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1日目昼:鍋パ会場

 ……ということで、バカ達は『チキチキ!羊の闇鍋チキンレース!』の部屋へとやってきた。

 バカはうっかりものなので、うっかりドアを木星さんハンマーで開けてしまった。開けてしまってから海斗に、『今、ああする必要はあったか……?今は1日目の昼なのだから、あのドアは普通に開いたんじゃないか……?』と教えてもらって衝撃を受けた!そう!ドアって本来、破るものではなく開くものなのである!


 ドアがまた1枚犠牲になり、双子の乙女と牡牛の悪魔が遠い目をしている横で、バカは元気に突き進む。

 そして。

「羊ー!」

 やっぱりそこにいっぱい居た羊の群れへ、バカは意気揚々と突撃していったのだった!




「ふわふわ……ああ、これだよなぁー……えへへ……」

「ふわふわだね。かわいい」

「わあ、ふわふわ……ふふふ、確かに元気が出ますね!」

 さて。

 そうして、バカとたまとミナが羊に埋もれることになった。

 他のメンバーは埋もれる気は無いらしいが、それでもそれぞれに羊をつついたり触ったり眺めたりして楽しんでいた。

 ビーナスが『ちゃんと洗われてるみたいね。なんかいい匂いするし……』とぼやけば、ヒバナが、すん、とやって『……お好み焼きの匂いするぞこいつ』と不思議そうな顔をした。

『羊って本来、こんなにふわふわの毛なんだっけ……』と陽がぼやけば、『……こいつらが羊に見える羊ではない生き物だったとしても私は驚かんが』というようなことを天城がぼやく。

 そして『牧歌的だなあ。ここが悪魔のデスゲーム会場だということを忘れてしまいそうだ』と土屋が笑えば、『いよいよ訳が分からない……分からないのは僕がおかしいのか?おかしいのはあのバカだよな……?』と海斗が頭を抱えた。

 双子の乙女と牡牛の悪魔は、この部屋に入るのが初めてだったらしく、『おお』となんとなく嬉しそうに部屋の中を見回し、そして羊に挨拶していた。……案外、本当にこれらは羊じゃなくて悪魔の同僚だったりするのだろうか……。




 それからバカ達は中央ステージで『ルール説明!』を読んだ。天城は渋い顔をしていたし、海斗は『毒物を喫食するチキンレースだと!?冗談じゃない!』と慌てていたのだが、バカは満面の笑みで『俺、牧羊犬やるから大丈夫!』と胸を張った。

 そして宣言通り、バカはまた牧羊犬になった。

 ……すっかり牧羊犬になるのに慣れたバカは、今までで一番上手く羊をまとめ上げることに成功した。

 即ち。

「せいれーつ!」

 バカが勢いよく号令をかけると、羊達はまごまごメエメエしながらも、おろ、おろ、とその場にとどまる。

「一列に並べー!」

 バカがまた号令をかけると、羊達はメエメエ鳴きながら、まごまご、おろおろ、と動き……。

「……一列に並んじゃった」

 羊達がずらり、と一列に並んだのであった!


「わあ、かわいい……」

「可愛いで済ませていいのか!?明らかに普通の羊の挙動じゃないだろう、これは!」

「ああもう……かわいいで済ませましょうよ。じゃなきゃ気が狂いそうだわ……はあ」

 海斗はまた頭を抱えていたが、諦めたらしいビーナスや受け入れたらしいミナに促されて、羊の食材カードを仕分ける作業に入ることになったのだった!




 バカ以外の皆は概ね2人1組になって、羊達を待ち受ける。バカは羊達を1頭ずつ、『はい!海斗のとこ空いたからお前はあっち行くんだぞ!あっ、お前は土屋のおっさんの方な!』と羊を振り分けていった。……さながら、フォーク並びをしている客をレジへ誘導していく店員のようである。

 レジもとい食材チェックのエリアはそれぞれ、天城とヒバナ、たまとビーナス、陽と海斗、という3チームだ。この3チームはそれぞれに『毒物を弾く』係である。

 そして、土屋と双子の乙女と牡牛の悪魔が、レジを通過した羊達をミナのところへ並べていく。

 ミナは『一番料理が上手そう』という皆の期待を背負って、真剣に羊達の食材カードをメモしながら、『やっぱり豚バラしゃぶしゃぶ用薄切り800は多いかしら……でも、これだけいっぱい居るもの、食べきれるんじゃないかしら……』と楽し気だ。

 ということで、案外楽しく、皆で作業することができた。尤も、海斗は相変わらずちょっと頭を抱えていたし、誰よりも何よりも、双子の乙女と牡牛の悪魔が、頭を抱えていたが。

 彼らは悪魔だというのに、何故、こんなことをしているのだろうか!まあバカが思いついちゃったからなのだが!




