セイロン征服作戦(2/4)
今回のセイロン沖海戦は空母がさらに1隻鹵獲される以外はほぼ史実です。日本軍は正史では戦術に長けセイロン島をモノにしたのはいいのですが、そのまま引き揚げてしまいました。ここでは岩畔機関が活躍して人心の掌握に努めます。
この伊二百一(甲)を南雲長官はインド洋に回せと言っているのだ。
呉海軍工廠「試製潜高を?いいよ」
4501~4508号までの既存艦すべてがインド洋に回ってきた。
給油修理と乗組員休養も兼ねる潜水艦母艦も2隻やってきた。
これで広大なインド洋をどうにかなりそうだった。
一方、英東洋艦隊は艦船を増強していた。
戦艦5隻と空母1隻を基幹とする大艦隊となっていた。
これらの艦船は英国陥落の際に脱出してきたものだ。
①戦艦リヴェンジ
②戦艦ロイヤル・サブマリン
③戦艦ラミリーズ
④戦艦レゾリューション
⑤戦艦ウォースパイト
⑥空母ハーミーズ
1942年04月05日。
英東洋艦隊は日本機動艦隊出撃を04月01日と日本暗号を解読していた。
しかし日本側は不手際から04月05日に延期していた。
こうして01~04日まで英東洋艦隊は必死になって日本軍を探した。
だが出撃していないので見つかるはずも無かったのだ。
戦闘態勢のまま5日間も作戦行動をしたため、燃料が不足。
だがセイロン島の燃料補給基地で燃料を補給は出来ない。
日本の偵察機が四六時中偵察の目を光らせているからだ。
そこで全艦戦闘態勢を解き、アッドゥ環礁に燃料補給に向かった。
アッドゥ環礁補給基地は日本軍に知られてはいない秘密基地だ。
絶海の孤島の為、日本側諜報員にも気付かれていなかった。
英国艦隊もPBY哨戒艇をセイロンに飛ばし、警戒を怠らなかった。
日本艦隊はシンガポールーセイロン間のどこかにいる。
サマヴィル中将「出撃日を偽りおったか……」
そこでPBY哨戒艇も扇状に展開して日本軍を探し求めた。
ついに1機がセイロン島700kmを航行中の日本軍を発見。
この時、同時に日本軍もPBY哨戒艇を認めていた。
南雲「なに、哨戒艇に発見されただと!」
草鹿「奇襲は出来なくなりましたな」
南雲「ううむ、鹵獲部隊に活躍してもらうか」
草鹿「大艦巨砲でいよいよ対決ですな」
プリンス・オブ・ウエールズ、レパルスは修理を完了し南雲艦隊にいた。
この2隻を筆頭に護衛空母2隻、海防艦8隻、潜高2隻が艦隊を組んだ。
鹵獲空母インドミタブルはまだ修復中で戦闘は不能である。
この鹵獲艦隊が先行して、英東洋艦隊と対峙する。
南雲艦隊はそのままコロンボ急襲に向かった、
一方、ここはアッドゥ環礁(秘匿名称ポートT)。
セイロン南西1200kmの絶海の孤島である。
ここで補給の真っ最中に、英東洋艦隊はこの報に接した。
サマヴィル中将「まだ半分しか給油が終わってない!」
戦艦ウォースパイトと空母1隻は給油を完了していた。
サマヴィル「他に巡洋艦3隻、駆逐艦6隻が給油を終了している」
「このまま北上して敵を迎え撃つしかない」
戦艦ウォースパイト、空母1隻、巡洋艦3隻、駆逐艦6隻。
給油の終わった艦船を掻き集めて、艦隊を組んだ(A艦隊)。
04月05日しかしA艦隊は北上したが会敵には至っていない。
その間に日本の艦隊はますますセイロンに近づいていた。
04月05日南雲機動艦隊はコロンボ港南方200海里(370.4km)に迫った。
艦攻、艦爆、ゼロ戦がコロンボ港空爆に出撃した。
ここで特務機関「岩畔機関」が活躍する。
爆撃に先立つこと2週間前、岩畔機関の諜報員が現地入りした。
500名のインド人諜報員がまず様々な職種でセイロンに潜り込んだ。
そうして敵軍基地の物資搬入や清掃掃除に関わる作業員に扮した。
こうして密かにインド兵にヒンドゥー語でウワサをばらまいた。
「日本軍の敵は英国人」
「インド人とは戦いたくない」
「アェサー・ホーター・ハェ(これでいいのだ)」
最後のフレーズにインド兵は笑った。
笑うのは久しぶりだったのだ。
結局符丁が決められることになった。
「ガイー・バヘィンス・パーニー(水牛が水に行った)」
この言葉を見たり聞いたりしたら一目散に逃げること。
