再会
読んでいただけるとありがたいです。
《遊真。 どうかした?》
「ん……いや、別に。 それより俺にもそれは出来るのか?」
《頭もしくは心の中で話すだけよ。 今は私が貴方の精神に触れている状態だから》
遊真は目を閉じて心の中でレノーラに語りかける様に言葉を思い浮かべた。
《聞こえる?》
《聞こえるわ。 慣れてくると相手の感情も分かるようになるわ》
《だからさっき俺に聞いたのか?》
《貴方の心が不安に捕われていたからね。 お姉ちゃんが心配?》
遊真は自分の横に座っているゼウスをちらりと見た。
《いつもよりまだ元気が無いなぁ と思ってさ》
《ゼウスには「膨大な魔力」があるからね。 遊真も知ってるとは思うけど私達は三つの力を持っている。
体力、精神力、そしてこの二つを組み合わせた魔力。
私達は体力と精神力を消耗して技として体外に魔力を放出する。 だから技を使うと体力、精神力を消耗する。 魔力の量が多いという事は体力量が多く、精神的に疲れにくいという事よ》
《だからそれを全て使いきってしまえば回復スピードが同じならば回復までに時間がかかると……》
《そういう事になるわね。 遊真の体力を分け与えるのも一つの方法だけどそれは応急措置に過ぎないわ》
待つのが一番か……》
遊真はそう心の中でレノーラに言うとそのまま寝転がった。 空には雲一つ無く、太陽が輝いている。
「そう言えばまだ向こうは戦闘中なんですか?」
ミカエルがゼウスにそう問いかけた。 ゼウスは頷くと口を開いた。
「えぇ。 まだ魔神族が撤退していないのなら戦闘が続いているわ。 だから私達もすぐに戦闘に参戦しなくてはならないかも……」
「ゼウス様がこちらに来る前はどちらが優勢だったんですか?」
「一応私達が優勢だったわ。 それほど強い魔神族がいなくて悪魔族が中心ですから。 大天使の二人が中心となって戦っているわ」
その話を聞いてミカエルは少しほっとした様子だった。
(大天使の二人がどうなってるか心配だったんだろうな。 まああの二人が悪魔族程度に殺られるはずはないし)
遊真がそう思うとレノーラが心に話かけてきた。
《大陸が見え始めたわ》
遊真がその言葉を聞いて前を見るとレノーラのいう通り うっすらと大地が見え始めていた。
《もう少しだな》
《それにしてもこれほど長く人を乗せて飛んだのは初めてだわ。 随分と疲れちゃった》
《向こうに着いたらゆっくり休んで。 戦争は俺たちだけで十分終わる。
まぁ……その……》
《メフィストが来なければね……でしょ?》
そう言ってレノーラは少しずつ高度を落とし始めた。 段々と雲が遠ざかり、海と大陸が近づいてくる。
《レノーラ、竜神の姿のまま俺たちの仲間に近づくと敵と思われるかもしれない。 人型になってから近づいた方がいいかも》
《貴方達が先に降りて説明してくれた方が楽だと思うわ。 それに向こうには私達がいた街よりも結界が強力なはず。 私とメイが弾かれる可能性がある》
《小さい時に結界は 悪い魔力 の侵入を拒むって聞いたけどな》
《それに貴方達がいた方が士気が上がる。 戦闘を早く終わらしたいなら貴方の「想像世界」が一番速い》
《わかった》
そう言って遊真は翔一達にレノーラの考えを説明するとミカエルは大輝達 指揮官の元へ。 遊真と翔一達は戦場へ向かう事にした。
「じゃあ姉ちゃんを頼む、ウリエル」
「私も降りちゃ駄目なの?」
ゼウスは少し不満そうにしている。
「姉ちゃんまだ体力が戻りきってないだろ」
「遊真だって」
「まぁそれはそうだけど万が一攻撃が飛んできたらメイを守らなきゃダメだろ」
「……分かったわよ。 後でレノーラと一緒に行く」
そう言ってゼウスはウリエルを見るとウリエルは笑顔をうかべた。
「私がしっかりお守りしますよ♪」
「お願いね。 ウリエル」
ゼウスは笑いながらウリエルの頭を撫でた。
《遊真、着いたわ》
レノーラがそう言うと遊真立ち上がり、つられる様にして翔一とミカエルも立ち上がった。