 そうして皆で協力して鍋の準備が整った。

 だが。

「あっ!樺島さん!その羊さんのお荷物を取り上げてください!」

「えっ!?えっ!?こうか!?」

 ……今回は、何とも不思議な命令が下った。バカがミナの言う通りにすると、その荷物……ボウルに入ったトマトピューレらしいものを運んできた羊は、めえ、と何とも不服そうな顔をしたが、バカが『ごめんなぁ……』と謝ると、納得したのか、めえ、と鳴いて戻っていった。

「あと、次のもお願いします!コンソメキューブ4つです!」

「うん!これも回収!」

 ……ということで、羊が具材を鍋に投入する前に、バカはミナの言いつけ通りにいくつかの食材を羊から取り上げて、脇に置いた。

「うーむ?ミナさん、これは一体……?」

「味変です」

「あじへん」

 土屋が問いかければ、ミナは嬉しそうに頷いた。

「たっぷりお鍋を作るのですから、折角ならお味も2種類楽しめるといいな、と思いまして。途中までは水炊きで頂いて、途中からトマトを入れて洋風トマト鍋にしましょう!」

 ……ミナは、すっかりうきうきしている。お料理が本当に好きなのだろう。

「トマト鍋!いいなあ!楽しみだなあ!」

 バカもすっかりうきうきしている。食べることが本当に大好きなので!

「羊から食材を取り上げる……ええと、これ、いいのかな」

「羊さんはちょっと困ってたね。でもいいんじゃないかな。ちょっと困る羊さん、かわいいし」

 ……ということで、まあ、無事に食材が投入されて、鍋には蓋がされたのだった!


 さて。続いて問題になるのは、椅子である。

「あっ!よく見たら椅子が足りねえ!」

 そう。バカ達は着席しているが、悪魔3人の椅子が無いのだ!

「そうよ。最大9人しか参加する想定じゃないもの……」

 椅子が足りない!どうやらこのゲーム、1つのゲームに9人までしか参加する想定じゃないようだ!

「10人じゃないんだ」

「ということはやっぱり、木星さんは天城さんを殺す計画だった、っていうことだろうね」

 木星さんが天城を殺す予定じゃなかったなら、もうちょっと椅子があったのに!バカはまたちょっぴり腹が立った!

「いいやぁ、向こうの部屋に多分椅子、あるだろ。ちょっと取ってくる!」

「ま、待て、天使よ!解毒室への扉は鍵が……ああああああ」

 仕方が無いので、バカは出口のドアを木星ハンマーでバキイ!と破って、その奥から椅子を3つ抱えて戻ってきた!

「ほら!これでお前らも座れるよな!」

「うん……」

「私達も、参加するのね……」

「鍋か……。久しぶりだな……」

 ということで、3人の悪魔も無事に着席できた!尚、人間達の椅子から出てきた拘束具は、バカによってさっさと破壊された!これを破壊しても特に問題が無いことは、既にバカが実証済みである!


 そうして全員が着席したところで、鍋の蓋が開く!

「うわあー!うまそー!」

 そこにあったのは、様々な食材をたっぷりと煮込んだ水炊きであった。

「つくねに白菜、水菜、人参の飾り切り、春キャベツ、しいたけ、お豆腐……豚バラ薄切りしゃぶしゃぶ用、薄切りの大根、牛ロース薄切り、鶏もも肉……とにかく色々入れてみました!」

 ミナの宣言通り、そこには多種多様な具材がくつくつと煮えていた。とてもおいしそうである!

「入れすぎて多くなっちゃいました!どうしましょう!」

 そして、分量も多めである!ミナが『あわわわわわわわわ』となるくらいには、多めである!

