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1日目昼:双子の乙女*1

「さて。では、どの組がどの部屋に入るか、だが……」

 そうしてチームが決まったら、次は入る部屋の決定が待っている。

 何と言っても、部屋は9個あるのだ。いっぱいだ。バカは3以上の数を数えるのにちょっぴり自信が無い。いや、流石にもうちょっとは数えられる。5ぐらいまでなら数え間違えない。多分。

「なら、我々はこの部屋に入ることにしよう。いいかね、陽君、たまさん」

 そして、真っ先に天城が部屋を選んだ。陽もたまも異論は無いようで、それぞれに頷いている。

「では、我々はその隣にしておくか」

「じゃあ俺達はそのまた隣にしとくかぁ?なあなあ海斗ぉ、ヒバナぁ、それでいいかぁ?」

 ……ということで、入るドアはそれぞれに決まった。バカは、『この部屋、なんだったっけなー、もう、どのドアがどのドアか覚えてねえよぉ』としょんぼりしつつ、『できれば鍋の部屋がいいなあ……えへへ』とのんびり笑顔になった。


 と、そんな時。

「……たまさん。少し、いいかね」

 ちょい、ちょい、と、天城が手招きをしていた。

 たまは、『私?』というように首を傾げていたし、陽は何事か、と、少々警戒するような様子を見せる。

「……それは、2人きりで、ということかな。なら、俺も加わりたい。3人組の中の2人だけで話されると、その、どうしても不安だし」

 そうして陽がそっと前に出れば、天城は頷いた。

「分かった。陽君も居てくれ」

 すると、天城はなんと、陽の同席も許可したのである!

「お、おお……?偏屈なご老人だと、思っていたが……?」

 海斗はその様子を見てから、ちら、とバカの方を疑わし気に見てくる。多分、『聞いていた話と違うんだが』ということだろう。

 これに対してバカは、『俺もあんな天城のじいさん知らないって!』という意思を込めて、ぶんぶんぶんぶん、と首を横に振った。その風でミナの三つ編みがぷわ、と流されて、『わあ』とミナが驚いていた。

 バカは、奥の方へ行ってしまった天城とたまと陽の姿を見て、『天城のじいさん、今回はなんだか穏やかだなあ』と首を傾げている。どういう風の吹き回しだろうか。




 それから少しして、3人は戻って来た。

「お待たせ」

「なーなー、たまぁ。何の話してたんだ?」

 怖いもの知らずのバカは早速、たまに近づいていって、真正面から聞いてみる。

 すると。

「天城さんの異能の話」

 たまは、あっけらかん、とそう教えてくれたのである!

「……共にゲームに挑むなら、知っておいた方がいいだろうと思われたのでな。一方で、そう多くの者に知られたいとは思わん」

 天城は少し渋い顔でそう言いつつ、頷いている。どうやら本当にそういう話だったらしい。

「成程な……確かに、我々の異能は、互いに知っていた方が有意義に使えるものもあれば、そうでないものもあるだろう。知られることで自らを危険に曝すようなものもあるだろうしな」

 土屋も納得したようにそう言って頷いている。……それから、少し考える素振りを見せたのは、自分自身の異能を公表するか迷ったから、だろうか。

 土屋の異能は、『盾を生み出す異能』だ。だから、公表した方が抑止力になることもあれば、公表しないことで土屋を舐めてかかってくれる相手も居るのかもしれない。難しいところだ。バカは唸った。


「……もう少し、時間があるよね」

 それからたまは時計をちらりと見て、そして……バカ達の方へと近づいてきた。

「ちょっと、首輪を見せてほしいんだけれど」




 ……そうして。

「ふーん……刻まれてるマーク以外、特に違いは無いんだね」

 たまはバカと海斗の首輪を確認し終えて、今、ヒバナの首輪を確認しているところである。

 ヒバナの方がたまより大分背が高いので、たまはヒバナの肩に手を掛けつつ、丁度たまの目の高さにあるくらいの首輪をじっと見ていた。

 ……ヒバナの背が高いというか、たまが小柄なのだ。バカからしてみたら、本当に小さい!

「土屋さんとミナさんとビーナスさんのも、見せてもらっていい?」

「まあ、別に構わないよ。どうぞ」

 土屋はヒバナよりもさらに背が高いので、たまのために屈んでいた。尚、バカはさっき、『これで見えるか!?』と、しっかり体育座りしていた。たまはそんなバカの周りをくるくる回りながら、『ちょっと楽しい』と言っていた。

「私も、どうぞ」

 それからミナも、たまの前に立って、もじもじしながらもたまの観察を受けた。ミナの方がたまよりは身長が高いが、まあ、そこまでの差は無いのでたまも楽そうである。

「……私は遠慮しておいていい?少なくとも、触るのはナシよ。そういう異能かもしれないからね」

「ああ……そっか。そうだね。ごめん、少し無遠慮だった」

 そしてビーナスは、少々心配そうに立っている。そしてたまは、ビーナスに触れないようにしながら、ちら、とだけ首輪を見た。……ビーナスはかなり背が高い。というのも、ヒールの高い靴を履いているからだ。ヒール込みだと、海斗に十分並んでしまう。