そうすればインド兵の命は助かるというのだ。
04月05日偵察機は大量のビラをコロンボ軍港にまき散らした。
「ラクダに低地で草を食ませる(ことわざ)」
<大がかりなことは人目に付かぬようには出来ないの意>
先日のウワサはインド兵の中の英国間諜も聞いていた。
その為符丁をわざと変えてきたのだった。
このウラの意味がわかるのはインド兵だけだ。
蜘蛛の子を散らすようにインド兵は逃げ出した。
元々銃砲弾を運ぶなどの使役に駆り出されていたインド兵。
対空砲座には追加の炸薬と砲弾が届かなくなった。
対空機銃座には機銃弾の補充が来なくなった。
装填弾を撃ち尽くしたらもうオシマイだった。
だが軍艦の対空機銃は自動装填で問題ない。
港に停泊中の艦船からパラパラと曳光弾が見えている。
コロンボ軍港には停泊中の艦船が多数いた。
商船21隻、駆逐艦2隻、仮装巡洋艦、潜水艦とその母艦などだ。
まず地上軍事施設を完膚なきまでに叩き潰した。
撃ってこない対空火器は標的の的のようなモノだ。
英国機が迎撃に上がってきたが、ゼロ戦の敵ではなかった。
次々と英戦闘機が撃ち落とされていく。
日本軍の空爆は苛烈を極めた。
地上施設は壊滅したが、艦船はその分生き延びていた。
湾内にいる艦船は爆撃を逃れ、効果は充分ではない。
攻撃隊総指揮官の淵田は艦隊に電信を打った。
「第二次攻撃を準備され度」
草鹿「どうしますか、攻撃隊は雷装ですが」
南雲「直ちに爆装に切替」
「第一次攻撃隊収容後、直ちに出撃せよ」
そこにとんでもない直電が入ってきた。
利根偵察機「敵巡洋艦らしきもの2隻見ゆ」
南雲「な、なんだとうっ」
草鹿「どうしますか、攻撃隊は爆装ですが」
南雲「直ちに雷装に切替」
「本当に巡洋艦か確認の偵察機を出せ」
今度は阿武隈の水偵がとんでもない報告をした。
「駆逐艦2隻を見ゆ、ほかの艦影無し」
南雲「どうなっとるんだ、どっちが正しいのか」
「天候不順で目視が困難なのは分かるが、はっきりせい!」
大石参謀は屹立して言った。
大石「駆逐艦ならコロンボ港の空爆が先でしょう」
航空参謀源田は彼を遮って言った。
源田「例え駆逐艦といえども海上武力である」
「これを先ず撃滅する事が先決だ」
空母飛龍艦長山口多聞「攻撃隊発進の要ありと認む」
赤城に座乗する南雲長官に催促が来たのだ。
南雲「ううむ」
「爆装の整ったものから順次発艦せよ」
南雲「2隻の艦種不明艦をまず叩く」
「コロンボ港はその後で叩けばよい」
南雲長官はこの時の不手際を記憶に留めた。
<次の作戦では全機換装を終えるまで発艦しない>
この2隻は駆逐艦でなく巡洋艦だった。
攻撃隊の士気は高く、あっという間に撃沈した。
英東洋艦隊Aは北上を続けたが夕闇が迫り、北上を中止。
南雲艦隊も夜間着艦の危険度を鑑み、作戦を中止。
鹵獲艦隊も結局英東洋艦隊を発見出来なかった。
こうして04月05日の戦闘は日本側の勝利に終わった。
コロンボ軍港は壊滅的打撃を受け、沈黙した。
そのまま日本上陸部隊が港湾と飛行場を占拠。
英軍はインド兵に裏切られ抵抗は散発的だった。
戦意ある者はトリンコマリー軍港方向に逃げ去った。
こうしてまずコロンボ軍港は日本軍の手に落ちた。
04月08日トリンコマリー軍港を日本軍が爆撃。
軍港にいた空母ハーミーズ他護衛駆逐艦は沖合に退避。
これを日本の潜高に発見され、魚雷攻撃を受ける。
空母ハーミーズはこの時艦載機全機を陸上基地に降ろしていた。
もし艦載機がいて、潜水艦狩りをしていたら、立場は逆だったろう。
潜高装備の平面模索魚雷は初期の誘導魚雷といっていい。
入力された指示に従って反復往復を繰り返す。
力尽きて沈むか命中するまで運動を繰り返す。
これも独国からの技術供与でG7魚雷のうちFaT魚雷に相当する。
特殊潜航艇/高速潜水艦の生みの親、岸本少将もこれにはぶったまげた。
「ナチスの科学は世界一、とどこかで聞いた事があるがこれ程とは」
平面模索魚雷を時間差で2発、潜高は発射した。
時間差で命中するまで行きつ戻りつする仕掛けである。
こうして空母ハーミーズは1発の魚雷を舵に受けてしまった。
その場をぐるぐる回り始める空母ハーミーズ。