「俺は城に向かって飛び降りるぞ」
「じゃあ僕らは……」
翔一先程から爆発音や雷の様な光が見える場所を指さした。
「あそこに向かって瞬間移動しよう」
「了解!」
そうしてレノーラが街の結界の上空に来た時、ミカエルが飛び降り、遊真は翔一の肩に手を置き、翔一と遊真は瞬間移動した。
「身体強化」
ミカエルがそう呟くとミカエルの体は光に包まれた。 ミカエルはそのまま落下し、地面に着地した。 すぐにざわざわと人が集まってきた。
「誰だ!?」
人類の男性が声を張り上げ、既に攻撃体勢をとっている。
「妖精王ミカエルだ。 人類王大輝様はどこにいる?」
ミカエルは自分の顔を相手に見せる様にして言った。 しかしまだ男は疑っている様だった。 戦場に行っていないという事は戦力にならないという事であり、よってこの男は幹部の様な者では無い為ミカエルとは認識が無いのである。
「どうした?」
城の方から一人の若い男性が駆け寄ってきた。
「一哉さん!」
ミカエルは手を振った。 駆け寄ってきた男性は人類二位の一哉という男であった。 当然ミカエルとは何度もあっている。
「ミカエル殿! お戻りになられたのか!」
「たった今ね。 大輝様はどこにいる? 伝えたい事があるんだ」
「大輝様ならいつもの王の会談で使われる部屋にいらっしゃる。 それより外でミカエル殿の騒ぎの他に上空に凄まじい魔力を感じて出てきたのだ。 魔神族では無い様な魔力なのだが……」
そう言って一哉は上空を見上げた。
「その話を伝えに来たんだ。 一哉さんはこの辺の人に伝えてくれないかな? 上空にいるデカイ奴は敵じゃないって」
「あれに乗ってこられたのか?」
「うん。 それとゼウス様とウリエルも乗ってる。 遊真と翔一は先に戦場に向かった」
「了解だ。 この辺りの住民は私に任せてくれ」
ミカエルは一哉に任せて城に向かった。
瞬きをすると目の前には人類や妖精族が魔神族に攻撃を仕掛けているところだった。 攻撃を受けて魔神族が倒れた。 流石みんな最前線にいるだけの実力者である。
「遊真様」
すぐに遊真と翔一に気づくと一人の女神族が駆け寄ってきた。
「ご無事で何よりです。 ゼウス様は?」
「えっと……どう言えばいいかな……」
遊真は翔一に助けを求める様に視線を向けると
「僕達は今上空にいる竜神に乗って戻って来ました。 ただ竜神を初めて見た人は敵と勘違いするかも知れない。 その誤解をさせない様に僕達はここに来ました。 そしてゼウス様は万が一 竜神が攻撃を受けた時に攻撃を防げるようにまだ上空にいます」
と説明した。
「分かりました。 直ちに誤解を防ぐ為に情報を流します」
そう言って女神族は去ろうとしたが遊真は呼び止めた。
「セレスさん。 俺たちはどこかの救援に行けませんかね?」
「ただいま各自がバラバラで戦闘を行っております。 そうやって悪魔族は倒し、魔神族はチームもしくは女神族が戦うといった形になっておりますので 片っ端から敵を倒して貰えれば」
「随分と指揮系統が混乱してますね」
「今日 結界が弱まり街に悪魔族が侵入してしまい その悪魔族を倒してもまた次々と入って来るので……。 正直数で少し押されている状況ですが魔神族が残り少ないので魔神族を全滅出来れば兵力を回せるので時間の問題かと」
「なるほどね……。 じゃあ時間をかけない方がいいよな」
遊真はそう言って走り始めた。 追いかける様にして翔一も走り始めた。 セレスの言う通り回りで一対一の戦闘が行われている。
「ささっと行くか!」
「無茶はしないでよ!」
遊真はペンダントに触れ、翔一はブレスレットに触れた。
遊真のペンダントが輝きを放ち始め、翔一の体が光に包まれ、真紅の羽毛を纏った。
遊真達は悪魔族を一撃で倒していき、傷ついた人類を手当てした。
そうして奥に行くにつれて段々と魔神族と天使族、女神族が増えてきた。
