外地に頼る日本鉄鋼事情
戦争計画は対米戦争の結果、日本が敗北すると警告していました。坐上戦術によれば、日支満の自給圏の総ての資源を集約しても日本の必要量にはとても足りません。東南アジアを占領し「補給圏」とする事でようやく事足りるのです。特に鉄鉱石と粘結炭は豪州占領が前提でした。
戦争計画は日本が対米戦争で敗北すると坐上戦術で何度も警告した。
1941年12月戦争やむなしに至った時日本は考えた。
資源のない日本が戦争をするという事はどういうことか?
それは南方資源を有する東南アジアを占領する事が前提だった。
日本が戦闘によって獲得した占領地は独立を認め従属国とする。
日本はいわゆる宗主国という位置づけである。
日支満を中心とし、東南アジアをハブとする大東亜共栄圏を構築する。
現在、東南アジアは欧米の植民地として豊かな貿易ラインを有している。
戦争により植民地を占領すれば、莫大な物資の輸入が切断される。
これを代行する日本からの輸出は日本だけでは遠く及ばないだろう。
日本からの物資の輸送は十分でなく、占領地の窮迫を招かないか?
占領地での物資の欠乏は物価騰貴を招き、インフレになるのでは?
かつての賑わいをみせた貿易港(マニラなど)は見る影もなくなる。
倉庫に入りきらず、うず高く積まれていた砂糖袋の山積みも消える。
砂糖や石油は貿易財と呼ばれ、戦時戦略物資である。
ブラジル(砂糖輸出世界1位)やインド(同2位)からの供給は湯水の如くだ。
これらは英米の強力な海運業によって成り立っていた。
日本によって植民地が奪われれば、輸入は途絶するだろう。
日本は別の輸入ルートを余儀なくされる。
こうなると華南のサトウキビ、華北の甜菜が頼みの綱だ。
ここで活躍するのが欧州より脱出できた帰化ユダヤ人である。
帰化ユダヤ人A「なんでも手に入れまっせ、それなりの値段で」
帰化ユダヤ人B「ロシア系の仲間が満州で甜菜を集めまっせ」
帰化ユダヤ人C「華南では青幇の仲間がサトウキビを集めまっせ」
模擬実験では彼らが融通を利かせて砂糖を集めてきた。
その成り行きに日本商工会は愕然としていた。
日本にも南洋興発という製糖業社が南洋諸島に乗り出していた。
その生産能力は6万8000トンと一つの会社では群を抜いている。
南洋興発の松江春次(砂糖王)も帰化ユダヤ人の商魂には呆れていた。
松江「オレは1人だが、ヤツらは何万人もいて商魂たくましいのだ」
日本人A「彼らこそ生まれながらの商人(あきんど)だ」
日本人B「彼らが欧州に居られないワケが分かったよ」
日本人C「日本には大阪商人がいるからまだマシだな」
初年度での試算はおよそ1500万トンで群を抜いていた。
これは世界第9位の生産量(1位ブラジル、2位インド)に匹敵する。
大東亜共栄圏の模擬実験では帰化ユダヤ人の協力が約束された。
彼らがあらゆるモノを調達してくれるだろう。
それなりの値段で。
日本の軍政部は南方占領地帯を次々と独立させる予定でいた。
軍による直接統治は地元民の反感を招くからだ、
現地有力者を指導者に任命し、日本人は上主となる(間接統治)。
統治計画ではすでに多くの人材が選ばれている。
セイロンではセーナーナーヤ弟が初代首相に内定している。
フィリピンではホセ・ラウレルが大統領に内定している。
インドネシアではスカルノが大統領に内定している。
タイは二千年の間独立国家であり、狡猾な外政で知られている。
ピブンソンクラム総理は早速親日内閣を組閣、親英米官僚を追放。
英米に宣戦布告し、日独伊三国同盟への加入を求めた。
東條英機はこのしたたかな小国の外政に舌を巻いた。
「日本と同盟を組み、小国なれど対等を気取る気か?」
「今は日本勝機と見てすり寄ってくるが、いつ寝返るか分かったものか」
「手綱を何本も持って、常に勝利者の側に立っている」
東條「タイ名物の軍事クーデターに気を付けるようにでも言っとくか」
ビルマではバー・モウが内閣総理大臣に内定している。
日本はアウンサン将軍を推したが彼は辞退していた。
オーストラリア・エリアはちょっと複雑である。
西豪州+北豪州+東豪州をAU(Australia Union)にまとめる。
それぞれの州を州首相(主席大臣)が治める。
その三豪州連合を大統領(豪州理事会常任議長)が治める。
すでにフランク・フォードが大統領に内定している。
この豪州支配の資源こそが日本鉄鋼業界を支える要なのだ。
かつての日本鉄鋼業の技術レベルは低迷していた。
銑鉄は満州やインド、ソ連から輸入していた。
クズ鉄は米国から良質のモノを輸入していた。
なぜ鉄鉱石から銑鉄、炭素鋼を製鉄しないのか?
それは、お寒い日本鉄鋼業界の内情があった。
①銑鋼一貫製鉄所が大企業のみに限られていたこと。
②クズ鉄や銑鉄をLD転炉で溶かして圧延する鉄工所が多いこと。
特にクズ鉄は鋼産業の40%を輸入に、特に米国に依存していた。
これから戦争しようとする敵国にクズ鉄を頼る日本鉄鋼業界……。
こんな事では真っ先に輸入を断絶されるだろう。
一刻も早く銑鋼一貫製鉄所の建設を急ぐ必要があった。
戦前は9つしかなかった銑鋼一貫製鉄所を新たに12(合計21)に増やす。
建設費は1兆8000億円という途方もない金額になった。
これには帰化ユダヤ人が資金を提供してくれた。
それなりの利子で。
これで年産1億4256万9000トンという途方もない生産量が確保された。
これは外地(ビルマのシャン州タウンジーなど)の製鉄所を含まない。
原料の鉄鉱石は鉱石専用船(VLOC)で豪州から輸送予定である。
すでにポート・ヘッドランドには6万トン級のVLOCが停泊可能だ。
これを拡張して13万トンのVLOCを接岸可能に造り直す。
豪州上陸作戦が成ったその日から稼働予定である。
ケープランバート(Cape Lambert)港、ダンピア(Dampier)港も範疇だ。
年間出荷能力は1億3300万トンを予定している。
これらの鉄鉱石のFe含有量は58%~67%に達する。
少なくとも6500万トン/年の銑鉄が期待出来る。
銑鋼一貫製鉄所の操業に不可欠な粘結炭は華北からの輸入に頼っている。
将来これも豪州の炭鉱から掘削する目安が付いている。
豪州にあるニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州の炭鉱だ。
推定地質学的埋蔵量は1562億トンでこれも途方もない数字である。
とにもかくにも南方資源がなければ日本は米国と戦えない。
取らぬ狸の皮算用だが、やるしかないのだ。
日本列島だけでは戦時物資が何もない、戦闘が続けられないのだ。
そのために今ある備蓄は石油もクズ鉄も銑鉄も総て使い切る覚悟だ。
それでも勝てないなら、現実がそうだったということだけだ。
出し惜しみで負けることほど、情けないことはない。
日本が勝てないにしろ、負けない為には捕らぬ狸の皮算用で猪突猛進がむしゃらにやるしかありません。日本が植民地を奪い、独立させて親日国とし、同盟を結んで大東亜共栄圏に組み入れる。まあ絵に描いた餅とはこの事ですが、これがIF戦記の醍醐味でしょう。次はマレー沖海戦(1/2)です。