 バカは、『まあ、一番でっかいのは俺だな!』と少し誇らしく思った。まあ、デカかろう悪かろうなケースもあるので、一概に誇る訳にもいかないのだが……。


 さて。

 そうしてたまの首輪観察タイムが終わると、いよいよ昼を告げる鐘が鳴る。

「……じゃあ、行くか」

 土屋がそう切り出せば、3チームはそれぞれに、それぞれのドアの中へと進んでいくのだった。




「私達は双子の乙女」

「今からYESかNOかで答えられる質問に20回まで答える」

「質問を経て、私達が想像しているものの名前を当てなさい」

「うわああー!双子のねーちゃんだぁー!」

 ……そうしてバカ達がそこで見たのは、『双子の乙女』であった。


 双子の乙女はその名の通り、2人の女性であった。

 そしてその2人は非常に似通った容姿をしており、そして、ぞっとするほどに美しい。

 まるで、作り物のような美しさだ。……実際、作り物なのかもしれないが。

「そうか、そうか。20の質問から答えを探る……成程な。つまり、頭脳戦か」

 海斗は、にやり、と笑った。『自分の得意分野だ!』ということなのだろう。

「頭脳戦!?つまり俺、全然役に立たねえってことか!?」

 そしてバカは愕然とした。『自分の苦手分野だ!』ということである。

「ヒバナ!ヒバナはこういうの得意か!?」

「……いや」

 更に、ヒバナも苦手らしい!バカは『だよなあ!多分、ここに来てる中で俺の次にバカなのヒバナだと思う!』と納得の笑みで頷いた。

「成程な……では、僕がここでは主戦力になる、ということか」

 海斗は、ひく、と表情を引き攣らせつつ、バカのすぐ後ろへやって来た。……先陣を切るのはバカの役目だが、その後ろで戦うのは海斗の役目である。




 そうして、双子の乙女はルールの説明を始めた。

「回答は5回まで。一度不正解の回答をしてしまった者は、他の全員が不正解の回答をしてしまうまで次の回答ができない」

「そして、不正解の回答をしてしまった者の檻には鍵が掛けられる」

「誰かが正解したら、その正解者に全ての檻の鍵が渡される」

「その120秒後に檻の下の床が抜ける」

 バカは、一度、前回聞いたルールである。が、前回同様、理解はできていない!

「床の下に居るのは毒蛇。噛まれれば命に係わるでしょう」

「ひっ……」

「うお……マジかよ、くそ……」

 ……だが、海斗とヒバナが足元を見て青ざめたのは、分かった。ので、バカも足元を見てみる。

「わあー……にょろにょろしてるなあ」

 足元は、鉄のフェンスでできている。そしてその下に見えるのは、にょろにょろ、と絡み合いつつ蠢く蛇達である。

「なーなー、これ捕まえて酒に漬けるといいやつかあ?」

「それどころじゃないだろう、どう見ても!お前はバカか!?」

 海斗に怒られてしまった。バカはしゅんとした。同時に、『じゃあ、焼いたら美味いかな……』と考えた。バカは早速、ちょっとお腹が空いてきた。


「さあ、檻の中へ入りなさい。あなた達が全員檻の中に入ったら、正面の籠の中に出口の鍵が生まれる」

「12回までの質問で答えを出せたら、その時は特別なご褒美をあげる」

 双子の乙女が美しく笑う。美しく、しかし、残忍さを孕んだ笑みだ。

 やはり、この双子の乙女達は悪魔なのだろうか。

「……くそ、檻に入らなきゃ出口の鍵が手に入らない。先へ進まなければ首輪の毒で死ぬ。そして、失敗すれば毒蛇に噛まれて死ぬ、か。……やるしかないようだな」

 海斗が渋々、檻の中へ入ると、ヒバナも黙って、隣の檻に入った。なので、バカもその反対隣りの檻に入った。




「では、始めます」

「私達が想像しているものは、『食べ物』よ。では質問をどうぞ」

 そうしてゲームが始まる。海斗とヒバナが何か考えているのを見て、バカは……。

「……質問!」

 びし、と手を挙げた。


「おねーちゃん達って、いちらんせいソーセージってやつか?」




 ……そして、海斗も、ヒバナも、双子の乙女も、皆が質問の意味を理解するのに数秒を有したのだった。


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― 新着の感想 ―
マシュマロ!って答えたら特殊会話発生するやつだ、これ
[良い点] 木星の人の存在がふわっと浮上したので、2周目の録音のゲーム説明アナウンスを見返したら盲点だったこと。 ・『謎をひとつも解いていないやつがいる』 =一人とは言っていない。 ・『集まれる者…
[一言] あくませんせー、これは質問に入りますかー(白目)
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