ワシントンD.C.空爆
とうとうワシントンD.C.空爆が始まります。米軍のドゥリットル爆撃が空母からのまさかの爆撃機発進だったように、日本はまさかの潜水空母からの発進です。北米本土のしかも大西洋側の首都空襲は米国民にとんでもない衝撃を与えました。
ウウウーーーーーッ。
その日ワシントンD.C.には不吉な空襲警報が響きわたった。
首都警戒レーダーには108機の日本軍機が映っていた。
伊四四〇型18隻から6機づつ全機108機が攻撃に出たのだ。
ワシントンには対空砲も防空戦闘機もなかった。
まさしく日本版ドーリットル空襲そのものだった。
西海岸に戦力を集中していたウラをかかれたのだ。
ワシントンD.C.郊外にはアンドルーズ陸軍基地がある。
ここには第121観測飛行隊が配備されていた。
航空写真撮影に特化された非戦闘部隊しかいない。
まさか米国首都が攻撃されるとは予想だにしなかった事態である。
日本機は真っ直ぐにポトマック川を越えた。
目標は一つにはホワイトハウス爆撃である。
もう一つはアメリカ議会議事堂である。
ポトマック川上空で二手に分かれた。
多くの市民が戦闘機の侵入をボケーッっと見上げている。
何がどうなっているのか皆目見当もつかないのだ。
市民の射殺も大統領射殺も目的ではない。
大統領はとっくに東楝地下のバンカーに逃げ込んでいるだろう。
バンカーとは大統領危機管理センターで地下壕になっている。
従って攻撃はホワイトハウスと議事堂を粉々にする事にある。
米国の政治の中枢を粉々にする事が今回の攻撃の目的だ。
「戦争は最後の外交手段である」と誰かが言った。
これは究極の「不快」で「暴力的」な恫喝外交の手段なのだ。
いつでもお前の首を撥ねる用意がある、と示しているのだ。
ホワイトハウスは爆撃で粉々になり、火災で黒焦げになった。
合衆国議会議事堂も象徴的なドーム構造も崩れ落ちた。
議事堂には地下に地下鉄があり、その駅から議員が逃げ出した。
議員会館に通じており、非常時は避難路になる筈だった。
米国議会議員A「こんな事もあろうかと準備しといて良かった!」
米国議会議員B「まさか本当に使う日が来ようとは!」
米国議会議員C「くわばらくわばら!」
ドカンッガラガラッズシーンッ!
彼らが地下シャトルで脱出すると同時に議事堂は崩れ落ちた。
ジョージ・ワシントンを神格化した天井画も焼け落ちてしまった。
議事堂の青銅彫像コレクションも火災の熱で溶けて無くなっただろう。
潜水艦に航空機を搭載出来る技術は米国ではSSVとして計画された。
しかしいずれも計画倒れで実用化に至っていなかった。
日本が、日本だけが潜水空母を実用化して、こうして攻撃してきた。
ルーズベルトは破壊され尽くしたホワイトハウスの敷地に佇んでいた。
ルーズベルト「ノーフォーク海軍基地はいったいどうしたんだ!」
ワシントンD.C.南東230kmにあるノーフォーク海軍基地。
世界最大の海軍基地であり、航空機の滑走路がある。
戦闘機がただちに発進したが、日本機はすでにいなかった。
駆逐艦がただちに出撃したが近海に潜水艦の姿は無い。
潜水空母はカタパルトを装備しており、発艦は10分単位だ。
だが収容は水上機をクレーンで吊り上げて格納する。
そちらは30分掛かり、その間は潜航出来ない。
そこを狙い撃ちにすれば簡単に撃沈出来るハズだ。
日本の潜水空母は発艦作業が終わると直ちに遠洋に出た。
日本の水上機の航続距離は2000kmもあった。
ノーフォーク海軍基地は誘導電波を探ってみた。
遠洋に出れば有視界ならば当たりは一面の大海原だ。
誘導電波がなければ到底潜水艦にはたどり着けない。
しかし誘導電波は全く感知出来なかった。
日本機には慣性誘導装置ジャイロスコープが装備されていた。
慣性誘導装置は独国のAskania社のものを魔改造していた。
潜水艦を追って遠洋に出てから着艦作業に取り掛かったのだ。
駆逐艦が近海をいくら探しても潜水空母はいなかった。
この日以来、ワシントンD.C.は要塞都市となった。
だが日本機は二度と来なかった。
それよりも北の都市が狙われていった。
フィラデルフィア、ニューヨーク、ボストンetc。
どこも大西洋側の大都市は完全に無防備だった。
フィラデルフィアは独立記念館、美術館が爆砕された。
ニューヨークは自由の女神像が粉々になった。
ボストンでは図書館、美術館が焼け落ちた。
全ての都市のシンボルが狙われたのだ。
どの都市も二度と日本機は来なかった。
そんな事はお構いなしに、混乱は全米に広がっていった。
今まで北米東海岸は爆撃された事はない。
戦場は本土から遠く、国民は安心しきっていた。
戦争はこちらから行くモノで、本土が戦場になる事はない。
そういう先入観が砕け散った瞬間だった。
米国民A「まさか日本軍が上陸作戦を!」
米国民B「まさか不可侵の北米大陸に!」
米国民C「まさか、そんな馬鹿な事が!」
日本の潜水艦だけで上陸作戦なんぞ不可能である。
しかし浮き足だった世論は無意味に拡大解釈していた。
米国籍コロンビア人やブラジル人がウワサを吹聴している。
出稼ぎの彼らは有末諜報員のスパイなのだ。
すでにネバダ州ニクソンやオレゴン州ブライに空挺部隊が降りたという。
これは風船爆弾による実害だったが米国人は噂話を信じた。
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ホワイトハウスはワシントンD.C.の象徴だった。
新ホワイトハウスは地下に建設された。
天井は厚さ7mの鉄筋コンクリートである。
超大型爆弾グランドスラムでも使わない限り貫通しない。
取りあえず執務室だけが急造され、大統領が任に就いていた。
ルーズベルト「外の景色がないのはつまらんなあ」
地下40mの執務室までは専用エレベータで直通だ。
特別の換気施設があり、執務室は陽圧になっている。
外部空気が汚染されても執務室は安全だ。
地上現像物は無くなり、花が咲き乱れる庭園となった。
立入禁止区域には離宮があり迎賓館として使われている。
だが普段は人っ子一人いない空き家である。
米国民はこれをワシントン離宮と呼んだ。
誰もが地下に新ホワイトハウスがあると噂していた。
だがその場所はもう地上からは分からないのだ。
議事堂の方は以前と全く同じ建造物が再建された。
こうしてワシントンD.C.空爆は終了した。
米国は国力を総動員して守りを固めている。
もう二度とこんな作戦は成功しないだろう。
だがそれでいいのだ。
このワシントンD.C.空爆でさえオトリなのだった。
本当の目的、真の作戦はまた別のところにあった。
全ては米国民を扇動するためのフェイントでした。浮き足だった米国民に最後に決定的な一撃が加えられますが、その前に豪州に話は戻ります。次回は豪州輸送船団です




