表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/146

2日目夜:大広間

 そうして。

 リンゴン、リンゴン、と鐘が鳴る。2日目の夜が来た。

 そしてそのまま少し待って……。

「おはよう!」

 バカや他の皆が見守る中、木星さんは目を覚ました。

 はっ、と目を覚まして、そして……。

「う、うわあああああああ!?」

 案の定、叫び声をあげてバカをすり抜けた。最早様式美である。バカは『生きがいいお魚ってこういうかんじだよな……』と、つかみ取り漁をした時のことを思い出しながらするするすり抜ける木星さんをわたわたと抱え直した。

「な、何が……何が起きたんだ!どうして、どうしてこうなったんだ!」

「ええー、説明が難しいよお……」

『どうして』などと言われても困る。バカは困り果てて木星さんを抱え直した。

 だが、そんなバカには心強い味方が居る!

「なら説明を簡単にしてやろう。『リプレイ』だ。対象はこの大広間。時間はこのバカが床を掘り進めているシーン!」

 そう!口で説明できないなら、映像で!

 海斗が異能で木星さんに説明してくれるのだ!




 ……ということで、その場でバカがお風呂づくりしているところの『リプレイ』が流れた。

 つまり、バカが木星さんを振り回して大広間の床を掘り抜いているシーンである!

「こ、これは……!?」

「見れば分かるだろう。このバカが床を掘っているシーンだ」

「な、だ、だって、僕が!僕が、振り回されて……!?」

「ああ、見たままだ。そうだ。お前は私の『無敵時間』によって無敵の……その、工具となった。そういうことだ」

 海斗と天城が非常に雑に説明すると、木星さんは、ぽかん、とした。

「あ、風呂、今からでも入りたいか……?あと、羊さんとライオンに囲まれて昼寝したければ、昼寝会場もあるけど……」

 バカが要らん親切心を働かせてそう問いかければ……。

「う、うわああああああああああああああ!」

 ……キャパシティを超えてしまったらしい木星さんは、またもや気絶してしまったのだった!なんてこった!


 だが、今回は気絶したままにはしておかない。

「よし、起きろ」

 天城が、ぺちん、と木星さんに平手打ちを食らわせると、木星さんは目を覚ました。

「はっ!こ、ここは……あれ?」

「気絶したところから時間は経っておらんよ」

 またも天城が説明するのだが、木星さんは聞いているのかいないのか、きょろきょろと忙しなく目を動かして、逃げ道を探しているようだった。

「ああ、逃げようとしても無駄だ。我々は、決してお前を逃がさない」

 木星さんの視線の前に立ちはだかった天城は、ぎろり、と鋭い目で木星さんを見下ろした。

「……くだらない理由でデスゲームを開催し、多くの者を害してきたお前のことを、決して、許さない」


「な……な、何を、何を言っているんだ」

「何を、だと?言った通りのことだ。お前は愚かだった。やるべきではない行いに手を染めた。だから制裁を受ける。そういうことだ」

 天城がそう冷たく言い放てば、木星さんはいよいよきょどきょどと視線を動かして、バカの腕から逃げようとする。

 だがバカは木星さんを逃がさない。双子の乙女を2人同時に絞めあげた筋肉トライアングルは健在である。バカの筋肉はしっかり木星さんをホールドしているのだ!

「まあ、そういうわけで、あなたが一生懸命作ったデスゲームは、徹底的に破壊していくからよろしくね」

 逃げようとしていたらしい木星さんがきょろきょろする前に、たまがするりとやってきて木星さんを睨む。木星さんはぎょっとしてたまを見つめていたが、やがて……。

「お、お前、お前に、僕が何したっていうんだ?だ、だって、僕は何も、何もしていな……」

「とぼけないで」

 木星さんがしどろもどろに紡いだ言葉は、たまの鋭い声にばっさりと切り捨てられた。

「あなたが殺した人の中には、私の弟も居た。理由なんてそれで十分だよね?」

 たまの視線は、まったくブレない。猫めいた目が、只々鋭く木星さんを射すくめている。……そうして木星さんは。

「だ、だったら、な、なんだっていうんだ!?だからって、こんな、卑怯!卑怯だぞ!こんな風に、複数人で、1人を拘束して、それで、こんな……こんな風に、どうして、こんな滅茶苦茶に!滅茶苦茶にしやがって!」

 木星さんはそう喚いて、暴れた。

 的外れで、どこまでも自己中心的な言葉を喚き散らして、バカの筋肉をピクリとも動かせないのに、無意味に暴れている。

 ……それを見て、たまは激しすぎる怒り故か、表情を失う。

「……やっぱりこいつ、ここで殺していいかな」

 そしてそんなことを言うものだから、バカはぎょっとした!

