side勇者 vol1
勇者編スタートです。
「さ、サトル様?」
「何だ?」
「あのー、負けちゃいましたけど、そんなにへこむ必要はないかなーって…」
「僕が、負けた?」
「ひぃっ」
何を言ってるんだ?この女は。僕はグール最強の勇者だぞ?そんな僕が通りすがりの一般冒険者如きに負けるはずがない。これぐらいはあの小さい脳みそでも理解できると思うのだが…
「サトル様、きっとあれは何かの間違いです。恐らく不正をしていたに違いありません」
「不正はしていたのだろう。だが、僕は断じて負けていない!あれは…そうだ、負けてあげたんだ!」
「そ、そうですね…」
そうだろうそうだろう!あまりの事に理解が追い付かなかったが、そういうことか!僕の優しい性格ゆえに、無意識下で手加減をしてあげていたということだ。なんだ、簡単なことじゃないか。向こうだって、僕を馬鹿にした挙句返り討ちでは後味が悪いだろうし、何より大恥をかくことになるだろう。僕は、そうなってしまわないように配慮したのだ。相手のことも考えて行動ができる、実に勇者らしい振舞だと思わないか?
「よし、僕は負けたわけじゃない。いいな?」
「う、うん」
「そうですね…サトル様は心優しいお方ですからね…」
そうだろう、やっとわかったか!
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そして数日後、選考会合格者の招集が行われた。もちろん、勇者の僕は合格している。
「サトル様、あの時の冒険者はいないよ?」
「もしかして、落選したのか?」
考えてみれば、当たり前のことだろう。僕に手加減を強いるほどの実力のアイツが、選考会なんて合格するはずがないだろう。あんな奴が合格してしまったら、戦死者数が一人増えかねないからな、審査員は優秀だ。
「そりゃあそうだろう!僕に手加減を強いる相手だぞ?」
「それはそうか!」
「そうですね、戦場に出れば何が起きるかわかりませんからね」
今回の総指揮官らしき人が前に出てきた。これから何かしら話をするのだろう。
「やあ、私はガイアス・グール。この国の騎士団長にして、今回の戦争の総指揮官だ。さて、皆は厳しい選考会を突破した人物だということは理解しているが、良い作戦が無ければ皆の実力は発揮できないだろう。そこで!」
何を言い出すんだ?
「今回の作戦指揮を、勇者サトル様に一任する!」
声高々に、そう言い放った。
「おお!」
「サトル様なら、安心だな!」
「きっと、誰にも思いつかないような作戦を立ててくれるに違いない!」
「サトル様がいるんだ、元々負けるはずがないだろう!」
「サトル様、やったね!」
「サトル様なら、当然ですね」
まあ、当然だろう。僕ほどの実力を持つ人物が作戦の総指揮を執れば、勝利はより確実になるだろう。
「騎士団長、作戦の総指揮の件は引き受ける!皆で、勝利をつかみ取ろう!」
「「「「「おおおお!!!!」」」」」
お疲れ様です。
勇者に焦点を当てるシリーズがスタートします、セピア君視点はしばらくお預けとなります。




