全面戦争 vol10
だいぶシリアスな空気になってきました。
「『火の雨』っ!『守護者生成』!」
とにかく、手当たり次第魔法を放つ。最悪の事態に備えて、いくつか魔導書を持ち歩いていて本当に良かった。快く貸してくれたセピア君に感謝しないとね。
「いくらあなたでも、そろそろ魔力が切れるんじゃない?」
「それはどうかしら」
私もセピア君の奴隷となってから、相当な数の戦闘をこなしてきた。リゼの想像している以上に魔力量は増加していると思いたい。それに…私が信じて使ってきた格闘術、その可能性もあきらめてはいない。
「チッ、知らないものに対処し続けるのは結構面倒ね…」
「それはそうでしょねぇ」
使っているのは魔王幹部のこの私。中級魔法でも相当な威力になっているはずだから、必然的にリゼは魔法消去での対処を強いられる形になる。その場合、自分の知らない魔法を放たれるのは相当やりずらいはずだ。人間側の魔法は魔族側に浸透しておらず、発動タイミングや挙動はほぼ未知数と言っていいだろう。
「そろそろ…死んでくれない?」
リゼの魔力量が一気に増加した。これ以上の長期戦は自分にとっても不利と考えたのだろう。リゼの表情に、今までのような余裕は感じられない。お互い満身創痍、使えるものはすべて使っている状況。…ただ一つを除いて。
「いいじゃない。ユーリ、今すぐにでも消し炭にしてあげる!」
「私も、簡単にやられるつもりはないのよ。…『氷の大地魔力消去対策ver』!」
「ちょっ…!!」
セピア君が作った固有魔法は、本人しか使えないとセピア君が言っていた。ただ、それは真に『使えない』わけじゃない。その複雑な魔法故、体への負担から使うとほぼ確実に己の身を犠牲にしてしまうのだ。セピア君はそのあたりを無意識にやっているみたいだが…とにかく、セピア君以外でも『発動』自体は可能と言うわけだ。そこで…私の幹部としての耐性を以てすれば、なんとか命ぐらいは助かるのではと考えたのだ。
「あなた…もう息も絶え絶えで…」
「それでも!負けるわけにはいかない!『不死鳥の弓魔法消去対策ver』!」
遠くで、リゼの断末魔が聞こえたような気がする。気がするだけなのは…もう、意識を保つ気力がない…
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「!?」
今、確かに感じた。ユーリの反応が極端に弱くなる瞬間を…
「アリス!ちょっとこの場を頼めるか?」
「セピア様、まさか…」
「うん、ユーリの反応が…」
反応から、大体の位置は特定できる。ただ…完全に手遅れになるまでに間に合うかどうか…
「頼む。あと少し耐えてくれ…」
**********
いた。目の前には…すでに息を引き取ったリゼであろう魔族がいる。ユーリ…しっかりと買ってくれたみたいだ。
「ユーリ!しっかりしてくれ!」
全力で回復魔法を使ってみるが…傷が広がる速度の方が早く、どうすることもできない。その時、ユーリの懐から見覚えのあるものが出てきた。これは…僕の固有魔法の魔導書。これは恐らく、僕が無くしたりしたときのために用意していたストック。ユーリ…もしかしてこれを!
「この際、手段なんて選んでられない。『全回復省魔力・制限解除ver』!」
なぜ今までこの魔法を使わなかったのか。それは僕の魔力のほぼすべてを使ってしまうという性質上、あまりむやみに他人に使うわけにはいかなかった。ただ…
「ここまで頑張ってくれたんだ。ここで僕が台無しにしてどうする!」
数秒後…
「あれ…セピア君?」
「ユーリ…よかった!」
「セピア君、ごめんね。勝手に、固有魔法の魔導書使っちゃって…」
「本当は怒りたいけど…それは後だ。ユーリは、魔族の大将を倒したんだぞ?もっと誇っていいはずだ」
「フフフ、そうかもね…」
お疲れ様です。
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