「ダメだぞ、たま!」

「そうだったね。持って帰って工具にするんだったね……」

「うん!」

 そう。駄目である。ここで木星さんを殺してはいけない。……これだけで、終わらせていい訳が無いのだ。バカは改めて、そう思う。

 木星さんは何も反省していない。だからこれで終わらせてはいけない。『この先』が、彼には必要だ。

「こ、工具……?」

「そうだよ。お前は工具にされる。それで多少は、世のため人のためになることをすればいいさ」

 たまとの間に割って入るように陽がやってきてそう言えば、木星さんはぽかんとした。『工具』の意味が分かっていないのだろうが……。

「まあ……このお風呂用の水路もそうだけど、迷路の部屋の壁を壊すのにもあんた、使われてたわよ」

「後はそれぞれの部屋のドアぶっ壊すのに一々使われてたからよ。ほら、見えるか?」

 ……大広間を横切りつつほこほこ湯気を上げる水路も。明らかに『開いた』のではなく『破った』と分かるドアの数々も。それら1つ1つを見て、木星さんは『工具』の意味こそ理解できずとも、何が起きているのかは実感しつつあるようだった。


 そして。

「あ、そうだ。これから蟹もお前使ってやっつけるから!よろしくな!」

「は……?」

 バカが更に畳みかけたら、木星さんはいよいよ意味が分からなかったらしい。だが、『蟹、蟹……?』とぶつぶつ呟いて、そして、はっとした。

「ま、まさか……!?な、何故知っている!?そ、それを知っているなんて、おかしいだろう!?な、何故!?どうして!」

「まあ色々あったんだよぉ……。説明が難しいよぉ……」

『蟹』が最後の蟹ロボのことだと理解したらしい木星さんはいよいよ絶望を表情に浮かべる。

 彼が用意したものは全て、余すことなく徹底的に破壊される。それだけは何とか、理解できたらしい。

「そしてお前は天使の元へ召される。そして、人の法ではなく、天使の法によって裁かれるんだ」

 土屋の言葉も、木星さんに届いたようだ。『天使』と聞いた途端、木星さんは明らかに怯えて……ちら、と、バカを見上げた。

 なので。

「うん。俺、天使!」

 バカは笑顔で、そう教えてあげたのである!


「うわあああああああああああああ!」

 そして木星さんはまた気絶したのである!




「あっ、また気絶しちゃった!どうしよ、引っ叩いて起こした方がいいかぁ!?」

「いや、樺島君が引っ叩くとそいつの頭部が弾け飛びかねないからやめておこうか……ははは……」

 バカは『引っ叩くか!?』と構えていたのだが、陽にそっと止められたので、『そっか!』と手を下ろした。

「まあ……すっごくムカつく奴ね、こいつ」

「うん」

 ビーナスとたまは『なら私達が引っ叩こうか』と相談しているようであった。バカは『ビーナスのデコピンは痛いからなあ』と木星さんを案じつつ……天城と陽の方を見て相談した。

「で、もう蟹出していいかぁ?」

「……まあ、いいか」

「そうだね。もう出しちゃおうか。じゃあ、木星さんは俺が『無敵時間』で工具にしておくよ」

 そうして木星さんはまたも工具と化し、バカはそんな木星さんを元気にぶんぶんと素振りした。たまとビーナスは『これを見ていたら引っ叩くとかそういうのはもうどうでもよくなってきた』とばかりににっこり笑顔になった!




「じゃ、いくぞー!」

 さて。

 いよいよ準備は万端。木星さんにはまだまだ反省してもらいたいことだらけだが……ひとまず、蟹だ。

 バカは勢いよく床を蹴って跳ぶと……天井目掛けて、木星さんを振り抜いたのである!


現在、『もちもち物質が書くものについてのアンケート』を実施中です。詳しくは活動報告をご覧ください。また、母数が多い方がありがたいので、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
蟹出すのはいいんだけどさ、誰の魂も無いから動かないのでは??戦闘するまでもなく、ただの作業になりそう
[バカは勢いよく床を蹴って跳ぶと……天井目掛けて、木星さんを振り抜いたのである!] こんな文を読む日が来ると思わなかった 意味がわからない
[一言] 気絶を繰り返して断続的に工具にするだの拘束するだの天使の法で裁くとか言われたら大変な恐怖でしょうね。 因果応報ですが!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