遊真はラファエルが魔神族の腹部を貫いているところを見つけ、駆け寄った。
「遊真! 戻ったのか。 ミカエルとウリエルは?」
「ウリエルはまだ上空で待機中って感じで……ミカエルは大輝様の所へ」
「そうか。 なんにせよ来てくれて助かる。 君が来てくれて他のみんなも勇気づけられる」
「士気が上がってくれるならこっちが勢いに乗れますね」
そう言って遊真は他の魔神族に向かって行った。
「貴様!」
魔神族と目が合い魔神族が拳を振り上げた。 目に憎悪の色が見えるのは遊真が魔神王を倒した事を知っているのであろう。
「絶対死領域」
遊真がそう呟くと魔神族はそのまま拳を振り上げたまま地面に崩れ落ちた。
(あと何体いるんだ……)
遊真は回りを見渡した。 あと十人程魔神族がおり、二体の魔神族の体が翔一の放った炎に包まれ地面に倒れた。
(あと八体か……)
遊真は魔神族の気を引くようにしてその隙を他のみんなで突く様に動いた。 翔一も魔神族を次々と倒していき、魔神族を全滅させた。
「ここは終わりだな。 今連絡が入ったが他の所も撤退を始めた様だ」
ラファエルがそう言って遊真は「想像世界」を終え、翔一は「絆魔力」を終了させた。
「ずっとこんな感じなんですか?」
「向こうが攻めてきて撃退して……その繰り返しだ。 ただ魔神族の方が一回の戦闘で死ぬ数が多い。 向こうはじり貧だ」
「じゃあとりあえず今日は終わりですね」
遊真はラファエル達と街へ戻った。
街へ着き、城の中庭を見るとレノーラが人型に姿を変えており、ウリエルがガブリエルに抱きついていた。 ミカエルも隣にいる。
「遊真! 翔一!」
「ガブリエル様、お久しぶりです」
「ミカエルもウリエルも無事だし、みんな大丈夫そうね。 少しゼウス様がお疲れの様だけど……」
「姉ちゃんは?」
「大輝様にゼウス様を呼んできてくれって言われて……。 それを伝えてゼウス様が大輝様の所へ行って……まだ戻って来てない」
「何かトラブルかな?」
翔一が首をかしげると城の中から声が近づいてくるのが分かった。
声は男性の声と女性の声……そしてもう一人女性がいる様だった。
扉が開き、そこには大輝とゼウス、そしてもう一人黒髪の長髪の美しい女性の姿があった。 ゆっくりとこちらに話ながら歩いてくる。 何やら少し揉めている様である
(…………?)
遊真は不思議な感覚に捕らわれた。
「何故ですか!?」
「だから疲れたの」
大輝の問いに女性はため息まじりに答えた。
「らしくないよ」
ゼウスが女性をなだめる様に言った。 どうやらゼウスより歳上な様だ。
「まぁ気分転換にね。 もう魔神族は撤退したんでしょ?」
「それはそうですが……」
大輝は困り果てている様子だった。 そこで大輝は翔一達に気づくと駆け寄ってきた。
「翔一! みんなも無事だったか!」
「ただいま戻りました大輝様」
そう言って翔一は頭を下げた。
「して……あの女性は?」
翔一は首をかしげた。 ウリエルも知らないらしくミカエルの方を見るがミカエルは首を横に振った。 ラファエルとガブリエルも知らない様だった。
「遊真は……って知らないよね?」
「…………」
「……遊真?」
(またこの感覚だ……。 初めて会った気がしない……)
女性は全員を見渡した後、遊真を見つめて微笑んだ。
「大きくなったね。 遊真」
その一言で遊真は確信した。 理屈で考えたのではない。本能的に、微かな記憶がそう思わせたのである。
遊真は考えるよる先に口から言葉が出ていた。
「母さん……?」
非常に更新が遅れてしまい大変申し訳ありません。
m(._.)m
テストが終わり次第書こうとしていたのですがスマートフォンの調子が悪くなり、プラウザが開かなくなる等のトラブルがありまして更新出来ませんでした。
その分先の展開が大分固まりましたので今までよりは伏線の様な物が張れそうです。
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