第224話 ダンジョン調査
確かにダンジョンのマップ情報やそこに出現する魔物の情報が分かれば、それはとんでもなく有益な情報だ。ダンジョンにはボスモンスターがいるとベルナさんとフェリーさんから聞いているし、もしも魔物図鑑でその情報まで分かるのなら、その価値は計り知れない。
ただし、それがバレてしまえば俺が誰かに狙われる可能性も増えるわけだ。これ以上俺の秘密の広がる可能性が上がるのは避けたいところだけれど、そもそもそんなことができるのかという俺のアウトドアショップの能力の確認もしておきたいのも事実だ。
まあ俺の秘密について言えば、地図と図鑑のことを話した時点でバレたらアウトなのはどちらにせよ変わらないか。
「……仮にダンジョンでも地図や図鑑が使えたとしても、いくつものダンジョンがある場所を回っていくのは嫌ですよ」
さすがにこの国にあるダンジョンをひたすら巡らされる生活はまっぴらごめんだ。元の世界のブラック企業のようにひたすら働くだけの生活は絶対にするつもりはない。
「もちろんその辺りのことについては最大限考慮することを誓おう。以前王都付近に出現したダンジョンのように緊急性の高いダンジョンだけで、強制は絶対にしないし報酬も最大限払う。そもそもそれほど緊急性の高いダンジョンはあっても年に1~2回あるかだろうね」
ふ~む、報酬も出るし強制でないなら受けても構わないか。別にダンジョンの中を攻略するわけではないのだから、危険はないだろうからな。
今回の王都への遠征の様にいろんな地域に行けるのだから、ある意味ではちょうどいいのかもしれない。
今後の依頼を受けるかどうかは置いておいて、少なくとも一度ダンジョンへ確認に行くのはありだな。正直なところ、俺もこの世界のダンジョンを見てみたいという気持ちがある。たとえ攻略しなくともダンジョンというものは男心をくすぐるものだ。
「分かりました。今後のことはまだ分からないですが、とりあえずアレフレアの街へ帰る際にダンジョンへ寄って試してみます」
「おお、それはありがたい! 本当に助かるよ、テツヤくん」
「ふう~とりあえず冒険者ギルドの件についてはこれで大丈夫そうだね。またいろいろと考えることは多くなりそうだけれど……」
冒険者ギルドでルハイルさんとの話を終えて、無事に宿へと戻ってきた。ルハイルさんとだいぶ長く話をしていたから、部屋の前で待っていたルハイルさんの側近の職員さんにめちゃくちゃ睨まれた……まあ、ルハイルさんが慕われている証拠だろう。
そして宿で待っていてくれたみんなと合流して、ルハイルさんと決めたことについてを報告した。
ベルマルコンから砂糖が抽出できることについてはルハイルさんが単独で動くこともあって、まだしばらく時間が掛かりそうだ。俺と同じ転移者のことについてはルハイルさんが調べてくれて、2~3日後にもう一度冒険者ギルドへ行った時に教えてもらう。
地図についてはアレフレアの街と同様に精密な地図ではなく、それを模写した簡易版の地図を生産して販売するそうだ。こちらもベルマルコンと同様に俺たちが王都を訪れてすぐに市場に出回ると、俺たちが持ち込んだことがバレてしまうので、少し後に発売する予定だ。
植物図鑑と魔物図鑑については有用な情報だけを精査して公開する。報酬については継続的に受け取るのではなく、その情報について金貨何枚といった形で支払われるようだ。
……地図、図鑑、ベルマルコンから抽出できる砂糖、ダンジョンでマップや図鑑の効果確認など、これ全部の情報量を合わせるととんでもない報酬額がもらえそうな気もする。とりあえず新規の店の開店資金で結構な金額を使ってしまったが、もしかするとすぐに完全回復薬を購入する金額を稼げるかもしれないな。
「本当にテツヤと一緒にいると退屈しない」
「ええ。本当に驚かされてばかりですわ」
「実際のところ本人が一番驚いているんですけれどね……」
まさかアウトドアショップの能力で購入できる物がこれほど大きな話になるとは思ってもいなかった。
この世界にやってきて、屋台で方位磁石を売っていたころが懐かしい。
「それにルハイル殿もさすがだ。確かに方位磁石はダンジョン内で機能していたし、テツヤが購入した地図や図鑑もダンジョンで使えるかもしれないな」
「綺麗なだけじゃなくて、とても頭がいいんだね! ますます惚れちゃったよ!」
リリアとランジェさんの言う通り、聞いたばかりの俺の能力の活用方法をすぐに思いつくのはさすがだ。ダンジョン自体を見たことがないというのもあるが、俺にはまったく思い浮かばなかった。
ちなみにランジェさんはいつもの陽気なランジェさんに戻っている。やっぱり俺にとっては女性を口説く真面目モードのランジェさんよりもこっちの方がランジェさんらしい。
「ダンジョンか。話には聞いたことはないが、少しだけ見てみたい気持ちもあったから楽しみだ」
「確かダンジョンの周りにはたくさんのお店も出ているんですよね。私も楽しみです」
「お母さんにいっぱいお話ができそうです!」
アレフレアの街へ帰る際にダンジョンに寄ることも話したが、ドルファ、アンジュ、フィアちゃんも大丈夫そうだった。
ダンジョンの周りには宿やダンジョンで手に入れた物なんかも販売しているらしく、ちょっとした街みたいになっているらしいから俺も楽しみである。
さて、これで王都に来た目的の半分くらいは果たした。一番の問題は明日の王族との面会なんだよなあ……問題なく終わるといいが……
最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!
執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。
誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )




