最後の希望
読んでいただけるとありがたいです。
真優の目の前にはメフィストが現れた。
「ワープ!」
「中々上手く行ったものだな」
メフィストは真優を蹴り飛ばした。 真優は勢い良く地面を転がった。
「う……」
真優は自分の腹部を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
「骨が折れてしまったかな? 随分ともろいものだな」
メフィストはそう言って真優に歩み寄っていく。
「まだ……戦える!」
真優はメフィストに手を向けた。 次の瞬間にメフィストを囲うようにして再び半透明の膜が出来上がった。
「やれやれ」
メフィストはそう呟くと衝撃波でいとも簡単に真優の作り出した膜を破った。
メフィストが外に出たあとに膜は再生を始め、元に戻った。
「出した技が消えないと言っても最初から出す技が弱ければ意味が無いぞ?」
メフィストは再び真優を蹴り飛ばした。 真優は木に叩きつけられた。
「何かにぶつかったな。 そこにやはり何かあるようだ」
メフィストはそう呟くと手を倒れている真優の方へ向けた。
「まだ……だ……」
真優はふらつきながらもゆっくりと立ち上がった。 その姿を見てメフィストはため息をつくと一瞬の内に真優の目の前に移動し、真優の肩辺りを持って少し持ち上げると真優の腹部に膝蹴りを叩き込んだ。
「げぼっ!」
真優の口から嘔吐物と血が流れ出た。 メフィストが手を離すと真優は地面に崩れ落ち、メフィストは真優の体を踏みつけた。
「ミカエル達ならともかく……。 お前などが「七つの美徳」を使ったところで俺を止めれるとでも思ったのか?」
メフィストはそう言うと真優を踏みつけている足に体重をかけていく。
「ああああああああ!!!」
骨が軋む様な音と共に真優の叫び声が響き渡るがメフィストは顔色一つ変えずに足をどけると真優の右腕を踏みつけ、真優の腕は本来曲がるはずのないような方向へ折れ曲がった。 より一層大きな苦しみの声が響き渡る。
「メフィストよ。 増援が来る前にそいつを片付けた方が良いのではないか?」
「増援等どうせ大した奴は来ないだろう。 それよりもこいつにこの防護膜を解いてもらおう。
魔神族が繁栄してこの場所に暮らす日も来るかも知れないからな」
ペルセポネの問いにメフィストはそう答えると再び真優の体に足を乗せた。
「さて。 話は聞いていたか? この防護膜を解け」
「こと……わる!」
「ほう……」
メフィストは真優の肩に足を移動させるといとも簡単に真優の肩の骨を踏み砕いた。
「ああああ!!!」
「痛いか? いやなら防護膜を解け。 今後我々魔神族の邪魔にならないように」
「こ……と……わる!」
「強情な奴だな」
メフィストは既に折れた肩にぐりぐりと足を押し付ける。真優は再び絶叫するがメフィストはつまらなそうに足を押し付けるだけである。
「次はもう片方の腕だな」
メフィストは真優の左腕に足を乗せた。
「真優……!」
弘行は拳を握りしめた。 その弘行の後ろで大輝はゆっくりと剣を抜いた。
「結菜様! 私は行きます! これ以上は見ていられない!」
「待って大輝君!! 貴方が行ってしまっては例の作戦でメフィストを仕留められる人がいなくなる!」
「女神族がもう一度魔神族を入れなくする結界を作り直して、結界内にいる魔神族が結界の力で弱ったところを倒す。 そうは言ってもその結界が出来上がるのがいつになるか分からない!
それにメフィストの攻撃力を考えるとこの森の一番離れた所に女神族がいると言っても決して安全ではない! 結界が出来上がるまでに攻撃されたら終わりです!!」
「でもそれが私達に残された最後の勝つ方法よ!
さっき感知して見たけど……もう……ゼウスの魔力は感じれなかった……」
結菜の目から涙が流れ落ちた。
「ミカエル君も……翔一君も!! 城から学校に向かった人は誰一人として……生きていないの!!」
結菜は泣き叫ぶ様に大輝に言った。
「結菜様……」
「真優ちゃんには本当に申し訳無いと思ってる!!
