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(本編完結)また第二次世界大戦かよ  作者: 登録情報はありません
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第二次上海事変(1/3)

ここでは第二次上海事変を扱います。ここまでの日中の歴史は盧溝橋事件からこちら正史と同じという設定なので省略しています。第二次上海事変で最も被害にあったのは中国国民軍による誤爆でした。今回はそれをひっくり返します

張治中(ちょうじちゅう)という一人の男がいた。

彼は中華民国陸軍の士官養成学校で一人の政治部主任と出会う。


中華民国陸軍の士官養成学校は、名を黄埔(こうほ)軍官学校という。

陸軍は国共合作で、共産党員、国民党員とも机を合わせる学び舎である。


<国共合作:国民党と共産党が協力し合う分野の事(1937~45年)>


彼の名は周恩来(しゅうおんらい)、当時から鞭撻に冴えた英傑であった。

張治中は国民党員であったが、周恩来に魅せられ、共産党員となった。


彼は周恩来の下で働く事を希望したが、返事は意外なものだった。

周恩来「国民党に残り、密かに共産党との合作を誘導せよ」


つまり国民党内で共産党諜報員として暗躍する事を求められたのだ。

実はここはソ連が資金も人材も供出した「スパイ養成」学校だった。


中国共産党の後ろ盾はソ連共産党であり、スターリンであった。

張治中は周恩来に仕えるはずがスターリンに仕えていたのだ。


いつのまにかソ連の思惑通りに動く傀儡となっていた。

自分の自覚のない優秀な人材がスパイである事ほど恐ろしい事は無い。


心のないロボットではないから始末が悪い。

周恩来に傾倒した張の挙動は一見まともだったのだ。


そうとは知らず蔣介石は張治中に一目置いていた。

「猪突猛進のきらいはあるが、意欲旺盛な気丈夫である」


1937年07月07日盧溝橋事件が起こる。

張治中は南京/上海防衛隊司令官となっていた。


彼はこの時蔣介石に問うている。


張「1000キロ離れた華北なら上海はまだ倭寇の手が届かない」

「今こそ最重要の地、上海を手中に収める好機です」


上海は産業と金融の中心地だ。

当時の中国首都南京にも近い。


列強も上海租界に住み、複雑な利害関係を持つ国際都市となっていた。

その為にあえて自由都市として、国民軍部隊も駐屯していない。


蔣介石は上海を自由都市化する事で、列強の攻撃から逃れていた。

日本然り、英国然り、仏国然り、である。


蔣介石は決して上海に手を出そうとはしなかった。

「それならば」業を煮やした張は行動に出る。


1937年08月09日大山中尉殺害事件起こる。

上海の飛行場外で通りがかりの陸戦隊の車を襲撃したのだ。


この報を受けたスターリンは手を叩いて喜んだという。


「日本が中国を攻撃した事を喜ばしく思っている」

<当時の報道は日本側が、けしかけた事になっていた>


さらに張は蔣介石の了解のないまま戦闘状態に入った。

まさにスターリンの手のひらで踊る人形であった。


ソ連は西欧での対応で手一杯で、東洋で対応する暇が無い。

満州国境でのいざこざで日本軍と戦う事は避けたい。


スターリン「出来るだけ長く戦っていてくれ」

「出来れば共倒れだと後始末が簡単でいいぞ」

1936年09月、進撃の1年前。

上海に里見甫(さとみはじめ)なる実業家が現れた。


1935年12月より里見は中国秘密結社「青幇(ちんぱん)」と通じていた。

また日本参謀本部第2部第8課(宣伝謀略課)の民政員でもあった。


彼は何かの大きな書類ケースを重そうに持ち運んでいた。

A2の書類ケースはおそらくは機械か建築の図面と思われた。


彼は不安そうに上海を取り巻く国民軍陣地を遠望した。

情報によると鉄筋コンクリートトーチカも建設中との事。


ここからは見えないが、塹壕はやはりコンクリート製だという。

その名も「ゼークトライン」と呼称されているという。


里見「中独合作もここまで来たか」

<中独合作:中国と独国の軍事/経済の協力関係の事>