潜高からモールス信号が空母ハーミーズに送られた。
「コウフクセヨ、テイコウハムイミダ」
空母ハーミーズは護衛駆逐艦に爆雷攻撃を依頼した。
だが護衛駆逐艦ヴァンパイアの姿は消えていた。
付近の海面には真っ黒な重油が浮いている。
すでに護衛駆逐艦は海の藻屑と化していたのだ。
艦長のオンスロー大佐は降伏するなら死を選ぶ武人である。
オンスロー「艦に時限爆弾を仕掛け降伏する」
だがこういう姑息で卑劣なやり方は日本軍に見抜かれていた。
翔鶴の飛行隊長である高橋赫一少佐は着艦するやいなや言った。
高橋「皆さんは捕虜ですが、この艦の運行に必要です」
「しばらく艦に留まり、自分の部署を動かないように」
艦内食堂に集められた英兵は、はっきりと分かるほど動揺した。
だだ一人艦長だけが天井を向いて目をつぶったままだ。
高橋「どうしました?何か問題でもあるのですか」
英兵たちは一斉に艦長に注目した。
だが艦長は不動の態勢でまったく動じなかった。
その沈着冷静さがかえって不審を煽った。
艦長は船と共に運命を供にするつもりなのだ。
日本人の高橋にはそれがすぐにピンと来たのだ。
それならそれで対処法はあるというモノだ。
高橋「艦長はそれでいいかもしれませんが、乗員はどうですか」
オンスロー艦長はギョッとした。
日本人は超能力者なのか?
高橋は日本人スタッフと何やら相談し決断した。
高橋「魚雷/弾薬庫に液体窒素を充填せよ」
すぐに日本軍に連絡をとり、特殊蝶番試製1号機の出番となった。
これは日本版ヘリコプター機の呼称である。
液体窒素のボンベが次々と空輸されてきた。
時限装置の電池は-195度で起電力を失い無効となる。
後はまったりと時限装置を探して、取り外せばいいのだ。
オンスロー艦長はがっくりと膝を突いてしまった。
騎士らしく自刃することも出来ないのか……。
その様子に高橋は気付いて、ただちに叫んだ。
高橋「艦長は自決するつもりだ!取り押さえろ!」
追いすがる日本兵を躱し、タラップをよじ登る。
日本兵は英国空母の構造に詳しくない。
一度は見失い、発見したのは艦橋最上階のブリッジだった。
オンスロー艦長「お前らの手に掛かるぐらいなら!」
艦橋最上階のブリッジからジャンプされてしまった。
飛行甲板に叩きつけられた艦長の遺骸は水葬に付す事になった。
総ては英国式に任せ、日本は一切の干渉をしなかった。
こうして空母ハーミーズは鹵獲空母となった。
トリンコマリー飛行場にはハーミーズの艦載機がいた。
だがインド兵の裏切りにより、機は燃料タンクを空にされていた。
またも日本軍はトリンコマリー軍港を占拠した。
空母ハーミーズは簡単な修理で戦線復帰出来そうである。
占領されたトリンコマリー軍港に曳航され修理を受ける。
時限装置は格納庫をカラにして徹底的に捜索、除去された。
舵は魚雷の一撃で徹底的に破壊されていた。
舵を交換して、鹵獲艦隊の一員となった。
インドミタブルが復帰すれば、鹵獲空母は2隻である。
セイロン島の英国の組織抵抗はこれで消滅した。
セイロン国防軍(CeylonDefenceForce;CDF)の構成は次の通りだった。
英国人:650余人。
インド人:1万5000余人。
この1万5000人は調べてみると殆どがセイロン人であった。
セイロン人はシンハラ人と少数派のタミル人で対立している。
そのタミル人もインド・タミルとシンハラ・タミルで対立の構図だ。
戦争の終結は新たなる内戦の始まりだった。
シンハラ派は今まで通りの支配権の維持に拘るだろう。
タミル派はこの時とばかり地位の復権にしがみつくだろう。
内戦は必ず起こるが、植民地から独立すれば規模は少なくて済む。
まずは独立し、政府による経済復興と治安確立が先だ。
セイロン島では日本の特務機関が工作を続けていた。
岩畔機関の岩畔少佐が宗教色の強い当地を熟知していた。
ハーミーズはヘルメスとも読み、Hermèsはエルメスでややこしいのですが空母はハーミーズ表記で統一表記にしています。いよいよ独立の為の画策が始まりますが、インド領事がそれを静観するわけがありません。次回はセイロン征服作戦(3/4)です




