豪州攻略(1/7):計画
豪州は日本軍の兵力と兵站の範囲外にありました。余りにも遠すぎたのです。そこで日本は豪州を4つに引き裂き、首都のある南豪以外を支配下に置くことにしました。
豪州は日本の20倍の面積に700万人の豪州人が棲む。
これにはアボリジニ人の人口100万余人は含まれない。
この人口密度から見ても戦術を駆使すれば進撃は容易い。
しかし戦略的に見れば制圧は出来ても占領はできない。
広すぎるし、遠すぎるし、流通網はほとんど無い。
陸地は荒れ地で、人口は海岸地帯、特に東側に多い。
豪州と米国の流通はこの東側に繋がっている。
まず東豪州を叩かなければ、この経路を断つ事はできない。
東豪州には4つの米海軍基地が存在する。
ここが米国と豪州の珊瑚海を介しての補給路の終点にあたる。
①COOKTOWN(クックタウン)。
②CAIRNS(ケアンズ)。
③TOWNSVILLE(タウンズビル)。
④BOWEN(ボゥエン)。
これらの東豪州4都市だ。
そして米軍の南西太平洋方面軍司令部のある都市。
⑤BRISBANE(ブリスベン)
ここを強襲し、ある人物を人質に取る。
マッカーサーではない。
豪州支配の要となる重要人物だ。
その名はフランク・フォード(Frank Forde)。
1935年に1票差で豪大統領選挙に敗れた男である。
現陸軍大臣であり、副大統領でもある。
この男なら次期大統領として相応しい能力と人脈がある。
さらに豪州は四州にそれぞれ分かれて自己統治している。
各州には知事ではなく、なんと総理大臣がいる。
自由と自治に拘る姿勢は、逆に中央と断絶しやすいのだ。
その三州、東部&北部&西部を奪い、南部を孤立させる。
南部は首都キャンベラ、最大都市シドニーを擁する州だ。
ここを孤立させ、豪州を断絶/日干しにする計画である。
だがいきなり最も防御の堅い東豪州を攻めるのはどうか?
征服と征圧は豪州最北端から始める事になった。
まずヨーク岬半島突端の木曜島(Thursday Island)を先遣隊が奪う。
ここには真珠貝を求めて、日本業者が数多く入植していた。
今やここは5千人の豪州軍が駐屯する戦略的空軍基地であった。
40年近く現地に住み込んでいた真珠業者は豪州の事情に詳しい。
彼らを日本軍が徴用して、情報を聞き及べば鬼に金棒だ。
さらに北/西豪州の拠点も叩く計画だ。
ダーウィン、メルヴィル島、ロンドンベリー、ブルーム、ウインダム。
これらはジャワ、フィリピン、ビルマとの通商拠点であり避難経路でもある。
特に最西端エクスマウスは昭南襲撃未遂事件の発端となった地でもある。
豪州大陸全域を占領するにはおよそ20師団が必要だろう。
だが北豪州を占拠するには、そんなには必要ないのだ。
そこを橋頭堡とし次に東豪州の都市を叩く。
都市群の港湾施設と飛行場を占拠する。
制海権と制空権を取れば、米軍の補給路は止まる。
逆に日本の補給路は確保できるようになる。
その為にガダルカナルとポートモレスビーを押さえたのだ。
珊瑚海は豪州ブリスベンまでの海域を指す。
ブリスベンには連合軍南西太平洋域本部がある。
マッカーサーがその本部マッカーサー・セントラルビルにいる。
もはや珊瑚海を米艦船は安全に航行出来ないのだ。
いつ日本潜水艦の雷撃で沈没してもおかしくない。
制海権を取った珊瑚海にはソノブイが導入される。
これはソナー機能をもったブイで、音響記録を送信した。
これによって米軍潜水艦の群狼作戦を阻止するのだ。
ログの潜水艦行動から作戦目標を割り出す事も可能だ。
制空権を取った空域には高高度戦術偵察機が遊弋する。
帝大航研設計+立川飛行機製作の「研二」にあたる。
「特秘」扱いのため試作機のキ番号がない秘密機だ。
高度2万mをグライダーのように飛び、偵察任務に付く予定だ。
この計画に沿って、北豪州より侵略作戦は実施される。
まず軍事施設(飛行場など)を空爆し、さらなる制空権を奪う。
次に上陸して、軍事施設を占拠し、地上兵力を喪失させる。
軍事施設の後は公共施設を支配下に置く。
市庁舎と警察、裁判所、放送局、新聞社、流通拠点を制圧する。
警察は手持ちの武器で抵抗するだろうが、最後には降伏するだろう。
マレーでも同様に抵抗があったが最後には投降している
日本軍は豪州政府の行政権を休止し、軍政府の統治を宣言する。
各都市の郊外に軍政府(豪州日本軍政府)機関分室を置く事になる。
ここではダーウィンを例に取ろう。
北豪州のダーウィンには日本軍の豪州軍令本部を設置する予定だ。
ダーウィンの日本軍政府は住民代表を選抜招集する。
合議制諮問機関であり、軍政府と住民の意思疎通機関でもある。
ダーウィン市民は一旦20の捕虜収容所に集められ、そこから代表200人を招集する。
かれら200人は
①農業部、商工部の専門知識を有する者。
②様々な社会階級の代表者。
