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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム  作者: もちもち物質
第二章:帰ってきたバカ
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0日目夜:大広間*4

『死にたくないなら、やるべきことは簡単だ。……君達の時計が『昼』を示した時、周囲のドアが開くようになる。その先にあるのは、楽しい『ゲーム』だ。そして、そのゲームをクリアした先にあるのは、解毒装置。君達に注射された毒物を中和してくれるものだ。素晴らしいだろう?』

 それでも悪魔のアナウンスは続く。既に半分やる気を失くしている人々の中に、悪魔の上機嫌なアナウンスが上滑りしていくようだった。

『同時に、『更に次の夜』に死ぬよう、新たな毒薬が注射されるが、それは次のゲームでなんとかすればいい。……まあ、とにかく、君達が生き残るには、ゲームをクリアして解毒装置を使うしかないということだ。ただし、注意点が4つ!』

 バカはバカなので、必要無くても説明をちゃんと聞く。『注意点は4つ!ヨシ!』と、やる気いっぱいである。

『……1つ目は、ゲームへと続くドアはそれぞれ1回きりしか開かない、ということだ。一度も開いていないドアなら昼の間ならいつでも開く。だが、一度でも開けてしまったなら、閉じたが最後、もう二度と開くことは無い!』

 バカは、『ドアのことならわかるぞ!』と嬉しくなった。

 既にバカは、ライオンの部屋と水槽の部屋、2つのドアを潜ってきている。どういう性質なのかは、大体分かっている。大体は。……そして、バカが分かっていないことについては、多分、たまや陽が分かっているのでヨシ!

『2つ目は、人数制限だ。どのドアも、人数の制限は無い。何人で入って頂いても結構。だが……ゲームの先にある解毒装置は、4人分のみ。そして、夜になるまで出口は開かない。……お分かりかな?つまり、5人以上が同じ部屋に入ってしまったら、その時点で1人以上が死ぬことが確定するということだ!』

「いや、確定しねェんだよなぁ……」

 ヒバナがまたぼやいた。バカは、『その通り!』とうんうん頷いた。……前回、ものすごく悩んだ時に学んだのだ。『首輪が無ければ、5人でも6人でも入って大丈夫』と!バカはちゃんと覚えている!

『続いて、3つ目!解毒装置にある解毒剤は、ドアを開けたその昼の間にしか使えないから注意したまえ』

 これも確かそうだったよなあ、とバカは思い出す。確か、夜になってしまうと、解毒装置の中に装填されている玉の光が消えてしまうのだ。あれだともう使えない、ということなのだろう。

『そして最後、4つ目だが……ドアの先のゲームでは、何が起こっても、一切の責任を負いかねる。そして、『何を起こしても』お咎めナシとしようじゃないか』

「分かった!何してもいいんだな!よかったぁ!」

 バカは満面の笑みで返事をした。

 そう!バカはこれが聞きたかったのである!……うっかり物を壊しても、ライオンを殺しても、お魚を食べちゃっても文句を言われない、という保証が!これが、欲しかったのである!




 バカは大喜びである。喜ぶバカを見て、周りの人間達は心配そうにしていたり、呆れ返っていたりするばかりだ。

「……あの、樺島君」

「うん?なんだ、たま」

「多分、さっきのアナウンスの意味は、『だから、ゲーム中に他の人を殺してもいいよ』っていうことだと思うよ」

 たまの言葉を聞いて、バカはぎょっとした。

「……殺したくはないぞ!?」

「そう。ならよかった」

 なんてこった!とバカがおろおろする中、たまはちょっとため息を吐いた。呆れている。

「ただ、俺はうっかりライオン殺しちまったり、ピラフ食っちまったり、ドア壊しちまったりしても怒られねえっていうんなら嬉しい!」

「……ライオン出てくるの?あと、ピラフ……?」

「うん!泳いでるやつ!」

「泳ぐピラフ……あっ、ピラニアか何かのこと、でしょうか……?」

 バカの発言に全員が頭の上に?マークを浮かべる羽目になった。が、たまが『ほら、続き、聞いてあげようよ』とスピーカーの方へバカの意識を促したため、ひとまずこの話はここで終わった。バカは助かった。


『まあ、そういう訳だ、諸君。ゲームを楽しんでくれたまえ。ああ、あと、最後に1つ……君達にはそれぞれ1人1つ、異なる異能が与えられている。金庫にあった説明は読んできたかな?その通りに行動すれば、問題なく異能を使えるはずだ。そして君達の望みを叶えるといい』

 これもバカは覚えている。つまり、願いを叶えたい人同士で喧嘩になる、という話だ。バカは『喧嘩はよくねえよなあ……』と眉根を寄せた。

『君達の望みが叶えられるのは、今を『0日目の夜』とした時の『4日目の昼』にあたる。その時、我々は責任をもって……そこのカンテラに入っていた人間の魂の数だけ、望みを叶えてあげようじゃないか。だが、無論、魂の数が生き残った人数より少なかったからといって、叶える願いの数を増やしはしない。誰が願いを叶えるのかは、君達で決めてくれ』

 バカは『悪魔ってケチだよなあ……』とまた眉根を寄せた。折角なら、人間の魂とか言ってないで、全員の願いを叶えてほしいものである。

『そこのカンテラに人間の魂を入れる方法は簡単だ。人間が死んだら、その魂がそのカンテラに入る。まずは、次に夜の鐘が鳴った時までに死んでいた魂を鐘と同時にカンテラに入れておくとしよう。更にその次は、次の夜の鐘だ。覚えておきたまえ』

 そしてこれも、バカは大体覚えている。要は、死んだ人の魂はあのカンテラの中に入ってしまうのだ。……カンテラに入れられちゃったら、どんな気分なのだろう。やっぱり狭くて居心地が悪いのだろうか。バカは心配になった。

『では、ゲームスタートだ。参加者諸君、うまくやりたまえ』

 ……そうして、バカの心配はさておき、アナウンスはぷつりと途切れ……いよいよ、ゲームが始まる。

 バカにとっては2回目、そして他の人達にとっては初めての、デスゲームだ。恐らくは。




「……えーと、ちょっと、いい?」

 そうして最初に口を開いたのは、ビーナスだった。

「……このゲーム、既に、破綻……してない?」

 ……実にご尤もな……本当なら、悪魔に直接聞きたかったであろう疑問をビーナスが零せば、周囲は全員、静まり返る。

「……まあ、してるよね」

 たまが、ぽそ、と言えば、『そうよねえ……』とビーナスは顔を顰めて、憎々し気に首輪をちょっと引っ張った。当然ながら、ビーナスの力では首輪は千切れない。当然である。バカがおかしいのだ。バカが。

「とりあえず……」

「とりあえず自己紹介しようぜ!俺、樺島剛!バカ島とかバカとか、好きに呼んでくれ!職場ではバカって呼ばれてる!よろしくな!」

 そして、バカはおかしいのでここに来て自己紹介を提案した。

 ……全員、バカがこういう奴であるらしいということは既に分かっているため、『どうする?』『どうしようね』というように顔を見合わせ……。

「……まあ、呼び名が無いと不便だし。じゃあ、私から。私のことは『たま』って呼んで。『地球』の球で、たま。よろしく」

 たまが、最初にそう名乗り出たのだった!


 たまが名乗り出たため、次々に皆が名乗るようになった。

 陽、ビーナス、ヒバナ、土屋、ミナ、天城……そして、海斗の番が来た。ので。

「で、こいつは海斗だ!よろしくな!」

「何故お前が名乗る!?」

 バカが代わりに海斗を紹介しておいた。なので海斗は、『海斗』ではない名前を名乗る機会を失った。バカは良かれと思ってやっているが、海斗にはものすごい形相で睨まれている!




 海斗は文句を言いたかったようなのだが、それより重大な話が来てしまったので、海斗の名前については流されていった。どんぶらこ、どんぶらこ。

「それで、あの、ど、どうしましょう。あの、このままだと私達3人、死んでしまう、のですよね……?」

 そう。名前より重大な問題。それは、『3人』の問題だ。

 バカが首輪を破壊しそこなってしまった3人……たまと、ミナと、ビーナス。奇しくも女性3人が首輪付きのままなのだが……。

「うん。私達3人だけは、このままだと死ぬ。でも……」

 たまは、ちら、と他の6人を見渡して、ため息を吐いた。

「……他の6人は、そうじゃない。だから余計に、まずいと思う」


「そうだな……言ってしまえば、首輪をつけている者は首輪をつけていない者に逆らえなくなった、ということだろうな」

 たまの言葉に頷きながら、海斗が一歩、前に進み出る。

「えっ、そうなのか?」

 バカが尋ねてみると、海斗はバカを無視して他の皆に話しかけ始めた。

「昼に開くドアは、『一度開いたら二度と開けられない』のだったな?そして、昼のドアの先にある解毒装置は、ドアを開けたその昼の間にしか使えない。……つまり、全てのドアを開けて閉めてしまえば、その時点で首輪をつけている者の死亡が確定する」

 海斗の言葉に、女性3人が緊張感を高める。

「……で、首輪をつけてねえ奴の方が多数派で、つけてる連中の方が少数派、ってわけだよなァ……?」

 更に、ヒバナがそう言った。バカにはよく意味が分かっていないが、女性陣はより一層、緊張感を高めた。

 ……そして。

「そういう訳で、提案だ。……僕は、全てのドアを最初の昼に開けるべきだと考える。さあどうかな?他5人の男性諸君!」

 海斗が、そう提案したのだった!