でも……勝つ方法はもう結界が出来上がるのを待って大輝君が中心となりメフィストを倒すしかないの!!」
結菜はそう叫び、大輝の目を見つめて息を切らしている。
大輝はぐっと剣を握りしめた。
「私は……無力すぎる……。 そんな方法でしかあやつに勝てないとは……」
「…………私もよ。 大輝君」
結菜はそう小さく呟いた。
「ぐ……あ……」
「叫ぶ気力も無くなったか」
メフィストはため息混じりにそう呟くと真優の左胸に足を乗せた。
「これで最後だ。 あの防護膜を解除しろ」
メフィストは真優を見下ろしてそう言うと、真優は笑みを浮かべた。
「や……だ……ね……」
「残念だ」
メフィストは衝撃を与えるように真優の左胸を踏みつけた。
次の瞬間真優の体は全ての力が抜けた様に地面に横たわった。
「真優……?」
弘行は真優から叫び声が聞こえなくなったのに疑問を感じ、真優の方を見つめた。
かろうじてメフィストが真優の体を踏みつけているのが見える。
「真優……ちゃん……」
結菜は顔を押さえて地面に膝を着いた。
「まさか……!」
弘行は再び真優の方を見つめた。 メフィストは真優の張った防護膜越しにペルセポネの何か会話をしている。
真優に立ち上がりそうな気配は無く、真優はピクリとも動かなかった。
「あの野郎!!!」
「待て弘行!」
「離せアポロン!! 今すぐあいつを殺してやる!!」
弘行はアポロンの羽交い締めを無理矢理脱出しようと暴れている。
「落ち着け!! 今行っても殺される!」
「だからってこのままじっとしてられるか!」
弘行が叫ぶようにそう言うと大輝が弘行の横に立ち、弘行の前に剣を出した。
「先に死ぬなら私だ」
「大輝様……」
「だから今は待て……。 待つんだ」
大輝がそう言うと弘行は拳を握りしめて頷いた。 アポロンがゆっくりと弘行を離すと弘行はメフィストを睨み付けた。
「まだかよ……結界は!」
弘行はじっとメフィストを睨み付けているとメフィストはゆっくりとこちらに手を向けた。
「また来るぞ! もう一度回避を……」
「いや……この方向は……」
大輝の顔には絶望の色がありありと浮かんでいる。 弘行は首をかしげたが直ぐに理解した。
「女神族が……準備している方向……」
弘行が呟いた時にはメフィストは既に技を発動する瞬間だった。
「竜神王衝撃」
メフィストの呟きと同時に衝撃波が放たれた。
「くっそーー!!」
自分にはとても防げない攻撃に弘行は自分の無力さに思わず叫んだがメフィストの放った衝撃波は弘行達にとどくことはなかった。
「えっ……?」
「何が……起こった?」
弘行がメフィストの方に目を向けるとそこには自分達に背を向けて立っている一人の人物がいた。
「あれは……!」
瞬間弘行の顔に希望の色が浮かんだ。 反対にメフィストは険しい表情である。
「生きていたか……。 遊真」
メフィストは遊真を睨み付けながらそう呟いた。 遊真は何事もなかった様に真優に歩みより、地面に膝を着いた。
「ベルゼブブを殺してここに来たということか……。
まさか同じ条件でお前にベルゼブブが殺られるとは……」
メフィストの言葉もまるで聞こえていないのか遊真は真優の体を抱き寄せると優しく真優の頭を撫でた。
「ごめんな……真優……。 本当に……遅くなった」
遊真は真優の体の傷を全て治すと真優の体を抱きしめた。
「もう……大丈夫だからな」
遊真はそう呟くと真優を抱きかかえて立ち上がった。 すると森の中から弘行が現れた。
「遊真!」
「弘行。 真優を頼む」
「あぁ……分かった」
弘行は真優を遊真から丁重に受けとると大輝たちの元に戻っていった。
「死人の傷を治して何になる?
それよりもそこにある森は本当に我々魔神族からは見えないようだ。
今の男も不思議と消えていった」
「次に消えるのはお前だ」
「なに?」
次の瞬間にメフィストは殴り飛ばされていた。 メフィストは地面を転がりながら体勢を整えて立ち上がった。
メフィストは前を見るとそこには遊真はおらず、背中に衝撃を受けて地面に叩きつけられた。 遊真がメフィストの背後に回り込んでメフィストを蹴り飛ばしたのである。
(何だ……? この違和感は……?)
メフィストは遊真から距離をとろうと後ろに跳んだ。 しかし遊真は既にメフィストの背後に回り込んでいた。
「ちっ!」
メフィストは舌打ちをし、遊真に拳を突き出した。 しかし遊真は一瞬の内にメフィストの拳よりも速くメフィストを蹴り飛ばした。
「お前は……絶対に許さない」
遊真は無表情でメフィストに歩み寄っていく。
「許さない……か。 許す許さないで俺の生死が変わるのか!?」
メフィストはそう言いながら様々な槍を周りに作り出した。
「貫け!」
メフィストの掛け声と呼応するかの様にメフィストの周りの槍が遊真に襲いかかった。
「黙れ……」
遊真がそう呟いた瞬間には拳を振り上げた遊真がメフィストの目の前に移動していた。
遊真の拳がメフィストの腹部に叩き込まれ、メフィストは殴り飛ばされた。
「お前はもう喋るな……!」
遊真はそう呟いてメフィストに再び歩み寄っていく。 先程放たれた槍は既に消滅していた。
「レノーラの絆魔力は使わないのか……? それとももう切れてしまったかな?」
「お前程度俺の力だけで十分だ」
遊真は即答するとメフィストは不機嫌そうに遊真を睨み付けた。
「ほう……。 なら証明してみせろ!」
メフィストは再び周りに複数の様々な槍を作り出した。 そして遊真目掛けて放った。
遊真は避けること無くそのまま直進する。 しかしメフィストの槍は遊真の体を貫くこと無く、遊真の体に当たって砕け散った。
「なっ……!?」
「証明? 言われなくても殺ってやるよ」
遊真の拳が再びメフィストを殴り飛ばした。
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最終話まで書き終えたのですが更新日は決めておりません。
水曜日と来週の日曜日に投稿しようかなぁ……




