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23話 魔女のメイデー。(後編)

「…………そうだねっ!フレイヤの言う通り、私は"嫌がらせ"をするために今ここに座ってるけど……なんで分かったの?」


「……なんとなくね、メイデーは人からされてうれしいことが分かっていると思うの。だから、さっきみたいに私たちが困ってるところを助けてくれた。そんなメイデーが、人からされて嫌なことが分からないなんて、そんなのおかしいから……」


「……うーん、そっかー。……まあ、だから何だって話だけど!」


「…………なんか開き直ってるけど、メイデーに躊躇いってものはないのか……?」


「…………」


「……おい、なんか答えろよ……」


「…………メイデーの『イチャイチャしているところを見るっ!』っていう言葉は嘘だったってことでいいんだよね……?」


「うんっ!……逆に、魔女と人間がイチャイチャとかキツイっていうか…………いろいろ気持ち悪いよね!」


「……そうは言ってもメイデー、さっきは俺たちに分からないところを教えてくれたよな……?それも無表情で淡々ってわけでもなくニコニコして、それも丁寧に……。フレイヤが『人からされてうれしいことが分かってる』っていっても、あれはどうなんだよ……」


「…………」


「……また無視かよ」


「……メイデー、私はね──」


「……待った!……フレイヤは私のことを『本当はいい子なんだから!』とかって言うつもりでしょ。…………そんなわけないじゃん。……はいっ、もとの場面に戻った戻った!今は、私を追い詰めているところでしょ?同情とか、やめてね?」


「……メイデー、それってどういう……」


「…………」


「…………さっきはあんなにニコニコしてたのに……それも偽りだったってことだよね……?」


「……うー、まあそうかなっ!私って図書委員でしょ?それでニコニコして対応する癖がついたっていうか……。あとは、2人のなんか集中できてないもどかしいところを見て『私の企みがうまくいってるなーっ!』って思って自然とニヤけたというか!」


「……さっきから気になってたけど、どうしてルークのことを無視するの……?さっきまではルークとちゃんと話してたのに……」


「フレイヤがいる手前、無視は出来なかったんだよねー!だって、そうしないと怪しまれちゃうじゃん!私の企みもムダになっちゃいそうで……。でも、今はもうバレてるから無視してもいいかなって!」


「……その"企み"とやらはバレちゃったからこうしてヤサグレちゃったと……。私にも、そしてルークにも開き直っちゃって……」


「『開き直ってる』って酷くない?別に、私はもともとの状態に戻っただけなのに。……人間なんて、私たち魔女からしてみれば無条件に見下せる対象でしょ?無視だってする。嫌がらせをしても別に構わない存在……。ねっ、そうだよね、フレイヤ?」




 …………。





 そうだ、そうだよ……。


 ……魔女っつーのは、こうやって他人を見下して、それで相手を揺さぶって困らせることで悦に浸る連中だ。

 目の前の魔女がこんな邪悪な思いを抱いている可能性があることを……そんな当たり前のことを俺はすっかり忘れちゃって……。


 ……全てを狂わせたのはフレイヤ、隣に座る魔女のせいだ。


 隣の魔女のおかげで、俺は今までぬるま湯に浸かりきっていたんだ。

 ……思い出すのは、フレイヤやその友達のサリエラとアリアとで紡いでいったかけがえのないものばかりだけど…………でも、目の前の魔女が俺たちのことを騙っていたように、隣にいる魔女たちも俺のことを騙しているのかもしれない。




 フレイヤに限ってそんなはずがない──。




 でも、現にニコニコして親切にしてくれたメイデーという魔女は、本心では俺やフレイヤに敵意を向けて開き直って……。フレイヤだって、もしかしたら俺と過ごしてきた時間が退屈極まりないものだったかもしれない。…………俺のことをからかうために近づいてきたのかもしれない。

 そんなことはないと俺だって信じたい。……しかし、目の前に座っている魔女は本性をさらけ出したように、フレイヤという魔女も魔女の本性が……俺の知らないような暗ったい部分があるのかもしれないのだ。


 ……どうせ、今俺たちに向けている表情も本心とかけ離れているんだ。イタズラな微笑みからどこか引きつった感じの笑顔になったのは何かの策略なのだろう。

 髪をクルクルと回すのも心なしかさらに早くなっている。心なしか冷や汗のようなものも見える。……今は冬も近づいていていて、暑さなどないはずなのに……。魔法をも使ってさらに俺たちを困惑させるつもりだろうか。




「……ねえ、ルーク……」


 いろんな思いが入り混じる中、フレイヤの発したどこか甘えた声に、俺は一瞬身体を震わせる。

 てっきり、メイデーの質問に対して答えるものだと思っていたので、俺の名前を呼ぶことは想定外だったこともあるのかもしれない。


「……もう、ルークにそんな顔は似合わないよ。大丈夫、悪いことにはならないから……」


 そう言って、太ももの上におかれた俺の右手をギュッと握ってくる。手のひらから伝わる熱はほんのりと温かい。


 横顔を見てみると、いつになく凛としていてとても頼もしい。




 ──これが、魔女の……フレイヤという魔女の姿……?




 一瞬……ほんの一瞬であるが、そう確信するのには十分すぎるほどの姿がそこにはあった。


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