豪州輸送船団
征圧成った北豪州、そのダーウィン港に向かう船団、そして米・群狼潜水艦団(ウルフパック12隻)がつけ狙う。まあ結果はご想像の通りなのです。
ここは日本を去ること南方に5140km。
ここはティモール海(豪州とティモール島の間)。
日本商船隊は粛々とティモール海の大海原を進んでいた。
広島の宇品を出て、豪州のダーウィンに向かう船団だ。
積荷は自動貨車、戦車の消耗品・交換部品が主だった。
恒久レーダーサイトを構築する為の建材も含まれる。
商船も護衛艦も護衛空母も「戦時標準設計船」だ。
船体は全体にのっぺりした印象を受ける。
曲線のない(工程の少ない)急造船である。
ブロック工法、電気溶接を合わせた最新工法で造船されている。
急造船のため、どうしても欠点がある。
それは溶接の不備と鋼板の脆性破壊だ。
溶接は不慣れな女工や学徒の不適切な工程による。
脆性は鋼板の品質不適合によった。
前者は溶接工程を自動溶接とした。
破断する場所は内部構造ではなく外部船体構造だ。
船渠に盤木を設置して船体を水平にし足場を組む。
この高所での不安定な足場や狭所での溶接は素人にはムリだ。
女工や学徒の不適切な溶接がこの部分に生じる。
この長大な溶接工程を全部自動化した。
これには実物大ジグを作成し、ならい溶接にした。
後者の品質については耐候性鋼材を開発した。
加工熱処理法(TMCP)での圧延プロセスになるが、詳しくは省略する。
これにより造船鋼材は大きな進化を遂げている。
日本商船には対潜前投兵器と後部甲板に1機の対潜ヘリがある。
前部甲板貨物室と揚錨機の間に対潜前投兵器がある。
ここに24連装噴進爆雷(無誘導)砲一門を装備する。
艦首にはサイドスラスターがあり、魚雷回避に威力を発揮する。
もともとはタグボート無しで接岸するためのモノだったのだ。
護衛艦はいわゆる海防艦で3機の対潜ヘリを艦載する。
ヘリは吊り下げ式ソナー・磁気探知装置・誘導魚雷を積載する。
護衛艦には対空・洋上レーダー、艦底にはソナーを配備。
爆雷・誘導魚雷・艦対艦ミサイルで武装している。
護衛空母は搭載機28機(飛行甲板係留時42機)の護衛空母であった。
対空・洋上・航空管制のレーダーを擁し、VT信管機関砲で武装している。
船団は武装貨物船12+護衛艦2+補助空母1=15隻の小船団であった。
連合軍輸送船団は80隻の船団でここにも国力の差が現れている。
航行は順調に進み、ティモール海からビーグル湾に入った。
もうダーウィン港は目の前で、どうやら無事到着できそうだ。
だがその商船団を米潜水艦が狙っていた。
到着寸前の気の緩んだ瞬間を狙っていた。
潜水艦の魚雷攻撃の時間は大体決まっている。
朝マズメ(夜明けから日の出)か、入港直前の気の緩む時間帯だ。
米潜水艦の潜望鏡を通してのシルエットは馬鹿げていた。
潜水艦艦長「貨物船12、護衛艦2、軽空母1」
「格好のカモネギというヤツだ」
「爆雷発射装置はあるようだが、ほかの兵装が見当たらん」
護衛艦には前部砲塔さえなかった。
これが噂に聞く軽装海防艦というヤツなのだろう。
24連装噴進爆雷(無誘導)砲があったが、カバーが掛かっている。
これは砲身の無い修理中の砲塔に見えたのだった。
後部砲塔はヘリ甲板のために元から兵装がない。
護衛艦にある筈の連装魚雷発射管も見当たらない。
誘導魚雷の横抱き式の落射機があったが、米軍はまだ知らない。
これは舷側の爆雷発射器のシルエットに似ていた。
シルエットから判断すれば、絶好の獲物である。
これに不用意に米・群狼潜水艦団(ウルフパック12隻)が近づいた。
まず護衛艦のソナーが12隻の潜水艦に気が付いた。
同時に浮上して船団を追い越そうとする3隻にレーダーが反応。
前方に3隻、側面に3隻、後方に6隻が展開中だ。
米南西太平洋艦隊は積極的に浮上攻撃を受容している。
①日本側の警備体制は希薄であり、空母が付随する場合でも捜索は目視である事。
②対潜哨戒機は下方視界が不良である事。
③レーダーや逆探が未配備か低感度である事。
こういった「攻撃重視・防衛軽視の日本軍情報」は実はガセである。
シンガポールやマレーにいる米情報機関に欺瞞情報をたれ流していた。
