大艦巨砲主義の夢
戦艦/重巡の大艦巨砲主義はすでに夢となって散っってしまいました。空母が互いに見えることなく、艦載機で雌雄を決する時代となったのです。
ミッドウェー海戦以降、戦艦の需要は無くなった。
航空機/空母が戦場の主役になってしまったのだ。
戦艦主砲の射程は頑張っても40km。
だが爆弾を搭載した航空機は500kg爆弾を1000kmも運ぶ。
かつては戦艦の重装甲を航空機は破れないと信じられてきた。
巨大な戦艦の巨大な砲が雌雄を決すると信じられてきた。
だがそれは大艦巨砲主義の夢であった。
夢ならば、早く目覚めて覚醒した方の勝ちなのだ。
戦艦は改修が出来るモノは空母となった。
重巡も改修が出来るモノは空母となった。
1942年起工の伊吹(第300号艦)もそうであった。
正規空母への改装で2~3年は掛かる。
これは戦時標準設計船ではなかったのだ。
こうして重巡、戦艦の新規建造は無くなった。
重巡/戦艦も最大の大改修が行われた。
今までの大艦巨砲主義の鎧はそのままだ。
電子装備が幅をきかせて光学装備が引っ込んだかたちだ。
艦橋上部に相当する部分がスッパリと無くなっている。
艦橋は異様に低く、その後のレーダー檣楼は異様に高い。
対空、洋上レーダーが男簪の異名をとる程だ。
対潜兵器は誘導魚雷、対空兵器はレーダー誘導高射機関砲を備える。
対潜兵器は他にもヘッジホッグ(対潜臼砲)を2門備えている。
この武器の見本市みたいな軍艦も航空機の攻撃の前には無敵ではない。
機動艦隊の主役は空母であり、固守の役割は海防艦であった。
そして影の主役はやはり潜水艦だ。
それでも潜水艦の宿敵は航空機だった。
では重巡/戦艦は無用の長物だろうか?
いや、そうではなく用途が変わるのだ。
重巡/戦艦の長所は、その頑丈な装甲にあった。
空母や海防艦は装甲はあっても薄いのが弱点である。
戦闘という殴り合いで最後に立っていられるのが勝者だ。
強靱な装甲を持つ重巡/戦艦こそ残存性のカギなのだ。
圧倒的な攻撃力で立ち向かう為の航空母艦。
そして強靱な装甲で踏みとどまる重巡/戦艦。
戦闘という危険な任務に立ち向かうには攻撃と防衛が必要だ。
それは空母と重巡/戦艦のコンビネーションにかかっている。
大艦巨砲主義は夢で終わったかも知れない。
だが強靱さという点で重巡/戦艦は意味を持つ。
ただここには一つだけ言及されていない弱点があった。
それはその強靱さゆえの脆弱性だった。
桁と梁の構造はどんな衝撃にも耐えられる頑丈な構造だ。
従って衝撃は艦体構造の奥まで伝達される。
それが限界を越えて衝撃を受けた時どうなるのか?
表面で起きた衝撃は奥底まで及んでしまう。
つまり一度にすべての構造がひしゃげてしまうのだった。
これを防ぐには軟弱な構造と強靱な構造を使い分ける。
その工夫が重巡/戦艦にはされていない。
建艦した時代性が古い為、そういった発想がなかった。
新造艦の戦時標準設計船はそうではない。
強靱な舷側フレームと内部フレームの間にダンパーフレームがある。
衝撃エネルギーを効果的に吸収してひしゃげて内部フレームを守る。
<インターナル・アーマー方式とは異なる方式だ>
この改修は造船期間より時間が掛かると算出された。
戦艦の扶桑は改修工事に述べ4年掛かっている。
これは建造期間の延べ4年と同じくらい掛かっている。
さらに速力が遅いので、新造艦の速力についていけない。
作戦行動についていけず、かといって改修も手間が掛かる。
独国の最新技術を取り入れようともしたのだ。
独ハトラパ(Hatlapa)社は後にベッカーマリンシステムズとなる。
その技術をナカシマプロペラが買収により取得したのだ。
ベッカーダクトとベッカー舵は推進力と燃費を向上させる。
しかも既存の船尾周辺設備を変更せず追加工事だけだ。
それでも公試全速50ノット(80km/h)の新造艦についていけない。
扶桑改装に思ったような効果が出なかった軍部は戸惑った。
伊勢、日向、山城、扶桑は航空母艦/航空戦艦改装案もあった。
だが上手くまとまらず、空母改装案はボツになった。
戦艦長門、陸奥も改装されて外装は随分と変わった。
他の重巡/戦艦も同じような塩梅である。
いつの間にか新造艦は前線へ、重巡/戦艦はしんがりに回されていた。
強靱さと残存性に活路を見出したはずの重巡/戦艦たち。
戦闘に出ても会敵すらさせてもらえない。
戦場に到着するとすでに勝敗は決していた。
大艦巨砲主義は終わっていた。
残っているのは沿岸の艦砲射撃ぐらいのモノだった。
ガダルカナル島が日本のモノになった今、重巡/戦艦の出番はない。
ソロモン諸島の戦いに決着が付き、航空機の時代がやってきた。
米国軍も自然とその徴候を察していた。
機動艦隊の編成は空母中心であった。
その空母が1942年06月時点で太平洋にはいない。
レキシントンは珊瑚海海戦で沈没。
ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットは鹵獲。
サラトガはサンディエゴのドックで修理中だ。
レンジャー、ワスプは大西洋だ。
週間空母は1943年07月まで出てこられない。
ロング・アイランドは護衛空母で1隻だけだ。
1年後ボーグ級、カサブランカ級とゾロゾロやってくる。
いまが太平洋を支配下に置く千載一遇のチャンスだった。
艦対空ミサイルや艦対艦ミサイルを満載したスラヴァ級巡洋艦みたいなのも考えたのですが、日本らしくないのでやめてしまいました。やっぱり重巡は大艦巨砲主義の鎧を着たまま滅びるのが美学です。重巡摩耶は戦後まで生き延び、神戸の春日野道にあるなぎさ公園に係留されていて乗る事が出来ます(勿論IF歴史です)。次回はカバンから分かった事です