③軍部、政治家を除く。
④日本軍に諂う者を除く。
という条件の下に選抜されていた。
通常は大学の学長が委員会の長に選ばれる。
だがノーザンテリトリーにはまだ大学がなかった。
そこでダーウィン独立公立学校に白羽の矢が立つ。
ノーザンテリトリーに1921年創立、1942年に陸軍兵舎に徴用され休校していた。
ここの校長を委員長に据えて、ダーウィン諮問会の目安が立つだろう。
こうして200名は20名に厳選され、委員会が発足の運びとなる。
軍政府の諮問機関であるが、行政・立法機能も有している。
委員会の第一の仕事は、市民の捕虜収容所からの解放だ。
これが間接政治であり、日本軍政部はほとんど表面に姿を現さない。
豪州を豪州人が統治する、違うのは上主として日本人がいる事だけ。
武装解除の後はいつもと同じ生活が待っている。
違うのは輸出入先が米国から日本に代わるだけなのだ。
豪州の農業自給率は223%で日本の38%と比べると飛び抜けている。
1914年日本人高須賀穣が豪州でのジャポニカ米の商業生産に成功。
豪州の気候にあったコメ生産が始まり、他国に輸出するまでになった。
ほかにも小麦、大麦、燕麦、菜種、豆類などが輸出項目となる。
日本でも讃岐うどんに小麦が、麦茶に大麦が使われている。
これら穀類を全て日本が輸入する事になる。
パンやケーキ、スパゲッティやグラタンの洋食が流行るだろう。
大麦の麦芽はビールとなり、大衆に馴染むはずだ。
豪州大陸の中央には未開発の広大な荒れ地がある。
そこは誰の手も付けられない理由があって未踏なのだった。
豪州の地下には塩分を含む膨大な地下水が眠っている。
乾燥地には灌木が生え、その根が少ない雨量を吸収し切ってしまう。
それゆえ地下水位は水分枯渇で上昇も下降もしない。
そこに灌漑農業を行ったらどうなるのか?
地表の真水に向かって、地下の塩水が毛管現象で上昇する。
塩水は地上に出ると蒸発し、地表面に塩分が集積する。
農地を潅漑する筈の真水が地下の塩水を誘き寄せ農地を耕作不能にする。
地表に真っ白に析出した塩分はもはやどうしようもない。
こうして豪州大陸の中央部は荒れ地のままなのだ。
放牧地として僅かに使われているだけなのだ。
現在は塩性植物が研究されている(アッケシソウなど)。
だがまだまだ大規模な開発は先のようである。
それでも自給率223%はとんでもない数字だった。
農作物のほか豊富な鉱物資源を日本に送るには船が必要だ。
その為の低温/冷凍運搬船を仕立てる必要もある。
鉄鉱石には鉱石専用船を、LPG/LNGにも専用船を造船する。
これらはセイロン島コロンボ・ドックヤードが担当する。
スリランカ国は時ならぬ造船景気に沸くだろう。
これぞ大東亜共栄圏というモノだ。
対岸のインドは植民地なので指をくわえて見ている事になる。
最後のアボリジニについても話しておかなければならない。
彼らは1914年からブラック・ディガーズとして仕えていた。
<Diggers:豪州兵の事、Black Diggers:アボリジニ兵のこと>
第一次世界大戦に警察官とし参戦していた。
彼らの身分は兵士ではなく警察官だった。
これは法律で軍隊への奉仕を禁じられていたからだ。
これは祖国の為に戦った名誉と栄光を授けない為の処置だ。
彼らは帰国してもただ肩をすくめるのみであった。
第二次世界大戦にはパブア・ニューギニアへ従軍した。
パブア・ニューギニアでは恐怖の象徴として蛮刀を振るった。
白人大尉1人に付き6人のアボリジニが任務に付いていた。
白人に対してアボリジニの兵卒がやたら多い。
これを日本が知ったのは野戦で捕虜になったアボリジニの多さだ。
ジャングル戦の先遣隊や威力偵察を捕まえてみると殆どそうだった。
南方軍総参謀副長の岡本清福はこれはおかしいと事情を探った。
岡本「なぜアボリジニは白人に屈従しているのか?」
アボリジニ「我々は白人に負けた敗北者」
「だから白人に従っているのです」
岡本「コレは敵の話で恐縮だが日系二世部隊というのがあってな」
「第442連隊戦闘団は欧州で大活躍、最も多くの勲章を貰ってるぞ」
アボリジニの警察官たちは目を輝かせた。
豪州は元々我々の土地だ。
屈従していても自分の土地の為に戦うのに何の戸惑いがあろうか。
日本は台湾高地族の賽德克族で大きな失敗を犯していた。
タイヤル族では有志を集め、高砂義勇隊で上手くとりまとめたのだ。
少数民族で日本は多くを成功し、多くを失敗してきた。
よもやここで失敗するわけにはいかなかった。
こうしてアボリジニ復権も日本の謀略のひとつとなった。
こうして豪州征服の詳細は決まった。
あとはそれを実行するのみである。
シドニー、キャンベラを含む南豪州を鎖国に追い込む作戦&アボリジニによる民族蜂起で豪州を統治する計画です。次回は豪州攻略(2/7):ダーウィン爆撃です




