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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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マレー・シンガポール戦(4/5)

いよいよクアラルンプールに進撃します。試製チト2号車30トンも登場します。

目指すはクワラルンプール、列車には戦車が積載されていた。

57mm砲搭載型九七式中戦車チハ、及び試製チト2号車である。


ノモンハンで使った試製戦車はまだ国境警備に必要だった。

まさか南方戦線に派遣する訳にはいかない。


それは辻自身が一番よく知っていた。

一方、英印軍の戦車はM3戦車である。


辻「M3戦車に日本の戦車では心配だ」

「試製チト2号車2輛を無理やり使う」


マレー作戦出発前にこういうやり取りがあったのだ。

三菱重工業丸子工場に辻自らが乗り込んできた。


辻「マレー作戦で使うからチト、徴用する」

工場長「ええまた?ちょちょっと待って下さいよ」


辻は代理と書かれた命令書を見せた。

大本営の命令では民間人が口答えできる範疇ではない。


まさしく印籠をかざす現代の水戸黄門もかくあらんという姿である。

辻「苦は楽の種、楽は苦の種と知るべし、だな」


試射も済んだ中戦車は砲弾とともにマレーへ旅立った。

戦車輸送船として徴用されたのは多目的輸送船だった。


60トンのクレーン2基装備で、タンデムで120トンを吊下可能だ。

元々は蒸気機関車輸送船で、大陸へ汽車を輸送する貨物船だ。


ちなみに命令書に代理というモノはない。

また辻参謀お得意のニセの命令書だったのだ。


それが発露されたのはマレー上陸の後だった。

これを聞いた東京の参謀本部は怒髪天を衝くの如くである。


「またあいつか」「ノモンハンの繰り返しだ」

参謀本部は非難囂囂(ひなんごうごう)だが陸相は知らんぷりだ。


東条英機「アイツのやる事は(終わりよければ総てヨシ)なんだよ」

処罰どころか四式中戦車は量産の計画前倒しとなった。


この戦車を渡河させる四式重門橋も同時に試作運用された。

辻「ノモンハンでは渡河に苦労させられた」


「30トンもある戦車もこれからはバンバン出てくるだろう」

そしてクアラルンプール戦。


英国軍は善戦抵抗したが、所詮は日本陸軍の敵ではない。

簡易自走砲のSdKfz251/9(75mm)もゾロゾロやってきた。


ノモンハンで使ったSdKfz251のバリエーションである。

英国兵はソレを見て、卒倒するほどぶったまげた。


英兵A「北アフリカ戦線でオレらが使ったガン・ポーティだ!」

英兵B「なんでジャップがディーコンを知ってるんだよ、

英兵C「ヤバイよ、ヤバイ、ものすごくヤバイ」


英軍は北アフリカ戦線でQF6ポンド砲をトラックの後部に搭載した。

そして簡易自走砲として独軍III号戦車に対抗した。


その威力を知っているだけに英兵の恐怖は(つの)った。

まず試製チト2号車が先頭を切って進撃した。


英軍「中戦車チハは装甲が薄いからな」

英軍「チト車種の違うモノも混じってますよ」

英軍「かまわん蹴散らせ、Fire!」


ドカアア~ン、バキイイ~ンッ!


英軍「アレ、跳ね返ってしまったぞ」

英軍「ボーイズ対戦車ライフルではダメか」

英軍「M3戦車を前面に押し出せ、Fire!」


ドカアア~ン、バキイイ~ンッ!


英軍「アレ、跳ね返ってしまったぞ」

英軍「75mm砲が歯が立ちません!」

英国「アカンッ、退却や!」


試製チト2号車を全ての戦車がそうだと勘違いした英軍。

空爆と戦車による砲撃で散々に蹴散らされ、1日で降伏した。


ここでも辻の独断専行は遺憾なく発揮された。

試製チト2号車を勝手に持ち出したのが功を奏したのだ。


陸軍は辻の責任を問わなかった。

それどころかチトの増産を決定した。


辻参謀「鹵獲戦車で敗敵を蹴散らそう」

河村少将「掃討戦よりまず前進しましょう、辻参謀殿」


辻「うむ、ジョホールバル、そしてシンガポールだな」

河村「シンガポール諜報員には存分に働いてもらいましょう」


クワラルンプールを過ぎればいよいよジョホールバルである。

途中ムアル(Muar)川橋梁を確保、いよいよシンガポールに迫った。


さらにクルアン(Kluang)飛行場を占拠し、中継基地とした。

飛び石輸送で陸軍爆撃機と戦闘機がコタバルから到着する。


英国軍の交通破壊は思うようにいかず、とうとうここまで来た。

余りにも日本軍の南進は速すぎて対応が追い付かない。


日本陸軍がなぜか先回りして橋梁を確保している。

爆破どころか近づく事さえ不可能であった。


夜間に近づこうとするとあっという間に捕縛された。

英国は独国開発の夜間暗視装置「バンピール」は知っていた。


だがまさかマレーで日本軍が実用化しているとは夢にも思わない。

英国軍は「ニンジャ」という隠密部隊が日本軍にいるのではと疑った。


シンゴラ、クアラリビス、グマス。ジョホールバルと路線を南下した。


辻「シンガポールを内部からひっくり返す」

「まずはジョホール・シンガポール・コーズウェイだ」


この海峡を渡る土手橋は英国が爆破する手筈である。

すでに華僑やインド人に爆薬を設置させてある。


確認は英国兵らがやり、テストも終わっていた。

だが、この英国兵らが寝返っていたのだ。


辻「一生楽な暮らしが出来る賄賂を積み上げた」

「裏切ってもらわなければ困る」


裏切り者は莫大な賄賂とともにインドに逃亡。

オリッサ州のブバネーシュワルで優雅に隠遁している。


1942年01月31日遂に日本軍のシンガポール進軍が始まった。

英国軍は3ヶ月掛かると予想していたのに、である。


何も知らない英国守備隊は今や遅しと土手橋爆破を待ちかねた。

粛々と試製チト2号車を先頭に日本軍が進撃した。


ドグワアア~ンッ!!