「うん、まあ、そうよね。お鍋って、ちょっとずつ色々な具材入れようとすると増えちゃうわよね……」

「いっぱい食える!嬉しい!いただきまーす!」

 だが、バカにとって分量が多いことは嬉しいポイントでしかない。早速、自分のとんすいにわしわしと鍋をよそって、バカは元気に食べ始める。

 それぞれのテーブルにはポン酢とゴマだれ、それに塩やこしょうといった調味料が用意されているため、各自、好きな調味料でそれらを味わうことになる。バカは、『最初はポン酢かなあ!』とにこにこしながらあっさりさっぱりと水炊きを楽しみ始めた。他の皆も、最初は戸惑っていたものの、その内『まあ、鍋だしな……』と諦めたのか、それぞれによそって食べ始めた。

 ……悪魔3人も、ミナに『どうぞ!』とやられて、諦めて、食べ始めた。……ちょっと嬉しそうである!それはそうだ!ミナが作ったお鍋は美味しいのだ!




 そうして皆で鍋を囲んで、何とも楽しい時間を過ごした。

 ミナは楽しそうだったし、他の面々も、『デスゲームじゃない気がするけどまあいいか』となってしまったようで、すっかり鍋を楽しんでいる。

 何せ、鍋が美味しいのだ!昆布と鰹の出汁の効いた味わいに、肉や野菜の旨味が溶け込んで、それらをさっぱりと薫り高いポン酢や、まろやかにコクのあるゴマだれがまとめ上げる。

 この味わいにはバカのみならず、全員が……悪魔も、すっかり夢中である!

 そんな楽しい鍋パ中なので、話もちょくちょく盛り上がった。

 まずは軽いところから、ということで、『好きなアイスは?』とか『皆は犬派?猫派?』とかそういう質問をしていたのだが、その内、『ところで陽とたまっていつから付き合ってるの?』とか、『ヒバナってビーナスさんと付き合ってるんだよね。いつから?』とか、そういう話になってきた!

 ついでに、『おい樺島。テメェの職場どこにあんだよ』とか『樺島さん、コンバインの免許が天使用に別であるということは、お空の上のお米があるっていうことですよね!?どういうお米なんですか!?』とか『樺島君には色々と聞きたいことがあるのだが……ううむ、その肉体は天使だからこそのものかな?』とか、そういう質問も来た!

 バカはそれぞれに『俺の職場、北埼玉上空!出張で地上に来た時には絶対にミニストップ寄るんだ!』とか、『雲の上の米は……えーと、なんか、地上の米より軽い!』とか、『鍛えた!』とか、そういう返答をしつつ、元気に鍋を食べ続けた。

 皆が話すようになると、次第に場も盛り上がってくる。

 ……ヒバナとビーナスも、ミナと少し打ち解けたようだった。ミナは時折思い出して複雑そうな顔をしていたが、それ以上に、何も知らないヒバナとビーナスとの会話が楽しかったのかもしれない。

 まあ、とにかく会話も鍋も進み……そして。


「さあ、そろそろトマトピューレを入れてトマト鍋にしましょう!コンソメも入れてしまいますね!あとチーズとパセリも入れてしまいます!あ、パセリは100gも入れると多いので調整しますよ樺島さん」

 いよいよトマト鍋のタイミングがやってきた!バカは『ここから更に変わるのかあ!』とにこにこわくわくである。

 ……だが。

「あっ、でも、少しタイミングを見誤ってしまいました……。もう少し早めにトマト鍋に移行した方がよかったですね……ううん、ちょっと具材が減りすぎました……」

 ミナは、ちょっぴりしょんぼりしている。

 そう。皆の鍋が進みすぎたせいで、ちょっと、鍋の中の具材が少ないのである!

「ごめぇん、俺、食べ過ぎたかも……」

「い、いえ、私がタイミングを見誤ってしまっただけのことなので……」

 ミナが申し訳なさそうなのもそうだが、それ以上に、バカはトマト鍋が減ってしまったのが気になる!

 ということで、バカは考えて、考えて……。


「あっ!じゃあ、お魚足そうぜ!お魚!」

「へ?」

「ピラフみたいなの、持ってくる!」

「あの、ピラフはお米であって、お魚じゃありませんよ……?」

 ……なんと!具材の追加を思いついてしまったのだった!


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― 新着の感想 ―
…………ねぇ、よそうの5回のルール生きてるの?これ??生きてないよね………… そして、ヒバナとビーナス本当に入社するの?いや、まぁ、空の上だから安全なんだけどさぁ、なんだけどさぁ!!!
お鍋食べてシメにミニストップのソフトクリーム(特盛りバニラ)食べたい……!!!
[良い点] |デスゲーム《鍋パーティー》 [気になる点] これ本来なら宣言して食べる量決めていたと思うんですけど、好き勝手に食べて出歩いてしまえる現状、残ってしまった場合誰が食べる事になるんでしょう?…
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