「俺は反対する」

 そして真っ先に、陽が反対した。

「あー……ええと、悪いね。この子、俺の恋人なんだ。死なせるわけにはいかない」

 なんと、陽はそう言ってしまうと、たまの手を、きゅ、と握った!どうやら、今回のたまと陽は、お互いの関係を公表していくことにしたらしい。

「……そうか。他は?」

 海斗が何とも言えない顔で周りを見渡すと……続いて。

「私も反対する」

 ……なんと。

 天城が、そう、名乗り出ていた。


「えっ!?天城の爺さん、反対なのか!?」

「……ああ、そうだ。反対だ。そちらのお嬢さん方に死ねと言うのは、あまりに酷ではないかね?……それとも、私が賛成すると思っていたのか?」

「うん!思ってた!だから今びっくりしてる!」

 バカはびっくりした。

 だって、あの天城である!最初にバカを殺すことを提案してきたぐらいの、物騒な爺さんである!その爺さんが、なんと、たまとミナとビーナスを死なせる案に、反対しているのだ!

 バカは驚いた!『目ン玉飛び散るぐらい驚いた!』と零してみたところ、たまから『目玉は飛び出すだけにしておこうね』とそっと言われた。

「ふむ……それは心外だな。お前は一体、私の何を知っているというのだ?何をもってして、そんなに驚いている?」

「え?えー……そんなこと言われてもよぉ……」

 天城に、ぎろり、と睨まれて、バカは困る。

 バカは陽とたまに助けを求めて視線を送ってみるのだが、2人とも、バカを助けてくれる気は無いらしい。バカは只々、天城に睨まれてわたわたするばかりである!


「……まあ、そのバカはどうでもいい。そちらはどうかな?」

 そして続いて、海斗がヒバナに話を向ける。おかげでバカはちょっと助かった。実際のところ特に助かっていないのだが、話が自分から逸れたら助かった気がしてしまうのがバカのバカたるところである。

「ああ?俺かァ?」

「ああ。どうする?」

 ……そして、海斗がヒバナに決断を迫ると。

「……俺も反対だな」

 なんと!ヒバナも、反対し始めたのである!


「えっ!?お前も反対すんのか!?」

「んだよ、悪いかよ」

「いや!悪くない!でもびっくりした!」

 そしてバカはまたもやビックリする羽目になる!

 だってこのヒバナは、どちらかというとバカのことを殺そうとしていたはずである!ライオンの部屋の後からは、特にバカに対して敵対していたわけでもないのですっかり忘れていたが……だが、ヒバナは人を殺したい方だったような気がするバカとしては、只々、驚きなのだ。

 マジかよぉ、とバカが目を円くしていると、ヒバナはなんとも気まずげな顔で、ふい、と視線を逸らした。バカは『はえぇー』とびっくりのため息を吐いているばかりだ。

「さて、私が意見を表明する必要も最早無いように思うが……私も反対だ。そもそも私は、人を殺してまで願いを叶えたいとは思わんのでな」

 そして最後に、土屋がそう宣言する。土屋のおっさんは前回と同じでぶれねえなあ、とバカは嬉しくなった。

「願いを叶える気が無い、だと?……なら何故ここに来た?」

「さてな……まあ、それはお互いに関係のないことだ」

 土屋はそう言うと、ふ、と海斗を睨む。

 海斗は怯んだ様子であったが、真正面から土屋の視線を受け止めていた。




 ……そして。

「……私からも提案がある」

 天城が、そう言って、手を挙げる。

「排除すべき者はむしろ……こっちでは、ないかね?」

 ……誰も、何も言わない。ただ、海斗が緊張の面持ちで天城を睨んでいた。


「この海斗とやらを、殺しておくべきではないか?」




「ええええええー!?俺じゃなくて海斗ぉ!?」

 そしてバカはとても、びっくりしたのであった!


 前回と、色々、違いすぎる!

 どうしてこうなっちゃったのであろうか!バカには分からない!バカだから!

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― 新着の感想 ―
巻き戻し系あるある 過去を変えると余計にややこしくなる
[気になる点] 感情は還元される?繰り返せば記憶も? [一言] 一回目もバカ死んだ判定されて説明聞けなかったのか。
[一言] 我が名はアジダハーカ! バカだからひたすらどんぶらこしている。 とってもたのしい!(サンジョウ ᐙ バカナヒト ) (コンプラ的にア○タカをバカよばわりはアウトですよね…)
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