豪州攻略(4/7):フランク・フォード
ここに出てくるフォード氏は(Francis Michael Forde)の和訳でフォルデとも訳します。首相選で一票差で敗れ、陸軍大臣に甘んじているが既に副首相と目されている大立て者です。センチネル巡航戦車は豪州国産戦車でIF歴史では出てきますが正史では参戦していません。ガネット巡行航空機は艦載哨戒機で無理やり爆撃機にしています。初飛行は1949年ですが前倒ししています。シシャモみたいな格好悪いデザインがそそります。
フランク・フォードはブリスベン(Brisbane)でマッカーサーと会っていた。
米軍の南西太平洋方面軍司令部は8階建てのビルを占有していた。
AMP Limitedの表札は保険会社のものだ。
実際はSWPA(SouthWestPacificArea)HQ(HeadQuarter)である。
その最上階にマッカーサーの執務室がある。
ビルの前にはマッカーサー専用車のダイムラーが駐車していた。
すぐに発車出来るよう、一日中エンジンは掛けっぱなしだった。
陸軍大臣のフォードはマッカーサーに戦況について伺っていた。
フォード「日本軍がケアンズ、タウンズヒルに上陸したらしい」
マッカーサー「米軍司令部のあるこのブリスベンは安全だ」
「ロックハンプトンには300輛の戦車隊、100門の野砲がある」
「ロックハンプトン空港には戦闘機爆撃機がひしめいておる」
マッカーサー「あの絶対防衛線を破られるはずがない」
「センチネル巡航戦車の突撃部隊が配置され心強いよ」
<それを心配しているのだがな>、そうフォードは思った。
固守する筈のダーウィン防衛線もやはり破られてしまったからだ。
撤退するM3中戦車は燃料切れで途中で廃棄されていた。
兵はカンガルー装甲兵員輸送車で逃げてきた。
これはセクストン自走砲の砲を捨てて兵員輸送車にしたものだ。
豪州国産ユニバーサルキャリアもあったが数が足りない。
かように豪州陸軍は日本軍に対してパニックになっていた。
航空戦力もフェアリー・ガネット巡行航空機を始めイマイチだ。
ブラックバーン ファイアブランドは艦載機からの転用である。
どちらも最新鋭という事だがやはりイマイチな感は拭えなかった。
フォードは陸軍大臣なのでもっと頑張らなければならないのだが。
このブリスベンの重要さを米国は分かっているのだろうか?
ブリスベンのこのSWPAHQは豪州防衛の総司令部といっていい。
ここが落ちれば、即ちもう後がない。
豪州にとっては最終防衛戦なのだった。
国民はパニックになっている。
これ以上の南下は許されない。
そうは言っても兵器と兵力は完全に米国頼みであった。
旧式の寄せ集め、情けない事だが豪州の現実はそうだった。
ウウウウ~ッ、いきなり不気味なサイレン音が鳴り響く。
マッカーサー「空襲警報だ!」
最上階の執務室から上空を見ると白い落下傘が見えた。
日本軍の空挺部隊、通称「空の神兵」だ!
貨物機は無動力のグライダーを引いていた。
これには自動貨車を積んでいるのだろう。
マッカーサー「我が方の戦闘機はどうしたんだ?」
見るとブリスベン空港の彼方に黒煙が確認できる。
真っ先に駐機中の航空機が狙われたのだ。
おそらく機銃掃射で穴だらけになっただろう。
ブリスベン近郊には高射砲陣地が間に合っていない。
戦闘機がいない現状ではブリスベンは丸裸も同然だった。
ロックハンプトンの地上部隊は航空機には無力だった。
あっさり迂回されて、もはやどうしようもない。
その時情報士官のカール・ソルバーグが部屋に駆け込んできた。
ソルバーグ「空挺部隊の目標はこのビルのようです!」
マッカーサー「司令部のビルは極秘だぞ、どうして?」
マッカーサーは紅茶を入れる執事の顔を思い出していた。
それは子飼いの部下であるアボリジニの青年だったのだ。
保険会社のビルを借りて擬装までしていたがバレていたようだ。
マッカーサーはあっという間に重要書類を鞄に詰め込んだ。
もう二度と機密書類の入ったカバンを奪われてはならない。
部下のソルバーグに「後を頼む」とすぐ部屋を出た。
マッカーサー「私は逃げる、フォードくんお達者で!」
フォード「あなたもご無事で」
ソルバーグ「我々も逃げましょう」
マッカーサーは司令官専用車で飛ぶように逃げ去った。
フォードはソルバーグの手引きでビルの裏手から逃げた。