<日本はレーダーは貧弱で有視界に頼り、攻撃重視で防衛軽視>
<装備は貧弱で、技術は遅れており、見かけ倒しである>
確かに日本軍は真珠湾攻撃の際は遅れた装備で負け戦となった。
レーダーに気付かず、待ち伏せを受け、航空機隊は全滅した。
「教訓は勝つよりも負ける方が得るものが多い」のである。
日本海軍は今やガチガチに防御を固めていた。
潜望鏡から見た日本艦のシルエットにはレーダーが確認出来た。
米潜水艦艦長アラン・スミシー「どうせ低感度なコピー品だろ」
スミシー「恐れる事はない、教科書通りやれば勝てる」
「多少の危険を冒しても、浮上航行で全速を出して船団前方に廻り込む」
スミシーはウルフパック独特の戦術で攻撃に出ようとしていた。
だがこの船団こそ、その日本の遅れた設備を覆す第一弾だったのだ。
ヘリが全18機出動して、磁気探知機で潜水艦の位置を特定する。
まず護衛艦が対潜迫撃砲で攻撃した。
これは無誘導の対潜ロケット砲だ。
これが前方に出ようと浮上航行していた潜水艦3隻に向かった。
あわてて急速潜航するも、海面下で潜水艦に命中してしまった。
ロケット弾は標的を中心として、円周上に散布される。
1発でも接触爆発すれば、全部が自爆するようセットされている。
破孔からどっと海水が潜水艦内に浸水してきた。
防水扉で浸水区画を隔離しょうとするも間に合わない。
次に補助空母から発艦した航空機が航空爆雷を投下。
ヘリが吊り下げ式ソナー・磁気探知装置で発見した潜水艦に見舞った。
これは側面攻撃を狙った潜水艦3隻への洗礼であった。
最後に護衛艦から誘導魚雷が発射された。
後方にいる6隻の潜水艦に誘導魚雷が吸い込まれるように命中した。
米潜水艦は全12隻が静かに海底に着底した。
ダーウィン港の近傍だったために深度は30~40mだった。
多くの潜水艦乗組員がマンセン・ラング(緊急脱出用具)を咥えて脱出してきた。
これは呼気に含まれる二酸化炭素をソーダ石灰で除去し、呼吸に使うモノだった。
これに酸素が入った袋が逆止弁とともに繋がっていて、90mからの脱出も可能だ。
乗組員全員が非常時にこれを咥えて脱出できるよう、標準装備となっていた。
米潜水艦1隻の乗員36名だから400名以上が波間に浮かんでいた。
ヘリ18機が急遽、救難機に早変わりして救助に当たった。
ヘリ乗員「ソナーも誘導魚雷も捨てれば、10名は乗れる」
なんと貴重な設備を洋上投棄して、米兵を救助した。
米兵A「珊瑚海海戦でオレたちは漂流する日本兵を撃ち殺した」
米兵B「これがサムライ魂というヤツか」
米兵C「なんと博愛精神に満ちた行為なんだ」
いやダーウィン港の目の前で米兵を助けなかったら新聞沙汰だ。
豪州の宣撫活動で港には記者が集まっていた。
日本の輸送船団を撃沈して反日運動を活性化する筈だったのだ。
まあ逆の事態になってしまったが。
最も設備の整った病院は日本軍ダーウィン基地の病院だった。
ヘリはそのまま病院ヘリポートに戦傷者をピストン輸送した。
敵味方の区別なく戦傷兵を救助する理念はここでは守られていた。
この救助活動を見ていたダーウィン市民は喝采を送った。
翌日の朝刊には「これがサムライ魂か!」の文字が躍った。
ダーウィンには6500トン輸送船が寄港したがもっと大きい輸送船もある。
ハマスレー鉄鉱山の積出港にはスタッカ/リクレーマがずらりと並ぶ。
6万5千トンの鉄鉱石輸送船が沖合で順番を待っている。
6万5千トンの鉄鉱石輸送船が接岸する港は今のところない。
4km沖のシップローダまでベルトコンベアが通じている。
2500t/hの可搬能力があり、これが約2日で鉄鉱石を満載する。
満載したら日本へ向かい、交代で次の空船が交代する。
実際の積み出し量は機密扱いで遙かに多い。
ダーウィンのは単なるプロパガンダ(宣伝)に過ぎなかった。
シップローダーやら何やらは神戸の須磨ベルトコンベヤを参考にしています。何もない浜辺に突如現れ、鉱石を山から運び、鉱石船に積み替えるのでした。アラン・スミシーは映画クレジットに監督の名前を理由があって出せない時の偽名です。意味は「誰でもない」というそうです。ここでは架空の潜水艦の架空の船長なので、そう名付けてみました。次回は豪州:謎の鉱山です




