南京事件(1/4)
今回は野田毅少尉の百人斬りが登場します。正史とは違い、メディア・カーがその場面に直面します。なおこのシーンは全てIF歴史です
そこでとんでもない光景を目にする事になった。
上海派遣軍第16師団歩兵第9連隊第3大隊の事件。
副官の野田毅少尉と他一人による「百人斬り競争」だ。
なんと武勇伝にと、敵兵百人斬りを競争していたのだ。
東京日日新聞が紙面で派手に書き立てていた。
影佐「競争は延長線に入っただと?ふざけおって」
件の第3大隊はメディア・カーの数km先を進んでいた。
行軍中、騎乗していた野田少尉は急に馬を止めた。
部下の望月五三郎に急に下知した。
「おい、あこにいる支那人をつれてこい<ママ>」
ここに外国人特派員を乗せた装甲指揮車が通りかかった。
何が始まるのかといった興味津々の顔ぶれだ。
助けてくれと命乞いをする農民をひっぱってきた。
涙を流して懇願する中国人を処刑しようというのだ。
大スクープだと早速特派員たちのカメラの砲列が並んだ。
噂に聞く百人斬りが撮影出来る絶好のチャンスだった。
これはいけない。
影佐禎昭大佐「待て!」
白刃を振りかざした野田少尉はビクッとした。
見れば上級将校が車上から睨み付けていた。
大佐は少尉から見れば雲の上の階級だ。
しかもそこには外国メディアのカメラの砲列が並んでいた。
これが噂に聞くプロパガンダ宣撫隊かと野田は思った。
影佐「貴様が百人斬りの野田か」
野田「はっ・・・・・・」
影佐「ハーグ陸戦規定を知っておるか」
野田「はっ・・・・・・」
影佐「たとい便衣兵であっても簡易軍事裁判なし・・・・・・」
野田「危ない!」
突然意気消沈を装っていた中国人は豹変した。
隠し持っていた小刀を順手で影佐大佐に投擲した。
中国人「日本人め!」
腰の巾着袋ごと大佐に向けて数発発砲した。
中に拳銃を隠し持っていたのだ。
野田「コノヤロウ!」
白刃が一閃して中国人の首が飛んだ。
首の無くなった胴体は力なく地面に横たわった。
影佐「ううっ」
野田「大佐!」
手刀の一つが影佐の首に刺さっていた。
不用意に抜くと大量出血の恐れがある。
直ちに後方支援連隊衛生科の野外手術救命車が駆けつけた。
特派員の外国人も1人が撃ち倒されていた。
見ると海外特派員の米国人も流れ弾で受傷していた。
米国人「戦場の真っ只中で腹を撃たれちまった・・・・・・」
みるみる洋服に血のシミが広がっていく。
服を脱がせてみると盲管腹部銃創で重傷だ。
盲管腹部銃創を戦場で受けたら助からない。
これは戦場で戦う者ならだれでも知っていた。
「オレ、死ぬのかなあ・・・・・・」
ドックドクッ、出血で車内は血の海だ。
一刻も早く止血処理をせねば、失血で死んでしまう。
日本人医官「普通なら戦場で保って2時間だな」
「だがここでは開腹手術も可能だ、死にはせんよ」
所見では左側腹部に6mmの銃痕を認めていた。
触診によって右腹部皮下に弾丸を触知する。
患者は意識清明であったがやがて傾眠傾向に陥った .
手術の同意はかろうじて得る事が出来た。
レントゲン結果を待たず緊急手術を開始した。
開腹すると大量出血を腹腔内に確認した。
空腸間膜、S字結腸間膜に出血部位を確認。
切れた血管を端端吻合して修復した。
問題は臓器がどれぐらい損傷しているかだった。
内臓は上行結腸と空腸に穿孔を認める。
回盲部、空腸部に瞬間空洞による損傷あり。
死にはせんと言ったがこれは重傷だ。
内臓が傷つけば、後遺症が必ずあるからだ。
執刀医「100以上の破孔を確認」
第一助手「切除しかないと思います」
執刀医「目視で見落としがあるやもしれん」
第一助手「吐血するかもしれません」
「24時間は厳重監視下に置きます」
ここでレントゲン検査の結果が出た。
やはり銃弾の破片が腹腔内に散っている。
回盲部、空腸該当部の切除を施行した。
右腹部皮下に触知していた弾丸も摘出した。
腹腔内を汚染した腸の内容物を洗浄ドレナージ、破片を除去。
手術中の輸血総量は8.5Lにも及んだ。
人間には5Lの血液があるので相当な大手術であった事がわかる。
手術は成功し、後送の自動貨車を待つ事になった。
代わりの記者が米国から派遣される事になるだろう。
影佐大佐の裂傷は胸鎖乳突筋で止まっていた。
頚神経叢も外頚/内頚動脈も損傷を逸れていた。
医官「これは奇跡ですなあ 」
局部麻酔で10針縫っただけで済んだのだ。
影佐「米国人記者はどうなった?」
医官「今、後送していますが、命に別状はありません」
「貴方も3日間は安静ですが、まあムリでしょうなあ」
影佐「戦時だからしょうがないよ」
大佐は特派員記者の指揮装甲車に戻っていった。
特派員記者たちは大騒ぎであった。
<米国特派員、中国便衣兵に撃たれ重傷>
写真は現像され、直ちに各国に電送された。
海底同軸ケーブルは上海-サンフランシスコに延伸されている。
翌日のニューヨークタイムズの表紙は負傷した記者の写真だった。
米国では中国寄りだった同情派もこれには憤慨の念を禁じ得ない。
特にルーズベルト大統領はカンカンに怒っていた。
折しも米国義勇軍を中国に派遣する手筈を整えていた時期だ。
ルーズベルト「国民が中国に嫌悪感を持ってしまう」
「これでは中国を支援しようにも出来ないではないか」
さらに記者達は「堅壁清野」についても取材を敢行した。
これは焦土作戦の一種で燼滅作戦とも呼称する。
日本軍に奪われる前に利用価値のあるものは全て焼き払う。
人家も備蓄食料も焼き払いインフラも全て破壊する。
焦土作戦で家を失い食料を焼かれた中国農民たち。
夏に収穫した干しトウモロコシとその茎も焼かれてしまった。
実はコーンミール粥に、茎は薪がわりに燃料につかう筈だった。
夏に植えたジャガイモ畑も国民軍によって蹂躙されていた。
豚もニワトリもガチョウも全部殺すか持ち去られた。
飲料水の井戸には便所の糞尿がぶちまけられた。
家は焼かれ、茫然と立ちつくす農民たち。
残ったのは「でかい中華鍋だけ」という有様だった。
次回は南京事件(2/4)です。