フォード「どうやって脱出する?」
ソルバーグ「近くの飛行場へ行きます」
ブリスベン南方にはアーチャーフィールド空港がある。
フォードとソルバーグはそちらに車を走らせた。
フォード「ヤツラは北方から攻め寄せてくる」
「アーチャーフィールドはまだ大丈夫だろう」
しかし行ってみると日本軍兵が充満していた。
空港は拠点だからまず真っ先に征圧されるのだ。
ソルバーグ「裏手に回ってみましょう」
「自家用機が手つかずで残っているかも」
こっそり格納庫の方に回ってみたが既に手遅れのようだ。
日本軍は夜間暗視装置で2人の体温を感知した。
日本兵「誰だ!」「合い言葉を言え!」
フォード「あ、ええっちょちょっとお!」
フォードら2人は逃げた。
しかしまわりこまれてしまった。
マッカーサーは逃げおおせたが、フォードは逃げ切れなかった。
フォードら2人は格納庫の隅に潜んでいたところを捕縛された。
北豪アラフラ海に木曜島という小島がある。
ここは日本人入植者の多い真珠の名産地である。
和歌山県串本町出身の真珠採りダイバーの町がある。
日本軍は早くから木曜島を占拠し、捕虜収容所を建設していた。
この木曜島の捕虜収容所へフォードは投獄された。
今は多くの高級将校とともに虜囚の日々を送る事になった。
日本豪州軍令本部はそのフォードを呼び出した。
フォード「なにっ、日本の軍征部が私に会いたいだと?」
フォードの脳裏には何やら閃いたものがあった。
日本軍の豪州上陸作戦はほぼ終了していた。
これからは敵性外地での統治/統制が始まる時期だ。
広大な豪州全土を統治するには軍だけでは不可能である。
日本はインド洋で英国海軍と、ビルマでは英国陸軍と対峙している。
太平洋では、あの広大な海域で米国陸海軍と戦っている。
満州国境ではソ連と対峙している。
中国大陸では日中戦争はもう10年に及ぶ。
その上で豪州に手を出し、もう兵站は伸び切っている。
一朝一夕にはいかない事は一般庶民にでも分かる。
フォードは惜しくも一票差で首相職を逸している。
陸軍大臣であり事実上の副首相と目されていた。
そして北豪クイーンズランド州ミッチェルの生まれである。
フォードは日本軍政部が自分をなぜ呼びつけたのかが分かった。
彼を統制官に据えて日本軍は上主として間接統治を行うつもりだ。
フォード「私の政治生命はまだ絶たれていなかったな」
彼はさっそく頭の中で東西北豪州の統治について考え始めた。
日本軍に味方して国を裏切るのではない。
もう豪州は日本に負け、あとは降伏するしかない。
国体が守られれば、今の豪州統治と対立する事も厭わない。
今の体制に迎合しているがフォードの本心は違った。
彼には彼のやりたい政治方針がある。
かつて米英豪連合軍は北アフリカで独軍と対決していた。
米国はレンドリースで英国に湯水のように武器/物資を供給した。
英国は協力態勢を取って一緒に豪州軍と戦ってくれた。
ここで豪州は勘違いをしてしまったのだ。
日本軍が南下の様相を見せた第二次世界大戦前期。
豪州は同じ女王陛下に忠誠を誓う国として英国に支援を求めた。
だがチャーチルは北アフリカへの増援を求めるばかり。
一向に豪州への派兵には応じてくれなかった。
ジョン・カーティンはその時気が付いたのだった。
「英国は自分さえ良ければそれでいいのだ……」
かつて19世紀の英国首相パーマストンは言った。
「永遠の敵も、永遠の同盟も無い、あるのは英国の利益のみ」
同盟だと信じていた豪州はまんまと英国の三枚舌に騙されていた。
「駆け引き上手と言えばそれまでだが、そこまでするか?」
豪州を支援しても一文の得にもならないという事だ。
カーティンは英国に見切りをつけ米国に助けを求めた。
フォードは陸軍大臣の身分でその丁々発止の一部始終を見ていた。
「オレだったら上手くやれるのになあ……」
そして今、その時節が巡ってきたのである。
いかにして国難を乗り切るかを考えるのだ。
彼は日本兵に連行され、ダーウィンにある軍令本部に向かった。
とうとうフォード氏は日本軍の捕虜となり、自分のこれからの身の振り方を考え始めます。愛国心を振りかざして徹底的に抵抗するか、抵抗を捨て忠孝一致によって国家の進運を扶持する(国体護持する)かの決断を迫られます。次回は豪州攻略(5/7):東西北三豪州です




