初に、そう切り出してくれた。こういう時に陽は頼れる奴である!

「とはいっても、何を話せばいいのか、ちょっと迷うけれどね。ははは……うーん、どうしようかな」

「ええと、あの、じゃあ……」

 陽が話題に少し困っていると、ミナが控えめながら、しっかりと挙手した。

「……あの、皆さんは普段、どういうことをされている方ですか?」

 そうしてミナは、少しばかりビーナスの様子を窺いながら、そう、尋ねたのだった!




「俺、建設会社で働いてる!」

 ということで、一番槍はこのバカである。バカは自分が働いているキューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部の面々を思い出して、にこにこと思わず笑顔になってしまった。

「親方と先輩が皆いい人でさあ、俺、いっつもお世話になってて……へへへ」

「よかったね。幸せそう」

「うん!俺、幸せ!」

 バカはにこにこにこにこ、幸せいっぱいの笑顔である。恐らくこのバカは世界一幸福なバカだ。


「ええと、俺は学生だよ。たまもそうだ」

「うん。高校から同じ大学に進学したところ」

 続いて、陽とたまのカップルも早速、職業を明かしてくれた。どうやら彼らは学生のようだ。まあつまり、海斗と同い年ぐらい!

「へー。ちなみにどこ大行ってるの?」

「……東大」

「へー……えー!?えっ!?そうなの!?」

「ああ、うん、まあ……うーん、毎度のことながら、ちょっと気まずいんだよね、これ言うの……」

 そしてなんと、陽とたまは東大カップルらしい!バカはバカだが、東大がすごいところだということくらいは知っている!バカは『すげー!』と目を輝かせて陽とたまを見つめるのだった!


「ミナさんは?ミナさんは……同い年くらいに見えるけれど」

「あ、はい。私も学生です。たまさんと陽さんみたいに頭がいいわけではないですけれど……。それで、半年前まで小料理屋でアルバイトしていました。なので、お料理は得意です」

 ミナはそう言って、少し寂しそうな笑みを浮かべた。……ミナの言う小料理屋、というところが、きっと、燃えてしまった先輩のお店だったのだろう。

「それで、ええと、ビーナスさんは?」

 ミナは、これ以上『小料理屋』について喋らないためか、ビーナスに水を向ける。するとビーナスは笑って、少しばかり考えを巡らせるような顔をして……。

「私はね、しがない会社員よ。父が運営している会社に就職して、3年目。そんなところよ」

「へえ……どんなことをしている会社?」

「主に輸入ね。まあ、それなりに稼いでいる、っていうかんじかしら」

 ……ビーナスはそう言って笑っている。バカは、『蛇さん会はゆにゅーで稼いでるのか……』とバカ正直に受け止めた!


「では……その、何故、このゲームに?」

 そんなビーナスに、ミナは更に、切り込んでいく。

「皆さんがこのゲームで叶えたい願い、お伺いしてもいいですか?」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ん?、浮いた?まさかマジでフローラルでムキムキなエンジェルな可能性出てきた?もしくは現代版ヘラクレスか?
[気になる点] ……樺島君の音波攻撃に耐えるとは……ヤギさんぬいぐるみと土屋さん人形の素材とはいったい……。 やはり悪魔さんは侮れない?
[気になる点] 今回は銃身縛らなかったんですね? 不確定な2発をみなさんどうやって避けたんでしょう? [一言] やっぱりバカくん、リアル天使疑惑。まんま力天使なヴァーチュース?それとも悪魔と戦うのがお…
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