そこには一歩も引かない国民軍の戦意が見てとれる。

もはや事変は戦争となり、泥沼化の様相を呈し始めていた。


ここは上海の中心地、仏国租界の大世界(ダスカ)。


そこに建つ大世界娯楽センター最上階に孤高の男がいた。

秘密結社の青幇頭目の張嘯林(ちょうしょうりん)は苦い顔をしていた。


張「戦争には儲け話が多いが、私は平時のほうが好きだ」

「この上海の栄耀栄華も、平時の贅沢三昧が齎したモノ」


彼は彼方の日本租界に見える巨大なビルを苦々しく思っていた。

蒋介石が目の敵にしている日本の海軍特別陸戦隊ビルだ。


張「戦闘となれば、あの上海陸戦隊ビルは格好の攻撃目標だ」

「だが上海の街には防空壕はおろか、退避壕もひとつもない」


彼は上海を攻めるなら、まず航空爆撃だと恐れていた。

その目標があの上海陸戦隊ビルなのだ。


だが当時の爆撃機(Northrop Gamma 2E)の水平爆撃に照準機はない。

爆弾の投擲は操縦手のカンに頼るしかなかった。


それは恐ろしい誤爆を意味していた。

絶対に防空壕が必要なのだ。


上海には100万人に中国人が住み、40万人の難民が押し寄せている。

仏国租界には15万人、日本(旧米国)租界にも15万人が住んでいる。


張「中国人だけでも140万人、さらに外人が30万人・・・・・・」

「これだけの人数が入る防空壕はありえない」


この大世界娯楽センターもシェルターになるのかというとそうではない。

木造に漆喰を塗っただけのハリボテなので空爆には耐えられない。


そこに日本人実業家の里見が通されてきた。

張は振り向かなかったが、窓ガラスに張の渋面が写っていた。


里見「何をそんなに渋い顔をしておいでですか」

張「オレは杭州のチンピラから身を起こして、ここまでのし上がった」


張は振り向き、豪華な机の豪華な椅子に腰掛けた。

里見は立ったまま、彼の意向を伺っていた。


上海の中国人の生活は困窮の極み、難民なら尚更である。

貧困の中で育った彼がその無気力を一番よく知っていた。


空爆が始まったら、ただ爆弾が降ってくるのを待つだけだ。

だが今の彼には権力も資金もあり、自由に使える。


張「カネに糸目は付けないで、何か空爆から身を守る方法が欲しい」

「ウチの諜報機関が当たった中で反応があったのがキミだ」


張「それで里見機関の長の君を呼んだのだよ」

里見「恐れ入ります」


「もし国民軍が空爆してきたら」

「上海は終わりですな」


張「その通り、170万人もの人間を入れる防空壕なんかない」

張は再び渋面に戻ってしまった。


里見「その件で妙案をお持ち致しました」

彼はブリーフケースから設計図を取り出した。


アンモニア臭がツンと鼻を突く。

ジアゾ式複写機で作成されたA2の大型図面である。


里見「もしカネに糸目を付けないのならば」

「かような建造物を造るのも可能かと存じます」


張「黄浦江(こうほこう)外郭放水路(地下調整池)?」

里見「左様で御座います」


水利施設は防空壕のように軍用ではない。

ややこしい建設許可も証明書も不要である。


張「なるほど、考えたな」

里見「左様で御座います」


競馬場の緑地、ドッグレース場、東西本願寺境内地、小学校校庭。

それらの地下40mに200m×80m×30mの巨大水槽が建設された。


出資者は青幇の張嘯林(ちょうしょうりん)だ。

一般市民は右往左往(うおうさおう)するばかりである。


「洪水に備えた災害対策施設だそうだ」

「秘密結社の青幇がどういう風の吹き回しだ?」

「奇特な心がけはいいが、何か裏があるんじゃないのか?」


60本の巨大円柱が林立する様子は一種の荘厳ささえ感じさせた。

これは張嘯林(ちょうしょうりん)のパルテノン神殿と揶揄された。

青幇というのはこの後の南京事件回にも出てきますが、日本にとって重要な中国秘密結社です。国民軍の司令官蔣介石も青幇の一員でした。ここで張嘯林というゴッドファーザーが出てきます。正史では暗殺されましたがIF歴史では生き残り、南京事件回にも登場します。次回は第二次上海事変(2/3)です

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