凄まじい爆音とともに爆炎が立ち上った。


守備軍「やったか?」


だが爆煙が晴れてみると戦車はなんともなく進んでくる。

守備軍「ど、どうなっているんだ!」


これはステージ火薬という特殊効果(パイロテクニクス)用火薬である。

火薬にチタンを使い、燃焼しても温度が低い。


次々に爆発するが戦車はなんともなかった。

守備軍「15インチ要塞砲で粉砕しろ!」


「東海岸にある要塞砲は全周旋回できません!」

「な、なんだとうっ」


戦車が続々とシンガポール市街中心部に入ってきた。

シンガポール市民は恐怖のどん底に叩き落とされた。


英印軍は石油タンクを爆破炎上させるつもりだった。

辻はこの焦土作戦にも手を打っていた。


石油施設の英国指揮官はインド出稼ぎ兵の裏切りで拘束されていた。

辻「戦わずして勝つ、孫子の兵法だ」


こうして貴重な石油と精製施設も無傷で日本軍の手に落ちた。

1942年02月15日、敵将パーシヴァルは降伏した。


降伏の会見場は旧フォード工場が選ばれた。

敵将パーシヴァルはすでに工場の事務所で席に付いていた。


山下中将が会場に着いたのはまもなくの事である。

旅順開城の水師営の会見にも比すべき歴史的両将軍の会見が始まった。


To the British, Yamashita offered no terms, only a demand for immediate surrender.<山下はイギリス軍に条件を提示せず、即時降伏を要求しただけだった>。


Later, he declared that "the only words I spoke to the British commander during negotiations for the surrender were, 'All I want to hear from you is yes or no.'<その後、彼は「私がイギリスの司令官に話した唯一の言葉は 降伏の交渉中、「あなたから聞きたいのはイエスかノーかだけです」でした>。


山下中将は台湾人の通訳を交えて公式書類に間違いが無いようにした。

だが英語がまったく分からなかった訳ではない。


彼は英語(Listening)が良く分かった。


山下「キミが降伏を先に伸ばそうと画策しているのは分かる」

「数日延ばせば何か方策が見つかるかも知れない」


「だがその頃には英国軍自体が無くなっているのではないか?」

「櫛の歯が抜けるように印度兵が敵前逃亡しているのを知っているぞ」


パーシヴァル中将は蒼白の面上に躊躇の色を漂わした。

藤原機関「F機関」という日本の諜報機関が暗躍していた。


その諜報員「谷豊」は対英諜報員として有名だった。

現地人を集め大規模な盗賊集団「ハリマオー」を結成していた。


だが所詮は無頼の衆、マレー青年同盟(KMA)のような政治集団ではない。

それでも単純な謀略や地域情報搾取に充分に活用してきたのだ。


英軍の一般兵は全員印度からの出稼ぎと現地の馬来(マレー)人から成っている。

その馬来人に「ハリマオ-」構成員が密かに混ざっていた。


負け戦になってから英印軍の様子がおかしい。

パーシヴァル中将は微妙な雰囲気の差異を嗅ぎ取っていた。


中将は天を仰いで瞑目する様子だったが、やがて言った。

「降伏します」


シンガポールは陥落した。

だが降伏は敗北ではない。


英国極東総局は密かにシンガポール奪還を狙っていた。

<極東総局FECB: Far East Combined Bureau>


彼らが使うのは英国系プラナカンだ。

英国系プラナカンには英国側スパイもいる。


彼らによるゲリラ活動を抑え付けなければ勝利/和平はない。

たのみの谷豊はやがてマラリアに罹り、病死してしまった。


特効薬キニーネを白人の薬として拒否し続けたのが命取りだった。

徒党の衆だった「ハリマオー」は(あるじ)を失い、四散していった。


そこで辻は萊特(ライテク)というベトナム人に目を付けた。

ベトナム人の萊特(ライテク)は謎めいたキャラクターだった。


インドシナで仏国スパイとして、後に英国スパイとして暗躍していた。

1934年シンガポール入りしマラヤ共産党に潜入。


1938年には事務総長に、1939年には事務局長になっていた。

これには英国諜報部の助力があったのは言うまでもない。


党内のライバルを英国警察の摘発によって葬っていたのだ。

このマラヤ共産党員を英国諜報部はゲリラに仕立てる計画だ。


だが辻参謀の方が一枚上手でしかも素早かった。

辻「彼に会って話をつけてやる」

IF歴史の山下中将は英語(Listening)が分かったことにしました。伊号第五十八潜水艦艦長の橋本以行(はしもともちつら)は戦艦インディアナポリス撃沈の裁判を米国で受けた時、英語(Listening)がよく分かりました。山下はスイス・ドイツ・オーストリア駐在武官を歴任しており、特にウイーンに居た頃は「好きな本は何でも読めた」とあり、独語には堪能(たんのう)だったようです。そこから山下は英語も分かったとむりくり解釈しています。次回はマレー・シンガポール戦(5/5)です。

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